\n"; ?> JVC - Trial&Error掲載記事
  • HOME >
  • Trial&Error掲載記事

Trial&Error掲載記事

JVC会報誌Trial&Errorの記事の中から、全文掲載できる記事を集めています。まだまだ量は少ないですが、今後増やしていきます。

今回は、昨年に引き続き実施したモザンビークへの調査訪問の報告となる。詳細な調査結果は別途報告にまとめるとして、ここでは今回の訪問で高橋が見てきた風景から、そこに暮らす農民たちが開発から取り残される仕組みについて考察する。(編集部)

情報と権力の非対称性

今夏、モザンビークを再訪した。五名の日本の市民社会のメンバーで手分けをし、現地市民社会の協力を得てプロサバンナ事業の実態調査を行なった。今回の調査では、JICAにも協力・同行してもらうことで彼らの持つ情報を知ったり、彼らの農民への接し方を観察することができた。筆者も全日程でJICAが同行し、モザンビーク政府担当者との会合や事業地(農村)を訪問することができた。

今回の収穫は、事業を推進している現場コンサルタントの把握する情報が、これまでの意見交換会や公開文書から得た情報に比べ格段に多いという発見だ。当たり前と言えばそれまでだが、特に農業開発に関わる他ドナーや企業の動きが活発なことに驚いた。

No.312 変わりゆく風景と暮らし (2014年10月20日発行) に掲載】

続きを読む

【スタッフのひとりごと】
涙の論文提出日

カンボジア現地駐在員 太田 華江
2014年9月11日 更新

ここ数年で一番私が慌てたのは、修士論文の提出日だった。私は当時、修士論文執筆に苦戦しており、論文が完成したのはまさに提出日の早朝だった。図書館も混んでいて、1部しかプリントアウトできず。しかし、大学院生は論文を3 部提出しなければいけなかった。しぶしぶコンビニへ向かった。

しかし、そのコンビニにあったコピー機は、手で一枚一枚スキャンしていくタイプ...。「間に合わない、本当にまずい...」残された時間はあと1 時間。その時、流しコピー可能なコピー機が学校に数台あることを思い出したが、私は学校のコピーカードのカウントを使い果たしていた。

No.311 市民に押し寄せる紛争や分断の波 (2014年8月20日発行) に掲載】

続きを読む

【スタッフのひとりごと】
日本人は「外国人」?

カレンダー事務局 大村真理子
2014年8月 8日 更新
イラスト/かじの倫子イラスト/かじの倫子

小学校時代はシンガポールで過ごしました。年中真夏、赤道直下の多民族国家。日本のお正月が過ぎればすぐ中国のお正月が始まり、毎日イスラムモスクで礼拝する人もいれば、体中に針を刺した人の行進(タイプーサムというヒンドゥー教のお祭り)が始まる日もあり。毎日真っ黒に日焼けし、誰が一番黒いかを競い合う、そんな日々でした。

No.309 悩み、迷い、だからこそつながりを (2014年6月20日発行) に掲載】

続きを読む

ODAのプロサバンナ事業に関する連載。7回目の今回は、前回で紹介したアグロ・フード・レジームの変化に関連して、その背景にある食と農をめぐる国際的な政治状況についてお伝えする。(編集部)

食と農を揺るがす変化

これまで、プロサバンナ事業が現地農民(特に小規模農家)に与える影響を中心に語ってきた。今回は、国際的なマクロな視点からプロサバンナ事業を考察してみたい。プロサバンナは、食と農のあり方を大きく変化させることに「棹差す」ために始められた事業である。これを「アグロ・フード・レジームの再編」と呼ぶ研究者もいる※注(1)。日本政府は、このレジーム・チェンジに積極的に関与することで、この分野でのリーダーシップを発揮し、その経済的メリットも享受したいと考えているのだ。ならば、私たちもその背景も知っておく必要がある。

No.308 パレスチナの人びとの生きる力を支える (2014年4月20日発行) に掲載】

続きを読む

ODAのプロサバンナ事業に関する連載。6回目の今回は、事業そのものの問題というよりも、その背景にあって今の世界を取り巻く「アグロフードレジーム」について指摘する。(編集部)

「弱い個人」とは誰か?

「モザンビークは現在投資先として大きな注目を浴びており、この世界経済の流れは長い目で見て止めることができない。彼らの生活も変わらざるを得ない中、対応していけるようにすることが私たちに課せられた命題である」

これは、昨年十二月四~六日にかけて私がプロサバンナ事業地であるモザンビーク・ナンプーラ州と首都マプトを再訪、事業実施者側である日本大使館やJICAを訪問した際、彼らの発言に共通していた主張だ。これを聞いて私は驚いた。確かに時代の流れに沿って生活の変化に対応できるようにしていくことは必要だろう。だがそもそもその投資がモザンビークの人たちのためになっているかを問い直す必要はないのだろうか。

この一月、安倍総理はモザンビークを含むアフリカ三ヵ国を訪問、最終日に行なったスピーチのタイトルは『「一人、ひとり」を強くする日本のアフリカ外交』だった※注(1)。一方、これまで私がアフリカの人びとと活動をしてくる中で強く実感するようになったのが、いわゆる「貧困層」と呼ばれる人たちに出会ったとき、その状態は彼ら自身の能力や知識不足、弱さ等に起因するのではなく、いま私たちの周囲を取り巻き、当たり前のものだと思い込んでいる社会(構造)のほうに問題はないか、と疑ってみる必要があるということだ。実際、彼ら「一人、ひとり」は実に様々なことを知っていて、農業に限らず生活全般における能力に長けている。であるならばそんな彼らを「生きづらくさせている何か」があるのではないかと思ったのである。

No.307 JVCはアジアで今後何をすべきか (2014年2月20日発行) に掲載】

続きを読む

【ODAウォッチ:プロサバンナ事業】
事業を止めるべきは誰か?

調査研究・政策提言担当 高橋 清貴
2014年6月13日 更新

ODAのプロサバンナ事業に関する連載。5回目の今回は、ODAの事業プロセスにおいて住民対話を保障する仕組みについて指摘する。NGO 側は、以前からこの仕組みをプロサバンナ事業に対して適用することを求めてきたのだが、それはまだ実現していない。(編集部)

事業を中断しない理由は

プロサバンナ事業について外務省と意見交換会を続けて、すでに一年が経った。この間、事業の目的が「小農支援であることを確認できたことは前進だ。しかし、それに伴って様々な問題も浮き彫りになった。曖昧だった目的が明確になったことで、隠されていたものが可視化され、「言っていること」と「やっていること」のギャップが明らかになったのだ。そのひとつが、対話のあり方だ。特に援助事業の場合、対話は事業の目的(援助を受ける者のニーズ)と内容(援助する者の活動)を整合させる上で必要なものだ。その不備を修正するには事業の中断が当然だと思う。

しかし、優秀な「官僚」の発想は違う。事業を走らせながら対話のあり方を改善する、というのだ。まるで、加速する列車を走らせたまま、線路脇にたたずむ人々の声を「丁寧」に聞いていくアクロバティックなことができると言う。あるJICA幹部は「中断したら再始動できない」と宣っていた。運転席には座っているが、どうもアクセルの踏み方しか知らないようなのだ。暴走列車あるいは冷却コントロールが効かなくなった原発と同じだ。奇妙な自信を持つ相手に「暴走」を止めてもらうにはどうするか?『白熱教室』で有名になったサンデル教授の引用を思い出す。「大勢を救うための一人の犠牲は正当化できるか。」「暴走列車」に乗せられた多数の農民を救うために、列車に身を投げる犠牲者が必要なのだろうか。

No.306 「人道支援」の最前線にあって考える (2013年12月20日発行) に掲載】

続きを読む

【ODAウォッチ:プロサバンナ事業】
知らないうちに農地を失う農民たち

調査研究・政策提言担当 高橋 清貴
2014年6月13日 更新

ODAのプロサバンナ事業に関する連載。4回目の今回は、8月6~18日にモザンビークの事業対象地を中心とした訪問調査に赴いた2名のスタッフによる報告が中心だ。この調査は、「モザンビーク開発を考える市民の会」を始めとする複数の日本の団体によって共同で実施されたもの。帰国後に事業の中断と見直しをもとめる声明を発表(9月30日)、調査の詳細な報告書も10月末公開を目指して作成中である。(編集部)

遠い国での日本の事業

バンコクとヨハネスブルグでの乗換時間を含めて、モザンビークの首都マプトまで約二十六時間。国内線に乗り換えて北部の州都ナンプーラまで二時間。ナンプーラから舗装されていないダートを四駆で三時間ほど内陸部に向けて揺られ、ようやくナンプーラ州西部、リバウエ郡イアパラに着く。ここは、プロサバンナ事業のリークされたマスタープラン案※注(1)でクイック・インパクト・プロジェクト※注(2)の対象地として指定された所であり、特に土地の事前確保が計画されている。私は、三つに分かれた今回の調査チームの一つとして、この地域を訪れ、農民から話を聞いた。知りたいことは三つあった。土地収奪の実状、そして本事業に対する農民の理解度、最後に農民たちの暮らしである。いずれも「小農支援」を考える上で不可欠な項目だが、マスタープラン案には書かれていない。

No.305 JVC国際協力コンサート (2013年10月20日発行) に掲載】

続きを読む

ODA のプロサバンナ事業に関する連載。4 回目の今回は、8月6~18日にモザンビークの事業対象地を中心とした訪問調査に赴いた2名のスタッフによる報告が中心だ。この調査は、「モザンビーク開発を考える市民の会」を始めとする複数の日本の団体によって共同で実施されたもの。帰国後に事業の中断と見直しをもとめる声明を発表(9月30 日)、調査の詳細な報告書も10 月末公開を目指して作成中である。(編集部)

訪問調査を実施

訪問調査に参加するという形で、私は今回初めてモザンビークを訪問した。プロサバンナ事業( 以下本事業) についての経緯を知り、これまで外務省・JICAとの協議にも多少なりとも関わってきたなかで、いったい現地では実際に何が起きているのか、外務省・JICAによる本事業の説明や約束は本当に実施されているのか、直接見聞きして確かめたかったからだ。
結論から言えば、「説明・約束」と「現実」の間には大きな齟そご齬があったと言わざるを得ない。以下、外務省・JICA側が示してきた「『小農は土地を有効活用して生産できておらず貧しい(1) 』ために本事業は『投資によってモザンビークの小農を豊かにする(2)』ことを目的としており、事業内容については『時間をかけて対話していきたい(3)』」という三つのポイントにしぼって報告する。

No.305 JVC国際協力コンサート (2013年10月20日発行) に掲載】

続きを読む

絶望的な状況が今も

六十五年もの長い間解決を見ない、国際紛争の代名詞ともいえるイスラエル‐パレスチナ問題。初めてパレスチナを訪問した二〇一一年、胸が詰まるような、やるせない気持ちがこみ上げてきたのを覚えている。高さ八メートル、距離七百キロにもなる巨大な分離壁によって囲われた大地、大事にしてきた家や土地は奪われ、オリーブの木と共に農地は破壊され、すべてを奪った者たちが「のうのう」とそこに住んでいる。抵抗すれば投獄され、有り得ないような不平等に抗いながらも、結局人々は強大な力に屈服するしかない。「いつか正義は行なわれる」という論理はここには無く、二回に及ぶ民衆蜂起(インティファーダ)が封じ込められた今、自ら戦う術もパレスチナ人には無いように見える。

歴然と横たわる力の差を目の当たりにした私は、ここの問題は「紛争」ではなく、一方的な「支配と占領」だと感じた。と同時に、ここの問題を「紛争問題」として当事者間の責任に留めるのではなく、問題解決に向けたマクロ・ミクロレベル、官・民、イデオロギーを超えた協調・支援が必要不可欠であると感じた。

No.306 「人道支援」の最前線にあって考える (2013年12月20日発行) に掲載】

続きを読む

【スタッフのひとりごと】
地元で人気のカフェ

カンボジア現地代表 山崎 勝
2014年3月 4日 更新
イラスト/かじの倫子イラスト/かじの倫子

プノンペン事務所の隣に、2軒のカフェがある。しかし、カフェというほど洒落たものではない。暗い店内は煙草の煙に包まれており、その霞の先ではカンボジア語吹替え版の香港映画が朝から大音量で流されている。

そんなカフェだが、うまいベトナムコーヒーが1杯30円くらいで飲める(カンボジアでは食堂の昼食が100円程度)。私も、出勤前にアイスコーヒーを頂くことにしている。周りを見渡すと、朝一番の稼ぎを握りしめたバイクタクシーの運転手が多い。彼らの中には公安関係者もいるらしく、他には警官や軍人も目立つ。つまり、ここはインテリジェンスの最前線というわけだ。それ故か、ここで交わされる会話は幅広い。昨晩近所で起こった事件のことから世界情勢にまで話題が及び、それぞれ好き勝手なことを言っている。

No.270 銃を「持つ」人と「持たない」人の境界 (2008年10月20日発行) に掲載】

続きを読む