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パレスチナでの活動

ガザ緊急支援(2014年7月~2015年1月)

2015年2月12日 更新

完了報告

【目次】

  1. はじめに
  2. 支援の概要
    - 1)AEIを通じた支援
    - 2)EHSTを通じた支援
  3. 会計報告
  4. 成果と所感
  5. 最後に
  6. 途中経過報告
  7. JVCスタッフが書く現地ブログ『パレスチナ最新情報』
    (2014年7月以降のガザ地区の状況についての記事)
  8. 今回の空爆・軍事行動に対するNGOの共同声明/要請
  9. パレスチナ関連イベント

はじめに

2014年7月7日~8月26日までの50日間にわたるパレスチナ・ガザ地区に対するイスラエルの軍事行動は、パレスチナ側に、死者2,205人(市民1,483人)、負傷者11,099人の被害を出して一旦の収束を見ています。JVCでは2014年7月~12月の間緊急支援を続けてきましたが、この度2014年度ガザの緊急支援を完了する運びとなりましたのでご報告申し上げます。活動の様子は、「JVCガザ緊急支援2014年度活動写真」をご覧下さい。

【被害概要】国連人道問題調整事務所2014年9月発表レポート一部抜粋

対象 被害状況その他
死者(市民) 2,205人(1,483人)
負傷者 11,100人
家屋破壊 18,000戸
医療施設の破壊 全壊23、半壊62、救急車47台
教育施設の破壊 全壊26校、半壊122校
被害総額 約1,000億円
復興見込み年数 20年

※イスラエル側の死者71人(市民4人:内1人は外国人)

支援の概要

ガザ市地図ガザ市地図

JVCでは2014年7月の戦争開始直後、同月15日から現地パートナーNGO、Ard El Insan(人間の大地、以下AEI)からの要請を受けて緊急支援を開始し、戦争後11月からはガザ中部で活動を続けていた医療ボランティアのチーム、Emergency Human Service Team (緊急人道支援チーム、以下EHST)をパートナーに加えて、12月14日まで、総計10,174人を対象に緊急支援を行いました。

困難や数字に表れない成果については別途下記にまとめておりますが、まず、パートナー毎に実施成果概要をご報告いたします。

1)AEIを通じた支援

今回の緊急支援はJVCのガザの長年のパートナーNGOであるArd El Insan(AEI)からの要請を受けて7月15日に当NGOへの資金提供を目的として開始されました。当初は「AEIがストックしている医療品をAEIクリニックの緊急用の診療活動のために使用する。JVCはそのために使われた医療品の補填に必要な資金の提供をAEIに行う」という限定的内容に留まっていましたが、現地の状況が急速に悪化し、域内避難民も急増したことから、同NGOにプロジェクト用にプールされていた資金を元手にした避難所での飲料水及び衛生用品の配布などの活動もすぐに加わりました。

8月に入ってからは、国際スタッフが現地入りできない状況下で、緊急支援スタッフとして働いていたAEIの現地スタッフ8名のうち、親戚、家族を亡くしたものは2名、家を失ったものは1名で、それ以外でも何らかの被害に遭わなかった人が無いこと(例えば国連現地職員11名が命を落していることなどから分かるように)から、現地では「支援スタッフも被害者」という状況に追い込まれました。数日間は、ガザ現地スタッフの安否確認すらままならない時期もあり、自分の身すら危ない中必死で他者を助けている現地スタッフに、現地での支援状況を正確かつリアルタイムで報告するよう求める事は根本的に難しい事でした。

交戦が厳しい場所ほど支援が必要にもかかわらず、ガザ域外にガザの人々が逃げられない、それにもかかわらず外国人が中に入れない状況はガザ独特のもので、ガザでの緊急支援の難しさを実感したところでもあります。支援は10月の現行事業再開まで続き、のべ9,375人の人々を支援しました。

  1. 【対象地】ガザ地区ガザ市および、ハン・ユニス市
  2. 【同活動のためにJVCが給与を支払っていたスタッフ数】8名
    (保健師4名、運転士1名、会計1名、調達者1名、データ管理者1名)
  3. 【活動期間】2014年7月15日~10月15日
  4. 【活動内容】
    ①避難所での衛生管理支援・衛生教育、子どもの心理ケア、医療診療
    ②AEIクリニックでの外来治療
    ③避難所外被災地域での医療診療
  5. 【対象者】①避難所で生活する人々、②外来患者、③地域住民
  6. 【実績詳細】合計9,375人(内訳以下詳細)

    ①避難所5,134人(591家族)
    572人:5歳以下の子どもへの健康診断とフォローアップ
    1,816人:12歳以下の子どもへの心理のケア・グループカウンセリング(94回実施)
    1,966人:母親および若い女性への衛生カウンセリング等の実施(100回実施)
    280人:一時医療診療の実施(3回実施)
    500人(家族):衛生キット配布
    ②AEIのクリニック
    3,293人:外来診療
    14,185(単位:個):医療品等の配布
    ③避難所外地域での一次医療診療の実施(2回)
    948人(2回)

2)EHSTを通じた支援

EHSTが対象としていたディール・アル・バラフの避難所は、JVCスタッフが初めて訪れた9月21日の時点で、緊急支援の主流実施団体であるUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の支援対象から外されていた場所でした。NGOの役割として、大手支援の枠から漏れた人々、支援の行き届かない人々への支援が最優先であるという認識のもと、JVCではAEIの活動と別に、すでに当該避難所でボランティアでの支援活動を開始していたEHSTを通じた支援を行うことにしました。

分野としては、2つの別の国際NGOが、飲料水・食料・毛布などを早い時期から配布していたため、こうした支援と並行し、JVCでは医療支援のみに特化し、EHSTに医薬品・診療器具などを供与することになりました。

他方、UNRWAからは公式に認められていない避難所においてJVCが支援活動を行うことによって、UNRWAによる避難所の統廃合のプロセスにおいて支障をきたすかどうかについても注意を払う必要がありました。

このため、EHSTの有給スタッフだけでなく、避難所でサポートをするボランティアとも、UNRWA主導の支援の枠組みに統合させる方向で活動を行う様話しあい、またこの過程において今まで支援をしたことがない新規団体であるEHSTのスタッフとJVCの考え方・方法論を共有したりすることには一定の努力が必要でもありました。結果的、非常に深い信頼関係を構築しながら、のべ929人の支援を行いました。

※なお当避難所は、12月よりUNRWAに正式に認められ、また1月中旬に、UNRWAが管理している近隣のアル・マガジ避難所と統合されました。

  1. 【対象地】ガザ地区ディール・アル・バラフ避難所
  2. 【同活動のためにJVCが給与を支払っていたスタッフ数】6名
    (マネージャー(兼看護師)1名、医師2名、看護師3名)
  3. 【活動期間】2014年11月15日~12月14日
  4. 【活動内容】
    ①避難所での一時医療診療および健康診断
    ②医薬品の配布
    ③衛生教育
    ④子どもの心理カウンセリング
  5. 【対象者】避難所で生活する人々
  6. 【実績詳細】合計929人(内訳以下詳細)
    ①一時医療診療:549人
    ②健康診断(血糖値・ヘモグロビン測定など):130人
    ③医薬品の配布:2,994個
    ④母親および若い女性への衛生教育:175人(6回)
    ⑤子どもへの心理ケアのためのグループカウンセリング:75人(6回)

会計報告

2014年7月15日~10月末日

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【収入】ドル円換算額
637個人団体76,666.79,200,000.0
(小計)76,666.79,200,000.0
【支出】
AEI 委託費38,141.84,577,016.0
EHST委託費4,601.4552,168.0
JVC支出14,076.01,689,123.9
(小計)56,819.2 6,818,307.9
【収支】2,381,692.1

※使途詳細については別途「JVCガザ緊急支援2014年度収支報告」を参照
※余った資金に関しては、JVCとAEIがガザで共同実施している「子どもの栄養失調予防事業」の運営費等に充てられます。

成果と所感

「支援者が被害者」という絶望的な状況のなか、AEIやEHSTスタッフが、絶えず支援対象者となる人々を優先しようと心がけていたことは、JVCスタッフが日々現地スタッフと連絡を取りながら確認してきたやり取りの中から明らかで、ガザの人々自身のイニシアチブによって、数における成果を上げたことは、人間が人間として成し得る最高に尊い行為の結果であり、本当に「素晴らしい」の一言に尽きると感じています。また、数に見えない部分においても特筆すべき成果が有りました。

例えば、AEIの活動では、戦争中に病院やクリニックを必要とするのは、何も怪我人ばかりではないことから、AEIが常にクリニックを運営していたことは非常に重要で、事実、過度なストレスにより体調を崩した子どもや、衛生状態の悪化に伴って皮膚病や下痢を患った人々、また糖尿病やシリアック病などの慢性病患者にとって、クリニックの継続的な運営が、一次医療処置を受けられるという安堵や希望を患者に与え続け、平時と変わらぬ生活を保障すると言う点において、非常に有意義であったと考えています。

また、こうした活動のために現地スタッフの誰かしらがクリニックに通い続け、治療にあたったこと、また必要とされている医療品等を配布できたことは、規模だけに表れない成果を導いたと考えています。

また、もう一つ、AEIの活動において、早い段階から避難所における衛生状態の悪化を懸念し、衛生管理キットを配り、それと同時に衛生管理のための講習会を行ったことや、人々のニーズに沿った物資配布を行えたことも称賛に値する事だと考えています。

事実、国連などの大手支援者が配布した門切り型の物資(缶詰などの食料や大量のおむつ)が、受益者によって避難所前の露店に大量に売りに出されていた中、AEIを通じて配布された衛生キットが一つとして売りに出されなかったことは、人々のニーズに沿った物資の供給が出来た事の裏付けでもあると考えています。

更に、対処療法的な治療でなく、いち早く予防の観点から活動できたことは、不必要な病理やストレスを軽減するために避難所では何よりも大切な事であったと考えています。またこの活動において、最も被害が大きかったと言われる、またかつてJVCの栄養失調予防事業の活動地であったシュジャイヤ地区からの避難民が、避難所での活動を手助けしてくれたことは、(皮肉にも)人々に衛生教育が脈々と根付き、ひとり1人が衛生状態を改善する基盤をJVC-AEIの活動が作り上げていたという意味において特筆すべきことです。

EHSTを通じた活動についても、ガザ全体の状態が戦争中から戦争後へと安定して行く過程において、避難所と言う特異且つ困難な場所で生活を余儀なくされた人々の声に耳を傾け続けたことで得られた成果は大きいです。クリニックでの治療で言えば、例えばある女性は、EHSTの初期治療としかるべき病院への紹介によって、糖尿病由来の足の壊死及び切断を回避する事が出来ました。

また、繰り返し行われた衛生教育によっては、JVCスタッフが初めて避難所を訪れた9月当時より、事業を終了した12月当時の避難所の衛生状態は目覚ましく改善していました。これらは不必要な衛生状態の悪化を防ぎ、感染症の予防につながったと考えています。

また、ボランティアとしてEHSTと共に活動をしていた人々の一部は、国連へ避難所が引き継がれる過程で、国連の現地スタッフとして採用され、引き続き衛生指導を行うことになりました。活動そのものが終わっても避難所に暮らす人々を支えられる、長期的な視点に立った活動が、同じく数で見えてこないこれらの成果につながったと考えています。

最後に

両団体の支援先であった避難所には、涙なくして語れない悲惨な状況に追い込まれたIDP(域内避難民)が数千人単位で住み続け、その中にはかつてのJVC-AEI事業の支援対象者も含まれています。JVCパレスチナ事業がこれまで行ってきた「ガザの人々自らが活動する栄養失調予防事業」は、コミュニティを基盤とした「人づくり」を活動の核としてきました。

しかし、今回のように大規模な空爆・軍事侵攻で、コミュニティ自体が破壊されてしまうガザの脆弱さを考えると、事業の恒常的な価値を問うことは非常に難しく、また空爆があっても破壊されないような支援を行えないことは最大のジレンマであり、大変悔しい事でもあります。

また2015年1月現在、ガザ現地の復興の足並みは非常に遅いと言わざるを得ません。5ヵ月の間域内に届いた復興物資は全体の1パーセントにも満たないとの情報もあり、雨季でもある冬季を迎え、凍死者4名が出るほど、被害者たちにとっては一層厳しい冬になっています。戦争後の現地スタッフを含むガザの人々の疲労と恐怖、絶望感は、現在も消えず、2012年11月の緊急支援後のガザ域内の様子と比べても大きな差があることはJVCスタッフも繰り返し実感しています。

この状況に鑑みれば、JVCも引き続き物を提供する人道支援を主流とした活動を続けるべきである、との考えもありますが、一方で、繰り返される攻撃の合間に、今まで通り「人づくり」を基盤とした活動を続けることには、ガザの人々が封鎖解除後に早く自立できることを促す点と、人々の衛生や子どもの栄養に対する知識を底上げし、それがいかなる状況でも役に立つと言う点において、意味深いとも考えています。

ガザが攻撃されることが恒常化し、緊急支援が必要とされる事態が頻繁に起こってしまっているガザの現状とは非常に矛盾しているようでもありますが、今まで1年半の間ガザ地区ジャバリヤ市内で行ってきた現行事業を停止することによる弊害(例えば育成してきたボランティアが活動から離れてしまう、研修した内容を忘れてしまうなど)も予測できる中、現行事業の栄養失調予防事業は2014年10月1日から現地ボランティア及びスタッフの「継続実施希望」の意志に強く支えられて本格的に再開しているため、緊急支援の7割を使った現時点で、現行事業へ立ち返る時期であると判断しました。

JVCでは、文字通り、二度とこういった事が繰り返されるべきではなく、そのためにJVCは今後も、現場での支援活動だけでなく、日本国内外での政策提言・情報発信など、問題の根本的解決に向けた活動も積極的に続けていきたいと考えています。

このたびは皆様に多大なご支援いただき、誠にありがとうございました。今後もJVCでは、ガザをはじめとしたパレスチナへの支援を現地の人々に寄り添いながら続けて参ります。引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

途中経過報告

JVCは今回の攻撃に対して、現地協力団体とともに医療支援や心のケアなどの緊急支援活動を行っています。その報告を順次アップしてまいりますので、ご覧下さい。

JVCスタッフが書く現地ブログ『パレスチナ最新情報』
(2014年7月以降のガザ地区の状況についての記事)

【2014年7月以降のガザ地区の状況についての記事】
2014年11月10日公開 イスラエルは人権を尊重しますが、私たちをそもそも人間とは見なしていません。
2014年10月 9日公開 ガザ戦争の現実(1)
2014年9月18日公開 ガザの声「みんな事業の再開を希望しています」
2014年9月 4日公開 ガザの声「ただ今は、目の前にあることをみて進むほかない」
2014年8月26日公開 パレスチナ:占領という不正義
2014年8月14日公開 ガザの声「ビルナージャの対象者に母子の被害者はいなかったよ!」
2014年8月 7日公開 ガザの声「5歳になる孫がパニック症状を起こして叫び続けているの。私もどうやってこの状況を説明していいのかわからない」
2014年7月29日公開 ガザの声「今日も生きている。人類は今まで何を学んできたのか?ここには一切の正義は無い」
2014年7月23日公開 ガザの声「自分の家も砲撃で壊されてしまったし、近くにいたお母さんの家も壊された。ベイト・ハヌーンには何もなくなってしまったよ」(7月22日付)
2014年7月21日公開 ガザの声「24時間のうち4時間しか電気がきません。発電機のためにガソリンを貯めていましたが、あと20リットルしか残っていません」(7月18日付)
2014年7月19日公開 ガザの声「昨夜から今朝まで催涙弾の匂いがしており、イスラエル軍が近くに来ているのを感じています」(7月18日午後9時付)
2014年7月18日公開 ガザの声「地元ニュースでは世界の状況が分からないので、もし停戦が決まったら、いつでもいいので電話してください」(7月16日付)
2014年7月18日公開 ガザの声「今は危険だから来てはいけません。状況が落ち着いたらまた来てください。ガザの人々はあなたをいつも歓迎しています」(7月14日付)
2014年7月15日公開 ガザが泣いています。
2014年7月11日公開 憎しみと暴力の連鎖を断ち切るために、ガザ内部へ或いは外部への無差別空爆に強く反対し、一般市民を巻き込んだ交戦をやめるよう求めています。
2014年6月20日公開 イスラエル軍が西岸地区で大規模侵攻を開始

今回の空爆・軍事行動に対するNGOの共同声明/要請

JVCでは今回の空爆・軍事行動に対し、NGOの共同声明を発表(7月11日)しました。また、各種関連イベントを開催し、ガザの人々との連帯を求め、停戦と封鎖解除を要請してきました(7/15(1)、7/22(2))。ガザの人々を守るため、引き続きできる限りのことをしていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

パレスチナ関連イベント

開催日タイトル
2014年7月24日被占領パレスチナの人権状況と国連とNGOの役割 (東京)
2014年7月30日パレスチナ・ガザ地区における人道の危機と援助の現場 (大阪)
2014年8月7日人道支援団体スタッフが聞いたガザの叫び (東京)
2014年8月19日パレスチナ人女性が話す、パレスチナ問題とJVCの学校保健事業(東京)
2014年8月24日パレスチナ人女性が語る、パレスチナ問題と占領下での保健医療活動(京都)
2014年8月28日仏教者はガザの人々の苦しみにどう向き合えるのか(東京)

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