
前ベトナム事業担当: 越智美奈
・
アヒル水稲同時作は、アヒルが雑草や害虫を食べ、そのフンが肥料になります。またアヒルが田んぼを泳ぐことで、土壌が改善し、丈夫な稲が育ちます。これらは農民の健康を守ることができるほか、多くの地域で女性が担っている除草労働を軽減し、ベトナムの農民にとって深刻な田ねずみによる被害も減少しました。さらには、アヒルの肉や卵を得られるので、農家の栄養改善や、販売による収入向上につながるなど、多くの利点があります。
JVCの普及活動は、各地にあるVACVINA(ベトナム複合農業者同盟)の協力を得て展開してきました。まずは、この農法に興味のある農家を選定し、家と田んぼの距離や水の管理などを考慮して、試験田を設定します。アヒル水稲同時作の実際を農民に見えてもらうためです。そして田植えの10日ほど後からアヒルのヒナが放たれます。試験田はヒナが水田の外に出ないよう、ネットで囲みます。また、日本では一日中田んぼにヒナが放たれますが、ベトナムでは盗難を防ぐために、夜は家につれて帰ります。
農家がこの農法を実践する中で直面した問題もいくつかあります。例えば、地域によってはその時期が農家の現金が底をつく時期と重なったり、市場から遠すぎたりして、必要な時期にアヒルのヒナを入手することが難しい点があります。普及の段階ではJVCがヒナを提供しますが、その後農家が継続するためには、この点が解決されなければなりません。そのためにはアヒルの孵化技術を農家が身につけることも必要かもしれません。実際に、伝統的な孵化技術がある地域では、それの技術を生かして地域でヒナを供給できるようになったところもあります。抱える課題は地域によって異なるので、その地域の事情に合った解決策が望まれています。
また、自給ではなく米を販売している地域でこの農法が広く定着するには、消費者の健康や環境への関心が高まり、この農法によって生産された米の価値が理解される必要があります。ハイフォンの農家は、「アヒル水稲同時作では、改良品種ではなく在来種を育てている。アヒルのお蔭で土壌も維持され、よりおいしいお米が収穫できる。」と胸を張ります。これからは流通や環境など幅広い取り組みが必要となるでしょう。
各地の農民と向き合い、今後もJVCは息長くアヒル水稲同時作の普及を続けていきます。
|