現在、JVCが活動する四ヶ浜(しかはま)の大浦(おおうら)と梶ヶ浦(かじがうら)では、防災集団移転事業が進められています。前回の訪問に引き続き、6月7日、8日の二日間にわたり、防災集団移転に関わるアドバイザーの方々が気仙沼を訪れました。今回の訪問の目的は、地域の背景を知るための各関係者へのヒアリングと、防災集団移転に参加する住民の皆さんにアドバイザーの方々をご紹介することです。
ヒアリングは、「まちづくり」を考える上で重要な6つの観点、すなわち住宅、仕事(産業)、日常生活(消費、サービス)、保健医療、教育、防災をテーマとして行われました。様々な分野の関係者にヒアリングを重ねることで、徐々に地域の現状が浮き彫りになっていきました。
例えば仕事について、現在気仙沼では、求職者が後を絶たない一方で、不安定な雇用条件や厳しい労働環境のために人が集まらず、事業者が人出不足に悩む状況が続いています。あるいは医療について、恒常的な医師不足と市民病院への患者の集中、訪問診療のニーズの高まりが見られます。こうした地域の課題は、必ずしも震災によって生じたものばかりでなく、震災前から潜在的に存在していたものも含まれています。新たなまちづくりを考えていくためには、地域の状況を把握するためのヒアリングが今後も重要となっていきます。
ヒアリングに続いて、大浦の総会に合わせて、アドバイザーのお披露目が行われました。総会の場には、梶ヶ浦の住民の皆さんも同席しました。まず、アドバイザーの役割として、防災集団移転事業や災害公営住宅の設計について、住民と行政とのつなぎ役を担うこと、また個人の住宅再建に関して、その相談役となることが確認されました。続いて、アドバイザーの側からは、ワークショップの提案や今後のスケジュールの説明が行われました。
アドバイザーの一人は、次のように語りました。「ただ家ができればいいのではなく、皆さんの『暮らし』をつくっていくことが大切です。そのためには、買い物や医療、教育などの要素をバランスよくイメージした上で、集団移転について考えていく必要があります」。これを受けて、住民の間からは、「アドバイザーの方々の助言を受けながら、自分達の暮らしについて、自ら考え、作り上げていきたい」との声が上がりました。今後は、月一回のペースで、こうした住民とアドバイザーとの対話の場を設けていきます。両者の対話が充実したものとなる様に、JVCは引き続き、住民とアドバイザーとの間をつなぐ役割を担っていきたいと思います。