今回の震災によって、多くの人々が暮らしを営む住居を失いました。被災した人々が生活を再建していく上で欠かせないことは、その住まいを取り戻すことです。現在、気仙沼市では、地区単位で住居再建のための「防災集団移転促進事業」(※)が進められています。
防災集団移転では、住民の充分な合意の下に行われる、新たな「まちづくり」が重要となっていきます。この新たな「まちづくり」に際して、専門家の方々にアドバイスを頂けないか-。四ヶ浜(しかはま)の大浦(おおうら)と梶ヶ浦(かじがうら)の住民からこうした要望を受けたJVCは、建築やまちづくりの分野で活躍する専門家を探し、アドバイザーとしてお呼びすることにしました。
4月26日、5人の専門家を招いて、住民との現場視察と意見交換の機会を設けました。午前は、住民の案内で、集団移転の候補地の視察を行いました。地図を片手に、候補地の様子や特徴を確認して回りました。午後からは、市役所に赴き、担当の職員と計画に関わるコンサルタントから現在の事業の進捗や、今後の展開についてのヒアリングを行いました。その後、住民と専門家との間で、「まちづくり」についての意見交換を行いました。
意見交換の席では、両者の間で活発な話し合いが行われました。住民からは、「豊かな風土を生かした、暮らしやすいまちをつくっていきたい」「住居を再建するまでには、長い道のりになる。ふるさとに戻るその日まで、住民の間で、夢を持ち続け、モチベーションを維持することが重要」など、様々な思いが語られました。一方、専門家からは、「行政のプランを住民の方々が充分理解できるように、その橋渡しをしていきたい」「どんなことでもいいから、話してほしい。住民の方々の思いをまとめ、提案をすることができれば」などの意見が出されました。
現在も住み慣れた土地を離れ、仮設住宅やアパートで暮らす住民達。「住んでいた場所に戻りたい。でも戻れないかもしれない。様々な気持ちを抱きながら、それでも海を眺められる場所に戻りたいのです」と住民の一人は語ります。住民の思いが反映された、よりよい「まちづくり」を目指して、JVCは今後も、住民と専門家とをつなぐ結び目の役割を担っていきます。
※「防災集団移転促進事業」…災害が発生した地域や災害危険区域で、居住の安全を図るため、国が市町村に対して事業費の一部を補助し、住民の集団的移転を促進する事業。市町村は安全な宅地を造成し、住民はその宅地(賃貸または分譲)に住宅を建設する。住宅建設費用は住民の自己負担となるが、借入金の利子や引越し費用等が一部補助される。