6月7日、防災集団移転のアドバイザー派遣を実施しました。今回は、大浦地区の造成地見学会と総会が開催され、住民約30名の参加を得ました。
7日の午後、造成工事が進められている高台移転予定地の見学会を行いました。工事着工から1年以上が経過し、ようやく道路や宅地の形が目で見て確かめられるようになりました。見学会では、設置された側溝の様子や宅地の広さ、法面(のりめん)の状況などが確認されました。見学会に参加した住民からは「道路の曲がりが意外に緩やかだな」「宅地と道路の高低差がかなりあるね」「高台からの眺めは本当に素晴らしいわ」といった感想が寄せられました。現在の見通しでは、今年の秋には造成工事が一段落を迎え、宅地の引き渡しが開始される予定となっています。
見学会終了後、旧浦島小学校にて総会が開催されました。総会でははじめに、コンサルタント会社から応急仮設住宅の備品譲渡に関する手続きや住宅移転に係る補助事業についての説明が行われました。また、水道管の引き込み位置の調整、電柱とアンカーの設置箇所の確認、団地の植栽についての検討などがなされました。
続いて、隣地間段差の土留め工事の共同発注に関する話し合いが行われました。土留め工事の共同発注については、約1年間にわたる協議を経て、前回の総会で合意に至りました。ここでは、土留め工事の施工業者を決定するに当たり、改めて工事費用の見積価格が提示されました。当初想定していたよりも高いL型擁壁(ようへき)が必要となること、資材費が高騰していることなどが主な原因となり、以前の見積時点と比較して世帯ごとの負担分が増加することが報告されました。これを受けて住民からは「その価格では納得できない」「費用が安くなる他の手段はないか?」といった意見が出されました。一方、アドバイザーからは、「擁壁の設置箇所を少し変更すれば、元々の高さの擁壁で対応することは可能です」との話がありました。協議の結果、工事費用を当初の見積価格に少しでも近づけるために、元々の高さのL型擁壁で再度見積をとること、さらにはL型擁壁ではなくブロックによる土留めなども検討することになりました。
また、すでに合意がなされている「まちづくりルール」についても協議が行われました。大浦地区では「まちづくりルール」の一つとして、「道路境界から宅地内1mの部分を『まちづくり活用ゾーン』と設定し、建築物および工作物を置かずに植栽などを施すことによりまちの雰囲気を作り出す」ことが申し合わされています。
このルールに関して、住民からは「そもそも『まちづくり活用ゾーン』は本当に必要なのか?住宅の設計を進める中で、限られた敷地を有効に使いたいという思いが出てきた」との声があがる一方で、「何度も何度も議論をして、それはすでに決まったことだ。振り出しに戻ってしまう」といった意見が出されました。
アドバイザーからは「個々の障害のない範囲でまちづくりを進めることが前提です。『まちづくり活用ゾーン』の部分も自分で何かに使いたいということであれば、使い方についてもう少し話し合ってみてはいかがでしょうか」との話がありました。協議の結果、現状のルールをベースとして『まちづくり活用ゾーン』のあり方を次回協議会でも話し合うことになりました。
大浦地区における「まちづくりルール」の策定や土留め工事の共同発注については、予想される問題を未然に防ぎ、暮らしやすいまちを形成することを目的として検討が重ねられてきました。しかしながら、これらは住民個々の利害に深く関わるため、その合意形成は一筋縄ではいきません。よりよいまちづくりを目指して、この困難を乗り越えられるか否かが問われています。協議会が発足してから4年。大浦地区住民の高台移転の取り組みは、大詰めを迎えています。