
スーダン事業担当: 佐伯美苗
対立してきた住民同士が集まり、ともに生活再建の活動を行うことで、地域での平和を確かなものに
「和平の試金石」、南コルドファン州
![[地図]](img/prj03map.gif) |
| ■南コルドファン州の位置 |
スーダン中央部、南北境界線の北側に位置する南コルドファン州は、行政上は北部スーダンに属するものの、北部とも南部とも割り切ることができない複雑な歴史的背景を持っています。
州の中央部に広がるヌバ山地に住むアフリカ系の人々(「ヌバ」と総称される)は、長きにわたってアラブ系を主流とする中央政府(北部)から差別、抑圧を受けてきました。そうしたことから、1980年代に南北内戦が始まると、多くの人々が反政府勢力である南部SPLM(スーダン人民解放運動)に同調してこれに加わりました。しかし一方で政府軍の影響下に置かれた村もあり、ヌバの人々は二つに引き裂かれ、激しい戦闘によって多くの犠牲を払いました。
![[南コルドファン州]](img/sean.jpg) |
■平原と丘陵の続く南コルドファン州。内戦中 は、山中に隠れ家が設けられた。 |
内戦終結後、南コルドファン州は南北境界線上の他の2地域(青ナイル、アビエイ)とともに「暫定地域」とされ、南北による共同統治が実施されました。しかし、旧「政府支配地域」と「SPLM支配地域」との統合に手間取って復興が思うように進まないばかりか、現在も住民間の抗争が絶えません。抗争の原因は様々ですが、水場や土地を巡る軋轢に政治的な対立が絡んでいるケースが多く報告されています。
「北部」と「南部」がせめぎ合うこの地域の安定は「和平の試金石」と目されています。にもかかわらず、自治政府が誕生し国際社会の注目が集まる南部に比べ、北部に属する南コルドファン州を重視する国際NGOは多くはありません。だからこそ活動を行う意義があると判断し、JVCは2010年度よりスーダンでの活動拠点をここに移すことを決定しました。
問題の根本は、「民族」や「宗教」ではない
![[使用不能になった井戸]](img/well.jpg) |
■内戦と社会開発の遅れによって水源の維持 も困難になった。わずかな井戸に多くの住民 の利用が集中する。 |
具体的な活動地として選んだのは、南北境界線に近いエル=ブラム郡の二つの村です。そこでは、昨年まで深刻な住民間抗争が続いていました。村にはムスリムとクリスチャンが混在していますが、教会の焼き討ちやクリスチャンへの殺害事件が起きたのです。
表面上これは宗教を巡る対立のように見えますが、実は長い間、ムスリムとクリスチャンは同じ村の中でともに生活を営んできました。それが抗争に至った背景として、村の中にある中央政府(北部政府)支持の住民グループと南部SPLM支持のグループとの確執を挙げることができます。必ずしも前者が皆ムスリム、後者が皆クリスチャンというわけではありませんが、中央政府支持派の行政官が村に派遣され、宗教を利用して両者の対立を煽ったと言います。南北の内戦そのものにも同様の構図があり、本来は宗教を対立軸としたものではないのですが、北部=ムスリム、南部=クリスチャンという図式化が行われ、住民の対立感情を煽るため宗教が最大限に利用されました。
この地域では内戦中に激しい戦闘が行われ、多くの住民が国内避難民となって首都ハルツームなど北部の諸都市に逃れました。内戦が終わって住民は戻ってきたものの、その後も住民間の抗争が続いたため、村人の生活再建は遅れています。内戦前は多くの家庭が家畜(ヤギ、ヒツジなど)を持ち、まとまった支出がある時にはそれらを売って現金を得ていましたが、内戦中に家畜は失われ、今は現金収入の方法が出稼ぎに頼るほかありません。町へ家事手伝いなどの出稼ぎに出される子供も少なくなく、小学校では学年が上がるほど児童数が減るという現象も起きています。また、村では学校や井戸といった基礎的な社会インフラも十分でなく、内戦中に破壊されたという井戸をはじめ、多くの井戸が使用不能になっています。
JVCが目指すこと、それは・・・
![[話し合いを通してアドバイスをします]](img/meeting.jpg) |
| ■住民の集会に傍聴参加させてもらう。 |
JVCはこの村で、対立してきたグループを含む住民たちがともに集まって話し合い、生活を改善するための様々な活動(社会インフラの整備や収入創出など)を共同で実施しながら相互の理解と信頼を深めていけるように、様々なアドバイスや側面支援をしていきます。
多くの人道支援団体が「内戦で荒廃した南部スーダン(と暫定地域)には何もない」という認識のもと、学校や診療所、農具や作物の種に至るまで何もかもを支援してきました。緊急援助という意味では必要だったとも言えるこうした支援が、反面では村人に援助に期待し依存する気持ちを持たせてしまったのも事実です。実際には、スーダンには「何にもない」わけではなく、多くの自然資源や、家屋の作り方や作物の栽培法から薬用植物に至るまで伝統的な知恵や技術が息づいています。そうした資源や知恵に村人が気づき、それを活かして生活再建を実施していく過程を手助けするのが外部者として関わっているJVCの役割だと言えます。学校校舎の補修、自然産品の加工など、様々な場面で村の資源や技術を役立てることができるはずです。
こうした活動が紛争当事者であった両グループを含めた多くの村人の参加によって実施されることで、住民間の信頼が取り戻されていくと期待しています。同時に、JVCは村の歴史や住民間抗争の間の出来事について住民から聞き取りを行い、それを記録し村人と共有する場を設けます。村人自身がこれまでの経緯を振り返り整理することは、和解に向けた足掛かりになるはずです。
今後の活動について
私たちが目標としているのは、地域で何か問題が起きた場合にも、それが紛争に至る前に住民が自分たちで解決する力を身につけることです。2011年の南部住民投票に関連して、南コルドファン州では異なる政治グループ間での緊張関係が高まることも懸念されています。そうした際に、それが争いに発展しないようにするためには、地域社会が安定していなければなりません。
この活動の実施期間は2010年から2011年にかけての約1年間ですが、その間の成果と活動の目標を見据えながら、また流動的な政治情勢も踏まえた上で、さらにその後の活動を計画したいと考えています。
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