乾季の菜園づくりの記事一覧

【乾季の菜園づくり】
緑いっぱいの畑

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年5月16日 更新

菜園づくりの研修を行ってから、早いもので2か月が経ちました。
そのあいだ、専門家のカッチョさんによる訪問アドバイスや、如雨露(じょうろ)の配布などを行ってきました。はたして、野菜の育ち具合と収穫はどうなっているでしょうか?

井戸のポンプで灌漑用の水を汲み上げ、<br/>手押し車で菜園に運ぶ井戸のポンプで灌漑用の水を汲み上げ、
手押し車で菜園に運ぶ

井戸の周りに、ポリタンクがぎっしりと並んでいます。トブ(一枚布の女性用着衣)姿の主婦が手慣れた要領でポンプのハンドルを上下に動かすたび、水がザアザアとポリタンクに流れ込んでいきます。そして満水になったポリタンクを頭に乗せて運んでいく...のが普通の光景ですが、ここでは少し違います。
集まった主婦たちはポリタンクをどんどん緑色の手押し車に積んでいきます。日本の工事現場で「ねこグルマ」と呼ばれる、あの手押し車です。ポリタンクを満載すると、車の把手をグイッと持ち上げて、井戸の周りに並んだ菜園に向かいます。

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【乾季の菜園づくり】
ラシャシャを探せ

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年5月 2日 更新

JVC事務所からほんの5分も歩けば、そこはカドグリの「スーク」です。スークとは、アラビア語で「市場」。でも、それは市場というコトバから連想される露天商が集まる場所だけでなく、衣料品街、電気街、食堂街、それらを含む商業地区全体がスークと呼ばれています。

スークに足を踏み入れたJVCスタッフのタイーブは、乗り合いバスが客の呼び込みをしている一角を過ぎ、建築資材が山積みになった店を左に眺め、やがてガンガンと音楽が鳴り響く一帯に出ました。テレビや携帯電話の修理屋が軒を連ねる電気街です。そこも通り過ぎ、その先の衣料品街もやり過ごすと、ようやく目的のエリアです。
あちこちの店先で、金物職人が廃品のブリキ缶や針金から小型の湯沸し鍋、コーヒー用に注ぎ口が付いたポット、香木を焚くための台座などを作っています。
「このあたりだな」
タイーブは、ブリキの鍋が並んだ店に入って尋ねてみました。
「このへんに、ラシャシャを作っている人はいませんか?」

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【乾季の菜園づくり】
カッチョ先生の菜園訪問

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年4月25日 更新

「こんにちは」
JVCスタッフのアドランが柵の入口から菜園に足を踏み入れると、トブ(一枚布の着衣)をまとった主婦たちが作物への水やりをしていました。ルッコラやクレソンの緑が鮮やかな畑の中に、井戸から水を運ぶためのポリタンクがあちこちに転がっています。

「おや、ムナザマの人かい?」
ムナザマというのは、アラビア語(スーダン方言)で「団体」といった意味ですがカドグリでムナザマと言えば、一般にNGOなど援助団体のことを指します。
「ムナザマ」が来たということで、みんな、畑仕事の手を止めて集まってきました。

畑仕事をしている主婦たちに話をするカッチョさん(左から2人目)畑仕事をしている主婦たちに話をするカッチョさん(左から2人目)

「皆さん、お久しぶりです。菜園はいかがですか?皆さんが研修を受けてからしばらく時間がたったので、今日は農業の専門家の方に、様子を見に来てもらいました」
アドランがそう言うと、赤いシャツを来たカッチョさんが進み出ました。
「こんにちは、カッチョ・クンダです。去年まで農業省で働いていました。今日は、皆さんの畑を見せてもらいに来ました。野菜づくりで困ったこと、分からないことがあったら何でも聞いてください」

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【乾季の菜園づくり】
カッチョ先生登場

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年4月18日 更新

菜園づくりの研修が終了し、やがてカレンダーは2月になりました。
その後、菜園での種まきや野菜づくりは、どうなっているでしょうか?

「そろそろ、フォローアップの訪問をしないといけないね」
私たちは、そんな話をしていました。フォローアップとは、研修に参加した人たちの菜園を訪問して、研修で学んだことを生かせているか様子を見たり、灌漑用水の不足や病害虫などの問題が起きていないか相談に乗ったりすることです。もちろん、農業の専門家が訪問しなくてはいけません。JVCスタッフのアドランは農学部出身ですが、ちょっと役不足です。

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【乾季の菜園づくり】
マスタバとサラバット ~菜園づくり研修~

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年4月18日 更新
木陰の研修会場。ふたつのグループに分かれ、2本の木の下で行った木陰の研修会場。ふたつのグループに分かれ、2本の木の下で行った

1月中旬、ティロ本村での菜園研修が行われました。地元住民、そしてここに住む避難民、合わせて51名が、会場とあった広場の木の下に集まりました。8割以上が女性の参加者。トブと呼ばれるスーダン女性の色とりどりの服装が鮮やかです。 講師役は、州農業省から派遣された専門家が2名。全体を2つの大きなグループに分け、それぞれに1名の講師がついて研修が始まりました。

午前中は講義の時間。まずは野菜の栄養素について学びます。ふむふむ、なるほど、野菜ってそんなに健康にいいんだ...と思っていたら、講義はあっという間に終わってグループ討論の時間になりました。参加者は数人の小さなグループ毎に輪を作ります。各グループには、オクラ、モロヘイヤなど、ひとつずつの野菜が課題として割り当てられました。

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【乾季の菜園づくり】
菜園参加者の名簿づくり ~ティロ本村の場合~

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年3月31日 更新

「菜園を作るって、そりゃあいい考えだ」

シエハ(住民リーダー)のサレさんが声を張り上げました。

話し合いの様子。奥にみえている土地は菜園候補地話し合いの様子。奥にみえている土地は菜園候補地

カドグリ郊外、私たちがウォーターヤードを設置した避難民向け住居の手前に位置する、ティロ本村。この「現地だより」でも、これまでに何度か登場した場所です。菜園づくりプロジェクトの候補地として、12月中旬にJVCスタッフが訪問して住民リーダーたちと話し合いを持ちました。

「今は、みんな乾季に薪拾いをしたりカヤを集めたりしているけど、それだけじゃダメだ。住民も増えているし、何か新しいことを始めなきゃいかん。分かっているか」

サレさんは力説しています。会合には、ほかに地区委員会(地方政府が任命した行政の末端組織)のメンバー、そしてこの地区で生活を送っている避難民も集まりました。

避難民グループのリーダー、ユスフさんは
「避難前に住んでいた元の村には菜園がたくさんあった。野菜作りのことなら、ワシらのグループに任せておけ」
と自信ありげです。

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【乾季の菜園づくり】
サラの不安

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年3月31日 更新

ティロ本村での菜園研修の日が近づいてきました。

サラ(菜園研修中に撮影)サラ(菜園研修中に撮影)

地元住民と避難民を合わせて51人が、州農業省から派遣された講師による1日の野菜作り研修に参加します。午前中は講義、そして午後は畑に出て実技研修。その合間に昼食を取ります。

さて、研修といえばいつも話題騒然となるのが、このお昼ごはん。これまで私たちが実施した研修で昼食を提供した際には、参加者の一部から様々な不平が出てきました。

「どうして、町のレストランから食事を取り寄せないで、村の中で調理するのか?」
「どうして、チキンのモモ焼きがないのか?」
「そんな昼飯しかないなら、オレは研修に参加しないぞ」

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【乾季の菜園づくり】
手押しポンプ井戸で灌漑する村

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年3月25日 更新

乾いた大地が広がる12月の南コルドファン州。最後に雨が降ってから、すでに1か月以上が経っています。雨季には緑に覆われていた山々も、すっかり茶色に変わりました。

ここでは、1年のうち約半分、12月から5月は全く雨の降らない乾季。天水で農業を行う人々にとっては、いわゆる農閑期にあたります。

ウサギを捕まえた村人(紛争開始前の2011年4月に南コルドファン州内にて撮影)ウサギを捕まえた村人(紛争開始前の2011年4月に南コルドファン州内にて撮影)

農閑期だからといって「ヒマ」なわけではないのは、たぶん日本のお百姓さんと同じでしょう。その間、村の人々はマンゴーやグアバなどの果実を取ったり、森で樹液や蜂蜜を集めたり、木の皮をはいでその繊維から縄を結ったり、炭を焼いたり、カヤを集めて家の屋根を葺き替えたり、薪拾いをしたり...やることは山のようにあります。そうそう、狩りも忘れてはいけません。ウサギなどの小動物、時にはハリネズミも捕えます。

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