\n"; ?> JVC - カッチョ先生の菜園訪問 - スーダン日記
2014年4月20日 【 乾季の菜園づくり

カッチョ先生の菜園訪問

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年4月25日 更新

「こんにちは」
JVCスタッフのアドランが柵の入口から菜園に足を踏み入れると、トブ(一枚布の着衣)をまとった主婦たちが作物への水やりをしていました。ルッコラやクレソンの緑が鮮やかな畑の中に、井戸から水を運ぶためのポリタンクがあちこちに転がっています。

「おや、ムナザマの人かい?」
ムナザマというのは、アラビア語(スーダン方言)で「団体」といった意味ですがカドグリでムナザマと言えば、一般にNGOなど援助団体のことを指します。
「ムナザマ」が来たということで、みんな、畑仕事の手を止めて集まってきました。

畑仕事をしている主婦たちに話をするカッチョさん(左から2人目)畑仕事をしている主婦たちに話をするカッチョさん(左から2人目)

「皆さん、お久しぶりです。菜園はいかがですか?皆さんが研修を受けてからしばらく時間がたったので、今日は農業の専門家の方に、様子を見に来てもらいました」
アドランがそう言うと、赤いシャツを来たカッチョさんが進み出ました。
「こんにちは、カッチョ・クンダです。去年まで農業省で働いていました。今日は、皆さんの畑を見せてもらいに来ました。野菜づくりで困ったこと、分からないことがあったら何でも聞いてください」

私たちは1月中旬にカドグリ周辺の三つの地区で菜園研修と種子・農具の配布を実施しました。それから3週間。今日はそれらの地区のひとつ、ウム=バタア地区にあるアサマ東集落の菜園を訪問、カッチョさんから菜園参加者にアドバイスをしてもらいます。

野菜の生育状況を観察(写真左に見えるのは鳥よけの棒。日本の案山子と同じ)野菜の生育状況を観察(写真左に見えるのは鳥よけの棒。日本の案山子と同じ)

カッチョさんはさっそく畑に入って野菜の葉を観察しています。
「よく育っていますね。いつ、種をまいたのですか?」
「はい、研修のあと、すぐに」
黄色のトブを着た主婦が答えました。
「でも、ちょっと種を多くまき過ぎてしまいましたね」
「えっ、そうなんですか?」
「あまりたくさんまいても、苗がお互いに邪魔をしあって、うまく育ちません。次の種まきでは、このくらいの間隔で、二粒ずつまけば大丈夫です」
カッチョさんは地面に穴を開けて間隔を示して見せました。

一人ひとりに熱心にアドバイス一人ひとりに熱心にアドバイス

柵で囲われたひとつの菜園では、たいてい3人程度の主婦がスペースを分け合って耕作を行っています。カッチョさんは菜園の中を歩き回ってそれぞれにアドバイスを与えたあと、全員を集めました。
「みなさん、研修で習った通りにきちんと畑の区画を作っていますね。これは、素晴らしいことです」
そう言って褒めたあと、
「私からのアドバイスですが、オクラとモロヘイヤをもっと植えましょう。クレソンは、あまり植えなくてよいです」
「先生、どうしてクレソンはダメなのですか?」
「オクラとモロヘイヤは、種を買う時の値段が安く、収穫したら市場でどんどん売れます。でも、クレソンは種の値段がその倍もするのに、収穫しても市場であまり売れ行きがよくありません」
みんな、納得したようです。
「それと、オクラを育てる時には、モロヘイヤやルッコラと同じような平らな畑はよくありません。水分が逃げてしまうからです。オクラは、サラバット(畝)を作って、そこに植えましょう」

種のまき方について説明種のまき方について説明

カッチョさんは次の畑に向かいました。
アサマ東集落には、6本の手押しポンプ井戸の周りに、合計で30以上の菜園があります。これを今日と明日の2日間で巡回する予定です。
だんだんと日が高くなり、暑くなってきました。一緒に歩いている若いアドランの方が参ってきましたが、カッチョさんは疲れたそぶりを見せません。
「なんて人だ」
いったん畑に出て教え始めると、止まらないようです。次から次へと菜園を回り、「モロヘイヤを植えなさい」「オクラには十分な水を」と説いています。いったいなんでこの人は農業省をリタイヤしたのか、不思議になります。でも、農業省にいたら、こんなふうに畑を回って人々と間近に話すことはできなかったのかも知れません。

菜園づくりをしているのは大半が女性ですが、少数ながら男性もいます。そんな男性のひとりが、
「先生、化学肥料を使ったほうがよいのでしょうか?」
と尋ねてきました。
「確かに化学肥料をまけば作物の育ちは早くなりますが、あまりお勧めできません」
とカッチョさん。
「化学肥料を使うと育てた野菜の栄養価は低くなるし、人間の健康にもあまりよい影響はありません。それよりも、家畜のフンから肥料を作ってはどうですか?」
そう言って、カッチョさんは肥料の作り方を説明し始めました。
「まず、麻袋を用意してそこにフンを集めます」
それを十分に水にさらしてから、土に穴を掘って埋め、約1か月待てば出来上がり。その過程を、細かく説明しました。聞いている男性も真剣です。
「わかりました。こんど自分でやってみます」
「うまくできなかったら、いつでも連絡してきてください」

別の菜園では、作業をしていた主婦が待ちかねたように「小さな虫が葉っぱを食べてしまうので困っています」と訴えてきました。
カッチョさんは畑を観察してから、
「家畜のフンを肥料にしていますね」
「はい」
「それが原因です。フンを肥料にする場合、きちんとしたやり方で作らないと、かえって虫がよってきてしまうのです」
カッチョさんはそう言って、同じように肥料作りの方法を丁寧に説明しました。

水やりに使うポリタンク水やりに使うポリタンク

やっと、この日の予定が終わりました。アドランは、もうへとへとです。

「ありがとうございました。明日も、よろしくお願いします」
カッチョさんは何か考えごとをしているのか、アドランの声が耳に入らないようです。
「カッチョさん、どうしましたか?」
「・・いま考えていたんだが、畑に水をやるのにラシャシャがあるといいな」
「ラシャシャ、ですか」
ラシャシャとは、如雨露(じょうろ)のことです。カドグリ周辺では普及しておらず、あまり見かけることはありません。
「そうだ。今はみんな、ポリタンクで運んだ水をそのまま畑に流したり、コップですくってまいたりしている。でも、ラシャシャがあれば作業がラクだし水も節約できる。明日配布するのは無理だろうけど、ちょっと考えてみてくれよ」

ラシャシャ。確かに役立ちそうです。でも、カドグリで手に入るのでしょうか?

(つづく)

【おことわり】 JVCは、スーダンの首都ハルツームから南に約700キロ離れた南コルドファン州カドグリ市周辺にて事業を実施しています。紛争により州内の治安状況が不安定なため、JVC現地代表の今井は首都に駐在し、カドグリではスーダン人スタッフが日常の事業運営にあたっています。このため、2012年1月以降の「現地便り」は、カドグリの状況や活動の様子を、現地スタッフの報告に基づいて今井が執筆したものです。

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