ガザで養鶏を始めてから2カ月半。これまでお伝えしてきたように(記事No.417、423、424、425、426)参加家族と何度も話し合いを持ちながら、問題点や改善した点などを確認していきます。今回の話し合いで中心的話題になったのは、鶏の餌の話。

最初、鶏を各家庭に届けた際に、養鶏を始めるための餌50キロも一緒に届けました。その餌が各家庭でなくなり始め、これからは自分たちで鶏の餌を考える段階になっています。これまでに養鶏を経験していた人は、パン屑や米や麦を混ぜるなど工夫をして与えています。鶏用の餌を市場で買おうとすると高いので、それよりも安いヤギ用の餌で代用しているという人もいました。確かに餌がなくなったことで出費があることは事実ですが、よく話を聞くと、そこだけに問題があるわけではないことがわかってきました。
鶏を配布する時に餌を一袋つける理由は、その餌がなくなるまでは鶏が卵を産まないからです。餌がなくなっていくのと同時に鶏も成長していくので、卵の生産性も次第にですが増えていっています。ですが、鶏は金の卵を産むわけではなく、金銭的に何かを得ているという感覚を覚えるわけではありません。一方、餌を購入するという行動には金銭の目に見える支出があります。この「自分の所持していたお金」という形あるものと、「健康の増進」などの形がはっきりと見えないものを比較しなければならないところに、この問題の難しさがあります。そして、鶏は動物なので、卵を一日に何個産むということが将来に渡って約束されているわけではありません。

封鎖下にあるガザ地区の、しかも市場からも離れたベドウィン村で生活している彼らが、現金の出入りに関して非常にシビアな目を持っているのは当然です。餌の出費がある以上に多くの卵を、あるいはその栄養から来る健康を得ている、という明らかな実感がないと、家族が養鶏を続けるのは難しくなるということになります。今はようやく鶏が卵を産み始めた段階なので、その実感はまだなく、「このままで大丈夫なのだろうか」という不安が先行するのはわかる話です。参加家族とともにこちらも不安になりますが、こうして村の人たちが集まって話をして、自分の鶏のことを時に笑い合いながら皆と共有し、お互いに「お疲れ様」と言いながら帰っていくという空間もまた、金銭的な価値では測れないものがあるのではと思いました。しかし、それは外部者としての殻を破りきれていない自分の見方なのかもしれません。参加家族も私たちも、色々なことを考えながらこの事業を進めています。思惑どおりに行かないこともあると思いますが、これからも彼らと一緒に悩みながら、そして楽しみながら活動していきたいと思います。

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