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ガザ:養鶏始めます(2) 開始までの道のり

パレスチナ現地代表 福田 直美
2010年8月 6日 更新

2008年末から始まったイスラエルによる大規模な軍事侵攻により、ガザでは様々な形での大規模な緊急支援が行われる一方、2009年にはそのような「一時しのぎ」の支援に疲れた人々の表情も見かけました。「今一番必要なものは何ですか?」と聞くと、「封鎖が解除され仕事ができるようになることだ」という声を次第に人々から聞くようになりました。もちろん、今日食べるものに困り、貧困の影響を身体的にも最も受けやすい人々を支え続けることは大切です。しかし今日食べるものを与えたところで、その日のお腹を満たすことはできても、明日お腹を満たすことはできないかもしれません。もちろん封鎖が解除されない限り、ガザの人々が自らの手で生活を立て直し、家族を養い、社会を立て直せるようにはなりません。そのためには政治レベルでの解決が必要です。しかし少なくとも、私たちにはガザで自分たちの手で何か出来ることをしようとしている人々の後押しができるのではないか、と考え始めました。そのひとつが、家庭で消費する食べ物の生産でした。

この事業が始まるきっかけは、栄養強化牛乳とビスケットを配布しているウム・アル・ナセル村の幼稚園で子どもたちの食生活について聞いたことでした。「朝ごはんは何を食べたの?」と聞くと「紅茶」「紅茶とパン」と答える子どもばかりで、野菜の名前や卵を挙げる子どもたちがいなかったのです。(「ガザ:幼稚園児の朝ごはん」2010年2月2日参照)そんな背景もあって、子どもたちが家庭で栄養を少しでも摂れるものを生産できないかと、幼稚園の先生たちと話したこともありました。(「ガザ ― ウム・アル・ナセル村の挑戦」2009年9月18日参照)出てきたアイディアのひとつが、養鶏。おうちでニワトリを飼って、家庭で子どもたちを中心に食べることができる卵を生産するのです。一日1つの卵であっても、収入がほとんどない家庭の子どもたちにとっては貴重な栄養源です。

この村ではこれまでに子どもたちの家庭を中心に何度か家庭訪問を行っており、また幼稚園にも頻繁に訪れていたことから、次第に私たちと村の人たちとの距離が近くなっていきました。家庭訪問をして村の人たちの食生活が実際にどうなっているのかを知ったり、将来何ができるかについてアイディアを持ち寄って話したりというのは、なんとも楽しい作業でした。その中で、「どうしたら得た利益を他の家族や地域に還元できるか」ということも話し合われました。小額の参加費を集める、生まれた卵や雛などを他の家族に分け与える、などの案が出ましたが、どのくらい現実性のあるものか、結局は皆で首をかしげて「やってみないとわからないねえ」という結果に。そこで、「じゃあまずは、お試しとして今年1年やってみて、どのくらいの生産性があるかを調べよう」ということになりました。

幼稚園の子どもの家庭で。台所には何も食べ物がないところもある幼稚園の子どもの家庭で。台所には何も食べ物がないところもある

JVCのポリシーに、「モノを与えるだけ」の支援はしない、というものがあります。残念ながらパレスチナでは、そのような形の支援が多く行われています。しかもイスラエルが建国されパレスチナの人々の苦難が始まった1948年以降、60年以上にわたって。この事業では、開始するにあたって最初に必要な最低限の物資は提供するけれども、その後それを使用していくことで、参加する本人たちだけでなく地域の人々の間で助け合ったり励ましあったりする結果も出せれば、と考えたのです。

ヤギや羊などの家畜を飼っている家も多いヤギや羊などの家畜を飼っている家も多い

さて、この事業はある男性の協力なしには始まりませんでした。ファリッドさん(24)は、この村出身で、幼稚園でボランティアとして活動してきました。本業はコンピューター・エンジニアさんです。ガザで、ましてこの村でこのような専門職を持っているのはとても特別なことなのですが、村の他の男性は「この村でこれまで大学を卒業したのは彼だけなんだよ」と教えてくれました。そう言われたファリッドさんはちょっと照れくさそうです。英語を話せるのもこの村では彼くらい・・・と言いたいところですが、それほど英語が流暢ではないので、会話は主にアラビア語になります。とはいえ私の拙いアラビア語では伝わりにくいこともあり、常につっかえつっかえのコミュニケーションですが、彼は村やそこに住む家族の事情をよく知っているので、私たちが聞き取りを行うにあたっても、とても頼りになります。参加する家族が彼のことを信頼しているというのが、私たちにとっても何よりの強みでしょう。トレーニングや配布物資の手配などに関しても、そのような仕事をするのは初めてにも関わらず一生懸命に動いてくれました。最初は「できるかな?」という少し不安げな表情を見せることも、ちょっとしたことでも電話で「どうしよう」と相談があることもありましたが、次第に彼自身がこの仕事を楽しんでいる表情を見せるようになりました。(彼の英語も上達してきたような気がするので、私ももっとアラビア語を頑張らなければ!)


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