アフガンウォッチ
指導者死亡、隠匿認める=「聖戦の重要局面」と正当化−タリバン
アフガニスタンの反政府勢力タリバンは31日、前最高指導者のオマル師が2013年に死亡したことを認める声明を発表しました。声明は「指導者評議会の中心メンバーと権威ある宗教学者らは、死亡の事実を秘匿することで合意していた」と主張しました。タリバンがオマル師死亡の時期を特定し、隠匿を認めたのは初めてです。
2015年8月31日 時事ドットコム*7月から8月にかけて、アフガニスタンではタリバン最高指導者交代という大きな事件がありました。そこで今回のアフガンウォッチでは、この事件に関する記事を最初にまとめてお知らせします。
【ピックアップ】タリバン最高指導者交代へ
タリバンの結束維持訴え=新最高指導者がメッセージ−アフガン
アフガニスタンの反政府勢力タリバンの最高指導者アフタル・マンスール師は1日、ウェブサイトを通じて音声メッセージを出し、「分裂は敵を喜ばせ、さらなる問題をもたらすだけだ」と組織の結束維持を訴えました。タリバンが7月末にマンスール師を最高指導者に選出したと発表してから、同師の音声メッセージが出されるのは初めてです。(以下、詳しくは下記サイトへ)
2015年8月1日 時事ドットコムタリバン、アフガン国会議員らと会談 「和平協議」は否定
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンの代表者は、ノルウェーの首都オスロでアフガンの国会議員らと会談しました。タリバンは政府側との接触を増やしつつありますが、報道担当者は声明で「この会談は和平協議ではない」と強調しました。
2015年6月5日 日本経済新聞直接対話、物別れに − タリバーンは外国軍撤収要求
アフガニスタン政府は 5月3日、カタールで反政府勢力タリバーンの代表団と直接対話を行いました。ロイター通信によると、外国部隊の駐留をめぐる意見の相違で物別れに終わったものの、6月に再び対話を行うことで一致しました。報道によれば、政府側は戦闘停止と憲法順守を要求。タリバーン側は本格的な和平交渉を始める前提として駐留外国軍の完全撤収を主張し、議論は平行線をたどりました。
アフガンでISISが台頭、タリバーン弱体化につけこむ
アフガンでは米軍の撤退が進む一方で、弱体化する反政府勢力タリバーンに若いメンバーらが失望の念を募らせてきました。ISIS の進出に好都合な条件がそろっているとの見方が強く、米当局者らも懸念を示しています。3月アメリカを訪問したガニ大統領は、議会での演説で「すでにアフガン南部や西部に先遣隊が送り込まれている」と述べ、ISIS の台頭は「恐ろしい脅威だ」と認めています。
アフガニスタンの近代から現代に至る政治情勢を簡潔にまとめたBBCのページ。随時更新されており、アフガニスタンの最新情勢を多角的に知ることができる。
(以下、要約)
中東と中央アジアにはさまれた山岳地帯のアフガニスタンは、その地政学上の理由から、近代以降現在に至るまで、大国間の争いの場とされてきた。19世紀にはインドを支配していた大英帝国がロシアと覇権を争って、いわゆる「グレートゲーム」が起きた。冷戦時1979年にソ連軍がアフガニスタンに侵攻した。
ソ連軍撤退後、アフガニスタンへの各国からの関心は薄れたが、国内は内戦状態が20年近く続いた後、タリバンが支配権を握った。タリバンはアフガニスタン国土の約90%を支配下においたものの、その極端なイスラム教の戒律より、国際社会からは一部を除き国家として認知されなかった。
そして2001年、ビンラディン主導による9.11同時多発攻撃が起きる。タリバンはビンラディンの引き渡しを拒否し、これをきっかけに米軍と多国籍軍はアフガニスタン空爆を開始した。2004年には新憲法が制定され、タリバン終焉も期待されたが、過激派組織が再び勢力をつけ、暴力事件が増加した。
9.11の事件から11年間におよぶ紛争の後、2012年には多国籍軍が撤退を開始し、2014年末までにおよそ13万人の撤退が予定されていたが、米軍は撤退期限の延長を発表し、現在に至っている。
アフガニスタン経済はその多くを麻薬売買に依存しているといわれる。アフガニスタンは世界に出回るアヘンの90%を供給、収益は年間1億ドルにおよび、タリバンの重要な資金源となっている。
アフガン駐留米軍の撤退計画修正
オバマ米大統領は3月24日、ホワイトハウスでアフガニスタンのガニ大統領と会談し、アフガン駐留米軍の撤収ペースを遅らせることを伝えました。2015年末まで約9800人の現行の兵力規模を維持しますが、撤収期限は予定通り2016年末から変更しないとのことです。元々は15年末までに半減の予定でしたが、春を迎え反政府勢力タリバンの攻撃が激化する恐れや過激派組織「イスラム国」の影響の懸念があり、この決定に至ったようです。
2014年アフガン民間死傷者が1万人越え
国連アフガニスタン支援団(UNAMA)の報告によると、2014年にアフガニスタンで戦闘などに巻き込まれて死亡した民間人が前年から25%増加し、3699人に上ったということです。負傷者は6849人で死傷者が1万人を超えたのは2009年以来初のようです。
また、報告によると地上戦による被害が大きく増加し、死傷した子どもの数も前年比40%増とのことでした。昨年末には国際治安支援部隊(ISAF)が戦闘任務を終了し、治安権限がアフガニスタンに委ねられましたが、その後も治安悪化が続いています。
アフガニスタン支援に関するロンドン会合開催
2014年12月4日、アフガニスタンの復興と自立に向けた支援国会合がロンドンで開催されました。会合には60か国以上の閣僚級代表が出席し、日本からは高橋博史駐アフガニスタン大使が参加しました。アフガニスタンのガニ大統領は汚職対策や治安状況の改善、女性の地位向上を柱とする改革案を表明しました。支援国は改革案を後押しし、開発支援を進めていくことで合意したということです。
外務省のHPでもロンドン会合について報告しています。こちらのリンクからご覧ください。
この国際会議に向けて市民の声を届ける目的で、市民社会主催のイベントも同地で開催され、事業統括の小野山と、現地事務所の提言活動担当サビルラが出席しました。各国の政策や援助が、アフガニスタンの人々が抱える課題に適切に対応するものとなるよう、現場を知る立場からの声を届けました。
英軍の戦闘部隊、アフガンから撤退 13年間駐留
10月27日、2001年から米軍率いる国際治安支援部隊(ISAF)の下で13年に渡って駐留を続けてきたイギリス軍の戦闘部隊が撤退しました。年内に治安権限がISAFからアフガン政府に移譲されることが決まっており、それに先立つ措置だということです。
13年間の英軍の駐留部隊はのべ14万人で、死者は453名、総費用は190億ポンド(約3兆3千億円)と言われています。イギリス国内の世論調査によると、アフガンへの介入には懐疑的な意見が多いということです。
朝日新聞 2014年10月28日(火)