ここ、ヤソトン県ルーンノックター郡に来てから、ほぼ毎日グリーンネットの生産者会員の家や畑をスタッフの方と訪問しております。連れて行ってくれるスタッフの方はイェーさんとマットさんという方たちです。イェーさんは生産者会員を訪問した帰りに村の中にゴザや織物を作っている家があると、わざわざそこに寄ってゴザや織物を作っている様子を見学させてくれるように村の人に頼んでくれます。
糸を作っているところ見学させてもらっていつも感じることは、これらを作っている村の皆さんの、作製の手際がすごくよいということです。きっと何年も何十年もやってきているからなのでしょうが、ホント、じっくりと見てしまいます。また、使っている道具なども、どのような過程を経てこのような形状になったのか不思議に思うくらいよくできています。この道具が今の形状になるまで、いろんな人が長い時間をかけてたくさんの試行錯誤があったんだろうなぁ、とその構造を見ながらいつも思います。それでいて、構造は決して複雑すぎず、材料もほとんど木製で、おそらく壊れてもすぐに修理もできるのだろうと思います。
タイの農村に来て思うことは、村の人が持っている技術はすごい、ということです。そこらへんにある道具や材料を使って必要なものを作ってしまいます。僕自身を省みると、そんな技術はもちろん持っていませんし、そこにあるものを使って何かを作ることはできません。
僕はパソコンなどの電子機器や車やバイクを使うことはできますが、その構造がどうなっているかは知りません。もちろん、作り上げることはできませんし、修理もできません。何か必要なものが出てきたら都度それを買いに行っています。日本にいた頃のことを思い出してみると、僕の身のまわりには「使えるけれど、作れないし修理もできない」モノばかりでした。便利なものばかりでしたが、壊れたらどうしようもありません。誰かに修理を頼むか、新しく買いなおすかする必要があります。そして、それにはお金がかかります。もし自分で修理できればその必要はなくなります。もちろん、自分でやったらその分手間や時間がかかるのでよくないと思われる方もいると思います。しかし、僕は便利なものを使って手間や時間を節約したところで、その時間を有効活用できているのだろうかと思ってしまいます。空いた時間でお金を稼ぐことに使っているのではないでしょうか。
話がずれてしまいましたので元に戻します。タイの農村には、その地域独自の文化や風習があり、そのなかにはこういったゴザや織物を作る技術をはじめ地域にある様々な資源を活用する方法、生活の仕方、必要品の作り方などの知恵や技術がたくさんあると思います。
しかし、そういった知恵や技術は便利な道具や機械が入ってくることでやがては失われていってしまうかもしれません。僕が技術を持っていないように。そこで僕が思うのは、こういった知恵や技術(あるいは生活の様子など)をカメラやビデオで記録として保存しておいたらどうだろうかということです。画像や映像とはいえ、地域の文化や風習、生活の知恵・技術(製品の作り方だけでなく、材料の探し方育て方なども含めて)を保存しておけば、もし別のどこかでこのような技術が必要になったときに、一から試行錯誤をする必要もなくなります。また、地域の伝統文化や技術の価値を再認識する機会にもなるのではないでしょうか。
開発や国際協力というと、新しいモノや技術を対象地域に持っていく類のことが多いように思いますが、すでにそこにあるモノ・技術を保存することや活かしていくことも重要なことだと思っています。