\n"; ?> JVC - 避難民緊急支援レポート(1)村を襲った突然の戦闘 - スーダン日記

避難民緊急支援レポート(1)
村を襲った突然の戦闘

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年5月27日 更新

「町はずれの小学校に避難民が押し寄せている」

JVCカドグリ事務所にその情報が入ったのは4月17日の午後。スタッフはさっそく現場であるクルバ小学校へと向かいました。

小学校に到着した避難民小学校に到着した避難民

カドグリの町から幹線道路を北に向かってクルマで5分、この「現地便り」でお馴染みのムルタ村に行く途中に、クルバ地区があります。
小学校の校庭には、既にスーダン赤新月社(註:赤十字社と同様の人道援助機関だがイスラム諸国ではこの名称となる)の車両が止まっていました。その向こう側、校舎の軒下には灼熱の日差しを避けて避難民らしき人々が折り重なるように座り込んでいます。何百人いるのでしょうか。トブと呼ばれる一枚布の上着をまとった母親と、子どもたちの姿が目につきます。

「JVCです。避難民が来ていると聞いてきました」
赤い三日月のロゴ入りジャケットを着た赤新月社のスタッフに声をかけると、
「あっ、JVCの人ですね」と振り向いて、
「いま、ここにいる人たちには食料品の配布を終えました。でも、もっともっとたくさんの避難民がカドグリに向かって歩いているんです。身体が弱い人やお年寄り、子どもは、国連が車両を出して輸送しています」
「いったいどこで、何が起きたのですか?」
「ダンドロ村です。大きな戦闘が起きたと聞きました。そのあおりで、周りの4つくらいの村からも住民が逃げ出してきています」

ダンドロは、カドグリから北東に50キロほどの村です。数日前、カドグリへの砲撃を皮切りに政府軍と反政府軍との戦闘が激しさを増していましたが、ダンドロ周辺が戦場と化してしまったようです。

JVCスタッフは、赤新月社のスタッフと一緒に校舎の周囲を歩いてみました。
校舎を取り囲むように座り込んでいる避難民は、みな炎天下を歩き疲れたらしく、ぐったりと横になっています。ほとんど家財道具はありません。急いで逃げてきたことがうかがえます。

「JVCには、毛布やゴザなどの生活用品の在庫はありますか?」
「はい、いつでも配布できます。でも、避難民は何人くらいいるのでしょう?」
確かに在庫はあるものの、その数には限りがあります。
「わかりません・・・全体の人数を把握しているのは人道支援局(人道支援を担当する政府機関)です。とにかく、人道支援局に行ってみてはどうでしょう」

カドグリの人道支援局事務所では、職員が対応に追われていました。ダンドロと周辺地区を逃れた人々は、まず西に30キロ移動して幹線道路沿いの村に避難しているようです。その数、1万人以上。さらに何千人かがカドグリに向かって30キロの道のりを南下してきています。

「今日はもう時間が遅い。生活用品の配布は明日だ」担当者が、そう言いました。
「何世帯分になりますか?」
「今日、到着した避難民を100世帯登録した。ここに名簿がある。その分を用意してくれるか」
「わかりました」

校庭に物資を並べて配布準備完了。後ろには多くの避難民が見える校庭に物資を並べて配布準備完了。後ろには多くの避難民が見える

翌4月18日、支援物資をトラックに積んで、スタッフは再びクルバ小学校に向かいました。
支援の内容は、1世帯当たり毛布3枚、就寝・生活用の大型ゴザ1枚、仮設住居用の防水シート1枚、それに調理器具(鍋、食器)です。

学校に到着すると、まず配布物資を1世帯分ずつ校庭にずらっと並べます。そして名簿を手に、ひとりひとりの名前を読み上げます。本人だという確認をした上で、名簿に拇印を押してもらい、物資を渡します。受け取りにくる大半は女性。配布は順調に進んでいきました。

大型サイズのゴザを受け取る女性大型サイズのゴザを受け取る女性

「イスマイル・モジョさん」
そう呼ばれて進み出たのは、まだ幼い男の子でした。
スタッフは少し驚いて躊躇していましたが、
「君だけなの?お母さんは」と尋ねると
「お父さんも、お母さんも、いない」

すると、あわてて付添いらしい男性が近づいてきました。
「この子たちはね、親とはぐれたんだ」
見ると、すぐ後ろで2人の子どもが心配そうにこちらを見ています。兄弟なのでしょう。
話を聞くと、子どもたちは昼間、ダンドロ村の市場の近くで遊んでいました。両親は、畑仕事か、用事があったのか、遠くに出ていました。

突然、周囲で砲撃音が響き渡り、市場にも砲弾が飛んできました。人々は反射的に音と反対方向に走り出し、子どもたちも周りにいた大人と一緒に必死に逃げました。その後、子どもたちは同じ村から逃げ出した親戚に保護されていますが、両親の居場所は分かりません。

受け取りにきた子どもたち受け取りにきた子どもたち

イスマイル君は拇印を押すと、兄弟と一緒に毛布や食器を受け取っていきました。 子ども世帯は、イスマイル君だけではありませんでした。配布が終わるまでに、何組かの子どもたちが自分の背丈よりも高いゴザを重そうに受け取っていきました。
2年前に紛争が始まって以降、多くの子どもたちが親と離れ離れになっています。中でも、子どもが政府掌握地域、親が反政府軍の実効支配地域に避難した場合、或いはその逆のケースでは、互いに安否を確認することはほぼ不可能です。

今日の配布は終了しました。しかし、まだまだ多くの人々が安全な場所を求めて逃げ惑い、そしてカドグリへと向かっているようです。このあとも緊急支援が続きます。

(続く)

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https://www.ngo-jvc.com/jp/notice/2013/05/20130515-sudanemergency.html

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【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

避難民緊急支援レポート(2)助け合いの仕組みへ
避難民緊急支援レポート(3)木の下での暮らしへ
避難民緊急支援レポート(4)新しい生活、遠ざかる帰還

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