\n"; ?> JVC - 避難民緊急支援レポート(4)新しい生活、遠ざかる帰還 - スーダン日記

避難民緊急支援レポート(4)
新しい生活、遠ざかる帰還

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年6月18日 更新
ベッド以外に家財道具のない避難民の住居。JVCが配布した毛布の上で赤ん坊が寝ていたベッド以外に家財道具のない避難民の住居。JVCが配布した毛布の上で赤ん坊が寝ていた

4月後半からの1か月間にJVCは600世帯以上に生活用品を配布、カドグリに到着した避難民の大半を支援することができました。

物資を受け取った避難民は、その後どんな生活を送っているのでしょうか?
JVCスタッフは、多くの避難民が生活しているティロ地区へと向かいました。

JVC事務所から北東に向かい、丘陵地帯を左手に見ながらクルマで15分。丘陵の東側に位置しているのがティロ地区です。ちなみに、この「現地便り」でお馴染みのムルタ村からは丘陵を挟んで反対側にあたります。

ハディジャさんと住居ハディジャさんと住居

広場にクルマを停めて、家々の間を歩いてみます。避難民は一ヶ所に固まって生活しているのではなく、あちこちに散らばって空き家や軒先を借りて生活をしているはずです。

すぐに、JVCが配布した防水シートとゴザで作った仮囲いの小屋が目に留まりました。避難民の住居に違いありません。小屋の脇には、森から集めてきた薪が積まれています。

「こんにちは」
ここで生活しているのは、ハディジャさん一家。母と子の5人で、戦闘が起きたダンドロ村から逃げてきました。JVCスタッフが持つカメラが珍しいらしく、赤ん坊を抱えた女の子まで全員が出てきてこちらを見つめています。

「毛布や鍋やポリタンクをもらって、本当に助かっているよ。この家だって、もらった材料ですぐにできたよ」
「材料?」
彼女が指差すのは、家の壁面として使われているゴザです。本来はスリーピング・マット、つまり生活・就寝用に床に敷くはずのものですが、家の「材料」になるとは・・

「家を囲うのにぴったりだね」と言うハディジャさん。
援助団体が考える「本来の」使い方なんかより、生活する上では雨風を凌ぐ壁のほうが重要、ということなのでしょう。

実際、仮設住居の材料となる木材や草を入手するにも費用がかかります。何軒かの避難民家族を回ってみると、あちこちで配布した「敷物」が「壁」として立派に活用されていました。

ティロ地区の井戸ティロ地区の井戸

ティロ地区の外れまで歩くと、井戸のある広場に出ました。手押しポンプで水汲みをする家族、ロバに水を飲ませる少年、金だらいで洗濯をする女性たち。木の枝には洗ったばかりの洗濯物がひらひらと舞っています。

サルマさんとインティサルさん(左はJVCスタッフ)サルマさんとインティサルさん(左はJVCスタッフ)

洗濯しているのは、ダンドロ村からの避難民でした。サルマさんと、赤ん坊を抱いたインティサルさんです。
ふたりは、この地区の水事情について不平を言っています。

「村では井戸まで歩くのが少し遠かったけどね、でも近くには洗濯できる池もあったし、水におカネを払うことなんてなかったね」とサルマさんは言います。
「でも、ここじゃあおカネがかかるんだよ」
「えっ、ここの井戸は無料でしょ」JVCスタッフがそう聞き返すと、
「そうだけどね、洗濯にまとめて水を使う時や、井戸が混んでいる時には、みんなロバの水を買うんだよ」

ロバの水売りロバの水売り

ロバの水というのは、ドラム缶付き荷車をロバに引かせた水売りのことです。遠くにある給水塔から水を売りにきます。いくらなのでしょうか?

「ポリタンク2本(約30リットル)で1ポンド(スーダンポンド)だね。家族全員分の洗濯をまとめてする時なんかは、ドラム缶1本分を買って10ポンドもするよ」
「それを払っているのですか?」
「払えないよ。だからわざわざ洗濯物全部持ってここまで洗いにきてるんだよ」

そうした文句を言いながらも、二人はすっかりこのティロ地区に馴染んでいるようです。井戸にやってくる近所のオバサンと時おり大声で談笑しながら、ぱっぱと洗濯をこなしています。つい1ヶ月前にやってきたとは思えません。

避難民といっても悲壮感を漂わせているわけではなく、うちひしがれているわけでもありません。そんなことよりも、水汲み、洗濯、家づくり、それに現金収入源にもなる薪拾いや草刈りで忙しいのです。山の向こうから砲撃音が聞こえたくらいで、毎日の暮らしが止まったりはしません。

「さあ、このあと家に帰ったら食事の支度だね」
子どもたちが待っているのでしょう。JVCが支援した調理道具は使っているのでしょうか?
「ああ、あれかい。使っているよ。でも家族が10人もいるからね。鍋いっぱいに作っても、すぐになくなっちゃうよ」

カドグリへの避難民の流入は、5月下旬にはほぼ止まりました。
しかし、それは戦闘の終了を意味しているわけではありません。人けのなくなった村々で、戦闘は続いているようです。

5月下旬、スーダン政府は反政府軍に制圧されていた州北東部の村々を約1ヶ月ぶりに奪還、その勢いで次のように宣言しました。
「今後、反政府軍との和平交渉は一切行わない。敵の本拠まで攻めて一掃する」
避難した人々が元の村に帰る日は、また遠のいたようです。

(終)

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緊急支援レポートは、今回で終了させていただきます。生活用品は予定していた550家族を上回り、約600家族への配布を終了しました。ありがとうございました。しかし、紛争が継続する中で私たちの支援活動は今後も続きます。頂戴したご寄付は、今後の活動にも活用させていただきます。
7月上旬に、私(現地代表・今井)が日本に一時帰国し、JVC東京事務所にて今回の緊急支援の報告会を行います。支援物資の実物も(ゴザは大きすぎて無理そうですが)持ち帰ってご覧いただきます。是非ご参加ください。
(報告会のお知らせへのリンクは、こちら。)
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【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

避難民緊急支援レポート(1)村を襲った突然の戦闘へ
避難民緊急支援レポート(2)助け合いの仕組みへ
避難民緊急支援レポート(3)木の下での暮らし

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