南アフリカ通信
JVCが活動するリンポポ州ベンベ郡の周辺9つの村のうち、ひとつはタウンシップを含みます。南アフリカで一般的に『タウンシップ』というと、ソウェトなど、アパルトヘイト(人種隔離)政策下で、都市周辺に設置された黒人強制居住区のことを思い浮かべますが、ここでは通称RDPハウスの立ち並ぶ、貧困層向けに作られた比較的新しいコミュニティを指します。RDPハウスとは、政府の復興計画(RDP=Re-development Plan)の下、貧困層向けに建設された家のことを言います。
ベンベ郡に新しい事務所がようやく開設されました。
プロジェクト地からは、車で30~40分。リンポポ州で3番目に大きい街、マカド(旧名:ルイス・トリハード)に事務所を構えることになりました。以前は、事業を実施する村の中に、プロジェクト担当の日本人が住み込んでいましたが、通信や交通の便、またパートナー団体との距離感などを考慮して、少し離れた中心街に事務所をもつことにしました。
廊下のすみで採血の担当をしていた看護師さんが、なにやら筆箱をもって待合室の患者さんをまわっています。コンドームでも配ってるのかな?と思ってみると、筆箱には、チョコレート、ガム、あめなどがぎっしり。1つ、1ランド(約12円)で売っているとのこと。すでに、お昼時間を過ぎて、お腹のすいてくるタイミング。うまい!では、私も、ひとつください...。半分以上の患者さんが購入してました。
公立病院の看護師さんのサイドビジネス。
ちゃかりしてるなぁ。
さて、昨日(5月27日)受け取った紹介状を持って、今日は活動地域に住む歩行困難な14歳の女の子を連れて、病院へ。公共交通を使っての移動が難しいということで、付き添いを頼まれ、車で送り迎えを引き受けました。昼くらいまでに終わるからと言われていたけど、まさか・・・。家を出たのは朝6:30。帰宅したのは19:00過ぎでした。以下、公立医療システムのめんどくささを垣間見れる一日の、一部始終です。
JVCは、2005年から継続して南アフリカ北部リンポポ州でHIV/エイズに関する活動をおこなっています。以前は、州の中央部に位置するカプリコーン群を中心に活動していましたが、今年から北部ベンベ郡に活動の拠点を移します。そのため、今までカプリコーンで借りていた事務所をお引越し。荷物を引き取りにいきました。
先日の14歳の男の子に続き、今日は14歳の女の子のお話しです。
LMCCはその活動の一環として、Drop-In Center(ドロップイン・センター)、日本の学童クラブのようなものを運営し、放課後に、特に家庭が貧しかったり、問題を抱えている子どもたちに食事やあそび場を提供しています。
そのセンターに昨年11月から通っている、14歳の女の子がいます。しっかりとした表情が賢そうな印象の彼女。しかし、最近はセンターに着くとずーっと泣いていて、2週間ほど前からは、歩くのが困難になり、学校に通わなくなってしまったということ。急きょ、クリニック(コミュニティにある政府運営の診療所)に連れていき、診察を受けることになりました。
先週、訪問介護のボランティアについて5つの村をまわりました。その際、ボランティアでは手に負えないケースがある場合には、その後の対応がLMCC(JVC現地パートナー)のマネージャーに相談されます。多くの場合は、家庭内では処理できず、コニュミティや、子どもが関与する場合は学校などのサポートを要するケースです。
私が、先週の訪問で一番はじめに出会った、14歳、HIV陽性者の男の子。見た目はどう見ても、8~9歳。話す声も弱々しく、目を合わせて会話することもありません。母親が数年前に原因不明の病で死亡し、今は中学校に通う姉と2人で暮らしています。
訪問介護のボランティアのお仕事の一つが、食事を用意することが困難な人、とくに一人で生活している人たちのために、ごはんを作ること。
南アでの主食の一つ、メイズ(とうもろこし)の粉をお湯で練り上げた「パップ」を作るのはなかなかの力仕事です。最初にメイズの粉を泡立て器でお湯になじませ、固くなってきたら大きなしゃもじに代えて、お鍋に叩きつけるようにして練り上げます。ジョバーグの友達の家の泡立て器は、お餅のように硬くなりなじめたパップに耐え切れず、壊れてしまっているのをよく見かけました。
でも、この村で発見した、パップ専用泡立て器!頑丈なワイヤーでできていて、とっても使いやすい。買って帰って、ジョバーグで売ったら、一儲けできるかな!? さすが村の知恵による手作り品はよくできてます。
今週一週間は、JVCが一緒に活動する現地NGO、LMCCの訪問介護ボランティアに付き添い、彼らの活動を見学させてもらっています。
あるHIV陽性者のお家で。「薬は順調に飲んでる?」「ええ」「飲んでいる薬を見せて」とボランティア。陽性者のおばさんが部屋から持ってきたのは、ずっしりと重い大きなスーパーの袋。中には、大量の薬。ええ?こんなに種類を飲んでるの?よくみると、同じ種類の薬ビンがいくつも。ひとつひとつをチェックすると使用期限切れの薬が大量に出てきました。
先日、こんな記事を新聞で見つけました
リンポポ州の保健局にHIV感染者が必要とする抗レトルウィルス剤を卸していた製薬会社が、1400万ランド(約1億5400万円)相当の期限切れの抗レトロウィルス薬を廃棄していたことが分かった。しかも、この問題が発覚したあと、製薬会社で在庫管理の責任者だった男性が、同保健局の薬品管理マネージャーとして雇用されていたことも発覚した。
製薬会社は、在庫数の予測を打ち出すのは保健局の責務として、過剰な在庫を抱えていた責任を否定。一方保健局は、販売、管理、各地域のクリニックへの薬の配布は業務受託者である製薬会社の責任として、訴えを起こす姿勢をみせている。(5月11日 The Star紙より)
村で話しを聞くと、月に一度村にやってくる移動クリニックでは薬が不足していて、数キロ離れた病院やクリニックまで足を運ばないと、手に入らないこともあるとか。遠出をすることの難しい患者さんたちにとっては、きちんとした薬の管理と供給が命綱なのに。