\n"; ?> JVC - 生態系に配慮した農業による家族経営農家の生計改善(CLEAN、シェムリアップ県) - カンボジアでの活動 - 5ヵ国での活動
カンボジアでの活動

生態系に配慮した農業による家族経営農家の生計改善(CLEAN、シェムリアップ県)

カンボジア現地代表 大村 真理子
2019年10月21日 更新

主な活動内容

稲作栽培研修の様子稲作栽培研修の様子。講師はすでに実践している近隣の村の農民。

生態系に配慮した生計改善プロジェクト(以下、CLEANプロジェクト)では、まず、対象地域の農家に日常の生活における課題や改善点などについて考える機会を提供します。次に、生活を改善するために必要な農業の研修を実施します。農業研修の主な内容は、「稲作」、「家庭菜園」、「堆肥作り」、「養鶏」などで、できる限り多くの農民が参加できるよう、研修の内容、開催時間、開催場所などを工夫しています。

次に、農業研修で学んだことを実践している農家に対して、フォローアップを行います。また、農家から提案があれば、適宜、追加で研修を実施していきます。さらに、農民が農業技術以外の活動に関心を示した場合、JVCは必要な情報を提供したり、研修を実施したりします。現在、考えられる活動としては、余剰野菜の市場出荷、種の共同管理(種子銀行)、食品加工などのための仕組み作りです。しかし、これらの活動はJVCが一方的に提案・実施するのではなく、農家の人たちから提案に応じて、活動を実施していきます。また、JVCがすべて支援するのではなく、できる限り、農民自らが継続的に活動できるよう、支援を行っていきます。

JVCのアプローチJVCのアプローチ。農民の自主性を尊重しながら必要な関わりをしていく。

※プロジェクト名称:生態系に配慮した農業による家族経営農家の生計改善(CLEAN = Community Livelihood Improvement through Ecological Agriculture and Natural Resource Management)

活動の詳細

活動1: カンボジアの主食、コメを育てる。

カンボジアの主食はコメです。人口の約7割と言われる農民の多くが、自給のための稲作を行っていますが、人口の増加や天候の不順などで、伝統的な農法による稲作では十分な食糧を得ることができなくなってきました。そこで、CLEANプロジェクトでは、幼苗一本植え(SRI : System of Rice Intensification)という稲作栽培法を農民に紹介しています。

伝統的な田植えでは、大きくなった苗を10本ほど束にしてランダムに植えています。一方、SRIでは、若い苗を、1本ずつ、真っ直ぐに植えるというのが基本です。これによって、稲が本来持つ生命力を引き出し、化学肥料などを利用せずに収穫量を増やすことができます。なお、SRIの普及は、以下の4つのステップで行います。

第1ステップ:「何?」を多くの人に知ってもらう

夜間に行われるビデオ上映会の様子夜間に行われるビデオ上映会の様子。

まず、SRIとは何か、について、多くの農民に知ってもらうため、日が沈んだ後、村でSRIに関するビデオ上映会を行います。しかし、村には電気がありません。そこで、発電機やプロジェクターを村に持って行き、広場や田んぼなどでビデオを上映します。村では映画などを見る機会が少ないため、子どもから大人まで多くの人が集まります。

第2ステップ:「どうやって?」を知ってもらう

ビデオ上映会の後、SRIに興味を持った農家を対象に、具体的なSRIの実践方法に関する研修を実施します。研修では、どの程度の大きさの苗を使ったらよいのか、 苗を上手に育てるにはどんな点に注意するのか、真っ直ぐ植えるにはどうしたらよいのか、など栽培技術についての説明を行います。また、なぜ、そのような栽培方法が良いのかについても、農民の経験と照らし合わせながら説明していきます。

第3ステップ:「フォローアップと課題の発見」

田んぼの様子をモニタリングするスタッフ田んぼの様子をモニタリングするスタッフ。

研修の後、学んだ技術を導入した農家のフォローアップを行います。どういう点が今までと違うのか、何か問題点はないかなどをチェックします。また、必要に応じて、実践農家を集めて勉強会を実施します。さらに、今回は実践できなかったという農家を対象に、訪問研修(実践していない農家が実践した農家の家を訪問)などを実施することで、次回は実践できるようサポートします。

第4ステップ:「来年どう良くできるか」を考える

収量評価ワークショップの様子収量評価ワークショップの様子。

最後は、振り返りです。実際にSRIをやってみて収量はどうだったのか、どういう点が難しかったのかについて農民同士が話し合います。特に課題については、解決策はないかどうか、他の農民の経験から学ぶ良い機会となっています。また、JVCにとっても、研修内容をどう改善すべきか、課題が見えてきます。このように、JVCの農業研修は、技術を教え、収穫量を増加させることが目的なのではなく、農民が学びあう機会を提供することを重視しています。

活動2: 野菜を育てて家族の健康状態を改善

CLEANプロジェクトでは、家庭菜園の普及にも力を入れています。カンボジアの農村では、不思議なことに自宅で野菜を栽培している農家をあまり見ません。村ではあまり野菜を食べる習慣がないためか、栄養失調の子どもも見られます。また、市場で買った野菜は農薬などで汚染されていることがあり、子どもが下痢になったという話しがよく聞かれます。そこでJVCは、売るための野菜ではなく、家族が食べるための野菜の栽培の支援を中心に研修を行っています。

第1ステップ:「なぜ野菜を育てることが大切か」を考える

栄養講座の様子栄養講座の様子。三大栄養素について説明するスタッフ。

多くの人に野菜栽培に関心をもってもらうため、まず初めに料理コンテストと栄養講座を行います。料理コンテストでは、できる限り村で入手できる食材を用いて料理を作ってもらい、どのような野菜が使われているのか、栄養のバランスはどうであるかなどについて参加者が議論します。続いて栄養講座を行い、三大栄養素や栄養が不足するとどのような病気になりやすくなるのかなどについて説明します。こうした活動を通して、自分たちで野菜を育てて食べることの大切さについて考えます。

第2ステップ:「どうやったら上手に育てられるか」を伝える

栄養研修の後、家庭菜園を実施してみたいという農民(多くは女性)を対象に、家庭菜園基礎研修を実施します。研修ではフェンスをしっかり設置することや畝を作ること、野菜の株間をきちんと取ることなど基本的な野菜栽培の技術から説明します。初めて野菜栽培に挑戦するという女性も多く、基礎的な研修を通して実際に野菜を育てることで、野菜作りの楽しさや利点を実感してもらいます。

だれでも実践できる、家庭菜園のポイント

だれでも実践できる、家庭菜園のポイント。

  1. 適切な場所とサイズを決める。
    栽培に適した場所出来る場所とサイズを決める。
  2. フェンスを設置する。
    家畜に食べられないよう、手に入る資材でフェンスを作る。
  3. 5種類以上の野菜を植える。
    栄養のバランスだけでなく、病害虫の発生を抑える。
  4. マルチングをする。
    地面を藁や草などで覆い、乾燥や強い雨などから守る。
  5. 周囲に木を植える。
    堆肥、薪、家畜の餌、薬草として利用できる。

第3ステップ:「フォローアップと課題の発見」

農家をフォローアップし、野菜の生育状況を確認するスタッフ農家をフォローアップし、野菜の生育状況を確認するスタッフ。

研修後もスタッフができるだけ一軒ずつ農家を訪問し、野菜栽培ができているかどうかフォローアップします。また、フォローアップを通じて明らかになった問題点を、次の研修の改善にいかすようにしています。

最近の活動

2007年度~2009年度の活動

シェムリアップ県東部の35村において、以下のような研修を行ってきました。

  • 稲作ビデオ上映会...44回、約4800名
  • 稲作栽培基礎研修...75回、3220名
  • 農民交流研修...24回、587名
  • 収量評価ワークショップ...15回、537名
  • 料理コンテスト/栄養講座...33回、1382名
  • 家庭菜園研修...52回、1527名
  • 堆肥作り研修...31回、759名
  • 苗木の生産と植林...約25,000本

上記のような研修を行ってきた結果、研修に参加した約8割の農民が学んだ技術を活かして稲作栽培の改善に取り組んでいます。また、家庭菜園では、自分たちで種を採取し、近隣の農家と種を交換する農民も出てくるようになりました。 苗木の生産と植林については、活動1年目は関心を示す農民は少なかったのですが、現在では無料で希望者に配布している年間1万本の苗木がすぐになくなってしまうほど、植林に関心を示す農民が出てきました。

2010年度以降の活動

活動開始当初は、「他のNGOと違って、JVCはほとんどモノや資金を提供してくれない」と農民からの不満の声があがっていました。しかし現在では、「JVCの研修に参加して、多くのことを学ぶことができた」、「農業の生産も改善し、健康状態も良くなった」、という反響を得るようになりました。さらに、近隣の村からも「ぜひ、私たちの村でも活動して欲しい」との声が聞かれるようになったことから、2010年度からは、活動地を近隣の村に拡大していく計画です。また、これまでの活動のなかで、年間を通して村に水源があるかどうかによって家庭菜園の実践率が大きく違うことが分かりました。こうしたことから、特に乾季の水が不足する地域で、井戸やため池の設置を支援していく計画です。

2012年度活動報告

  • 稲作改善研修
    これまでに幼苗一本植え(SRI)※の研修に参加してこの農法を取り入れた農家から他の農家が学べるよう、農民同士の交流を進めました。のべ272名がSRI実践農家を訪問し、苗作りのコツや田植えの方法などについて意見を交換しました。
  • ※幼苗一本植え
    SRI(System of Rice Intensification:コメの強化増収農法)とも呼ばれる。若い苗を1本ずつ間隔をおいて植えることで、稲が本来持つ生命力を高め、収量の増加につながる農法。

  • 家庭菜園研修と堆肥作り研修
    家庭菜園作りの研修を16回行い、440名が参加しました。乾季の野菜作りで水を節約する方法など、実践的な内容を伝えています。研修を通し、2011年度(380世帯)より多い501世帯が家庭菜園を始めました。また堆肥作りにおいても実践農家への訪問研修を行い、のべ413世帯(2011年度は278世帯)が自分たちで堆肥を作りました。
  • 活動概要

    目的地域の生態系に配慮した農業や自然資源の活用、相互扶助活動などによって、対象地域の家族経営農家の生計が向上する。
    対象地域の農民が生態系に配慮した農業を実践する。
    対象地域の農民同士の相互扶助が強化される。
    対象地域の農民が地域の自然資源や伝統技術などを生かした取組みを行なう。
    期間2007年4月~2015年9月(2006年6月より調査活動)
    活動分野農業、農村開発
    活動地域
    シェムリアップ県地図
    シェムリアップ県東部のチークレン郡およびソトニコム郡(108村)
    活動対象主に小規模自給経営農家(5000世帯)
    関連団体農林水産省、地域行政機関

この活動への寄付を受け付けています!

月500円からのマンスリー募金で支援する

今、日本全国で約2,000人の方がマンスリー募金でご協力くださっています。月500円からの支援に、ぜひご参加ください。

郵便局から募金する

郵便局に備え付けの振込用紙をご利用ください。

口座番号: 00190-9-27495
加入者名: JVC東京事務所

※振込用紙の通信欄に、支援したい活動名や国名をお書きください(「カンボジアの支援」など)。
※手数料のご負担をお願いしております。

JVCは認定NPO法人です。ご寄付により控除を受けられます(1万円の募金で3,200円が還付されます)。所得税控除に加え、東京・神奈川の方は住民税の控除も。詳しくはこちらをご覧ください。

遺産/遺贈寄付も受け付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。