11月16、17日

山形県を離れ、再度千葉県に戻ってきました。ここでは、若手の新規就農者がグループになって活動する「あいよ農場」を訪問・交流しました。

新規就農者の若手農家によるグループ「あいよ農場」新規就農者の若手農家によるグループ「あいよ農場」

17日にはあいよ農場が取引している千葉市内の飲食店を訪問し、飲食店と農家とのやり取りの工夫を聞きました。ルッコラは通常は出荷するものを、もう少し生長させ少し葉を硬くさせたものを出すと、歯ごたえのあるサラダとして好評、とのこと。

あいよ農場と取引のある飲食店でのヒアリング居あいよ農場と取引のある飲食店でのヒアリング

あいよ農場では、そうした飲食店やお客さんの声を聞きながら、栽培する野菜の栽培計画を立てている、とのこと。こうした細やかな工夫を取り込んで、農場経営に若手農家が日々挑戦していることに、タイから参加した若手NGOスタッフたちも「もっと頑張らねば」と気持ちを新たにしていました。

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11月14日

堆肥加工場にて。市民ガイドから堆肥になるまでのプロセスを説明していただきました堆肥加工場にて。市民ガイドから堆肥になるまでのプロセスを説明していただきました

千葉県から場所を移して山形県長井市に移動してきました。ここでは、市民が行政を動かして実現した「レインボープラン」を見学しました。長井市では家庭から出る生ゴミを回収し堆肥化、その堆肥を畑に戻し、食べ物を生産するという地域循環型の取組みが行われています。これがレインボープランです。レインボープランには2つの循環があります。一つは土から借りたものを土に還すという物質的な循環。そしてもう一つは、町と村の人々の循環、つまり生産者と消費者が手を携える関係としての循環です。
見学では実際に堆肥にする工場にも訪れ、市民ガイドの方から回収された生ごみがどのような過程を通じて堆肥になるのかについて説明していただきました。

11月15日

菅野芳秀さんのお話。タイの若手NGOスタッフたちも食い入るように聞いていました菅野芳秀さんのお話。タイの若手NGOスタッフたちも食い入るように聞いていました

午前中は、レインボープランの仕掛け人と言ってもいい百姓、菅野芳秀さんからお話を伺いました。「砂地では作物は育たない。けれども土では作物が育つ。土というのはこれまで生きてきた命の遺体の集合体なんだ。我々は命のバトンを受け取っている。だから命の循環を断つような人間の勝手なやり方を放ってはおけない。土と人間の命の関係を考えて付き合っていかなくてはいけない」とタイ人の若手NGOスタッフに訴えかけました。また、有機農業の普及を進めるNGOについても、「地域の中でごく少数の徹底した有機農業の実践者を応援したとしても社会全体から見れば、それは点でしかない。『無農薬・有機でやりましょう』というメッセージは良いけれども、皆、農業をして生きている。すぐに無農薬に転換するわけにもいかない個々の事情がある。だから、地域全体で農薬や化学肥料を減らしていくにはどうしたらいいのかを考えないといけない。真っ黒だったものが濃いグレーになり、やがて薄いグレーに、そして、それをどれだけ白に近づけていけるのか。NGO活動や運動で社会を変えるというのは、そうした努力の積み重ねではないか」と問い掛けました。
午後は、隣町の白鷹町に場所を移し加工グループ「しらたかノラの会」を訪問。加工グループの成立ちと共に、商品開発についてもお話しいただきました。「商品のコンセプトは私たちメンバーが母親として自分の子どもに食べさせたいものをつくろう、ということ。でも、とにかく加工品が出来るようなものはひとまずすべてやってきました。そこから消費者に受け入れられる商品が自然と残ってきた。それが今の50種類くらいの商品たちです」とメンバーの一人、疋田さんは言います。タイの若手NGOスタッフからは、「『母親が子供たちに食べさせたいもの』という考えに共感した。グループとして活動するという意味でも、収入向上という意味でもとても勉強になった」という学びの声が聞かれました。

しらたかノラの会の加工場にて。商品説明と商品コンセプトを説明するメンバーのひとり疋田さんしらたかノラの会の加工場にて。商品説明と商品コンセプトを説明するメンバーのひとり疋田さん

11月12日

自給農園ミルパ。消費者と生産者の関係はどうあるべきか、議論しました自給農園ミルパ。消費者と生産者の関係はどうあるべきか、議論しました

千葉県成田市にある「自給農園ミルパ」は市民農園です。会員は割り当てられた田畑で耕作をし、敷地内にあるキッチンで収穫した野菜を調理・食べることが出来ます。農園のリーダーである石井さんは言います。「安心・安全を求めるなら、まず自分で作ってみる。そうしてみることで、今、都市生活者を中心に失われつつある食べ物のありがたみというものを取り戻せるのではないか。ミルパの言う自給は、食べ物のことだけではありません。自分の暮らしを支えるものを自給して、ライフスタイルを見直してもらう場として活用してもらいたい」
自給農園ミルパでは会員が畑に来ない間、基本的には草抜きなどはしません。世話をしなければ野菜と共に草も生えてくるといった自然の摂理を知ってほしいからだ、と石井さんは言います。食べ物という「命」が畑からどう生み出されるのか、そのプロセスを会員(消費者)に知ってもらうことを大事にしているのです。

11月13日

八街市の市民農園を見学しました八街市の市民農園を見学しました

千葉県八街市にある市民農園「八街ふれ愛オーガニックファーム」を訪れました。ここは有機JAS認証を取っていることもあり、運営側の管理が徹底されていました。昨日、訪れた自給農園ミルパとまた違って、会員が農園に来ない間も草取りをしたり、収穫期を迎えた野菜は電話をしたり、会員が希望すれば収穫・発送(有料)までするといったフルサポート型の市民農園でした。

異なる2つの市民農園を訪れて、それぞれの特徴をタイの若手NGOスタッフたちは学んでいきました。生産者と消費者が支え合う関係はどうあるべきなのか。タイの文脈ではどのようなシステムが望ましいのか。2つの市民農園を対比しながら考えるきっかけを提供できたのではないかと思います。

日本の農業の戦後史、そして現在を学ぶ(11月10日)

11月10日は、JVC東京事務所にて農業ジャーナリストの大野和興さんから「日本の農業の近現代史」と「グローバリゼーションに直面する日本農業」の2つをテーマにお話しいただきました。減り続ける農業人口と高齢化、それに伴って増えていく耕作放棄地。こうした現状は日本の自給率39%(カロリーベース)という数字に如実に表れています。TPPを推進する日本政府の政策は、日本の小農を危機に陥れるのみならず、百姓たちが代々守ってきた日本の美しい自然風景をも失わせることに繋がる、と警鐘を鳴らしました。
今回の滞在で、各地の農家を訪問しますが、彼ら/彼女らを取り巻く状況を深く理解する機会になったと思います。

農業の戦後史を伝える大野和興氏農業の戦後史を伝える大野和興氏

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2016年11月7日~18日までの12日間にわたって、タイの農業・農村開発NGOの若手スタッフ12名が来日し、日本国内の有機農業、そして関連する流通・食・教育の関係者らの実践を学ぶ交流プログラムを実施しました。ここでは数回にわたって、このプログラムをレポートします。

※本事業は、国際交流基金アジアセンターの助成を受けています。

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