\n"; ?> JVC - タイ若手NGOスタッフが学ぶ日本国内の有機農業運動の実践 その5 - 農村からの風便り ~日本・タイ~

タイ若手NGOスタッフが学ぶ日本国内の有機農業運動の実践 その5

タイ事業担当 下田 寛典
2018年7月17日 更新

11月16、17日

山形県を離れ、再度千葉県に戻ってきました。ここでは、若手の新規就農者がグループになって活動する「あいよ農場」を訪問・交流しました。

新規就農者の若手農家によるグループ「あいよ農場」新規就農者の若手農家によるグループ「あいよ農場」

17日にはあいよ農場が取引している千葉市内の飲食店を訪問し、飲食店と農家とのやり取りの工夫を聞きました。ルッコラは通常は出荷するものを、もう少し生長させ少し葉を硬くさせたものを出すと、歯ごたえのあるサラダとして好評、とのこと。

あいよ農場と取引のある飲食店でのヒアリング居あいよ農場と取引のある飲食店でのヒアリング

あいよ農場では、そうした飲食店やお客さんの声を聞きながら、栽培する野菜の栽培計画を立てている、とのこと。こうした細やかな工夫を取り込んで、農場経営に若手農家が日々挑戦していることに、タイから参加した若手NGOスタッフたちも「もっと頑張らねば」と気持ちを新たにしていました。

11月18日 まとめの会議

約12日間にわたる交流プログラムを終え、まとめの会議を行いました。

まとめ会議の様子まとめ会議の様子

参加者個々の視点は様々で、それぞれに学びと発見を述べた後、全体の総括として今回の参加者を代表して持続的農業財団のスパーさんが次のように締めくくりました。

今回のプログラム全体を通じて、これまでタイのNGOが確立してきた「生産者と消費者との関係」は、「消費者が求める安全な農産物の生産」、「それを買ってあげる消費者」という関係であることに気付かされました。消費者にとって生産者が「安全な食を提供してくれる人」という限定的な関係性であった場合、「安全な食」に少しでも問題(瑕疵)が発生した時に、あっという間に両者の関係は壊れてしまいます。それは、日本が震災(それに伴う原発事故)を経験したことで顕著になりました。有機農産物生産者グループ「三里塚ワンパック野菜」の消費者会員の中には、震災によりほんの微量のセシウムが農産物に残留していたというだけで契約を解消した人もいたそうです。「消費者の健康(食の安全)を守るのが生産者なら、生産者にとって困難な時こそなんとかサポートしたいと思ってくれるのが仲間なのではないか」、自給農園ミルパの石井恒司さんが投げかけてくれた言葉は、そのまま現在のタイの「生産者と消費者との関係」の課題を表しています。

市民農園の運営方針についても、八街ふれ愛オーガニックファームでは、行けるときだけ行けば、あとは職員が全て野菜の世話をしてくれるので、いつ行ってもたくさんの野菜を収穫することができます。できた野菜を送ってくれる宅配システムもあります。自給農園ミルパの場合は、農園に来なかったら放っておかれて枯れるだけ。自給農園ミルパでは、「それ(枯れること)もまた『自然』ということも学ぶべき」という考え方を伝えようとしていました。はたして、楽しさを伝えることと自然の摂理を伝えることは両立できるのでしょうか。八街ふれ愛オーガニックファームと自給農園ミルパのそれぞれの会員の意識はどのように違うのでしょうか。「生産者」と「消費者」と分けるのではなく、同じ立場の「生活者」という意識が生まれるよう、農家ではない人も農産物を栽培しそのプロセスを学び、農のある暮らしを経験することから、農の価値を理解する。そのためには、どのような市民農園を創り上げるべきなのでしょうか。これらはもう少し長い時間滞在し、意見交換する時間を設けることでより深い理解に結び付いていくのだと思います。

生協では、自然災害などで一時的に農産物を生産できなくなった生産者をサポートする姿勢や、そうした課題を乗り切る対策を練り消費者組合員に説明する生協の職員の役割を概観できました。こうした生産者と組合員の間に入る者の役割についてより深く学ぶには、組合員の立場、生産者の立場、そして職員の立場と異なる立場から観察することを通じて把握していくことが可能になると思われます。システムとしては生協と同じではなくとも、タイの状況に適合した「生産者と消費者が対等な立場で結びついた生産と販売のシステム」を具体的に企画することをこれからの大きな目標としたいと考えています。

交流プログラムを終えて、タイからの参加者たち交流プログラムを終えて、タイからの参加者たち

※2016年度の交流プログラムのブログはこれにて終了です。本事業は国際交流基金アジアセンターの助成を受けて実施しました。