JVCは現地医療NGO、医療救援協会(MRS)と協力し、2007年以降東エルサレムにおいて、学校や幼稚園、地域社会団体を対象に、健康教育、健康診断、救急法講習などの活動を行ってきました。
政治状況に翻弄され、常に情勢が不安定なエルサレムにおいては、イスラエルが継続している分離壁の建設によりパレスチナの人々の医療サービス、仕事、教育などへのアクセスがより厳しくなっています。そのような中、地域の住民が自らの健康を守ることが出来るようになるよう、健康、衛生、栄養などに関する教育や、救急法の指導に力を入れてきました。医師や保健指導員たちが指導をするのは主に子どもたち、生徒たち、母親たちですが、学校関係者や地域社会団体側にも変化が現れてきたようです。
先日、MRSの医師や保健指導員たちとこれまでの活動の成果を振り返る機会を設けたのですが、「ある学校では、校内の売店でスナック菓子やチョコレート菓子ばかり売っていたのだけれども、最近はチーズや野菜を挟んだサンドウィッチや、乾燥ナツメヤシなどの体にいいものを積極的に売るようになった」と医師のラムジー先生は言います。また、「毎朝生徒たちが、掃除用具を持って交代で学校を清掃するようになったところもある」とのこと。保健指導員たちも、学校側から「こんな事に関しての教育はできないか」と、新しい話題での健康教育についてのリクエストが増えており、それは健康教育に対する学校側の意識の向上があるからだ、と言います。その中には、精神衛生に関するものも多いようで、青少年世代のストレスが増加しているという東エルサレム特有の問題が背景にあるようです。
また教育省は、「トレーナーのトレーニング」のプログラムにとても関心を示しており、来年度(2011年9月開始)でもより多くの学校でトレーナーを育ててほしいといっているそうです(関連記事:①、②、③)。生徒たちが保健委員会を設置したり、他の生徒に教えることができるようになるなど、自主的に活動できるようになったという成果に対し、教育省もとても喜んでいるとのことでした。ある学校では、晴れて「トレーナー」となった生徒たちが、ボランティアとして姉妹校に出向いて特別講義を行っているとのこと。この姉妹校は、普段のMRSの活動ではカバーされていないので、MRSの医師や保健指導員たちが出向かなくても、健康教育が可能になったのです。MRSには日々、多くの新しい学校や地域社会団体から、「うちの学校で健康教育をしてほしい」などという要望が届くのですが、数があまりに多く、医師や保健指導員がそのすべてに応えられるわけではありません。
自らの社会のニーズを把握し、それを満たすために行動するということが、不安定な状況にありながらも自らの社会の健康を守っていくためにはとても大切なことです。健康教育の成果は単純に数値で測れるものではありませんが、こういった「行動の変化」は、2007年以降続けてきた活動の大きな成果だと言えます。9月から新学年度が開始されますが、JVCはMRSの医師、保健指導員たちとともに、そして学校、地域社会団体、地域の人々とともに、地域社会の健康をさらにしっかりと守っていくことを目指し、活動を続けていきたいと思います。
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