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提言書

プロサバンナ事業考察 概要と変遷、そしてNGOからの提言

2014年11月10日 更新

2014年10月29日に開催したイベント「日本のODAによるモザンビークの農業開発事業「プロサバンナ」に関する現地調査報告と提言」において、JVCは他団体と共同でプロサバンナ事業への提言書を作成、公表しました。これはこれまでの2回の現地調査をもとに作成されたものです。

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プロサバンナ事業考察 概要と変遷、そしてNGOからの提言.pdf(774KB)

本提言書にはプロサバンナ事業の概要とこれまでの経緯なども掲載されていますが、以下に提言部分を抜粋します。

提言:プロサバンナ事業再考へ向けて

プロサバンナ事業は、海外農業投資による大規模な土地開拓による大豆をはじめとする穀物生産の奨励から「小農支援」へとその目的の方向転換を図ったものの、2014年10月時点での事業の実態は、十分な転換と根本的な見直しに至っておらず、現地の農民や市民社会の不信感の解消と信頼の回復はほど遠い状態にある。2013年5月の現地からの公開書簡が要求した事業の一旦停止と抜本的な見直しは、今なお要求として継続しており、その妥当性を日本の市民社会としてもまずは確認する。このことを踏まえ、日本政府とJICAに対し、事業の根本的な再考にあたり重要となる課題について以下提言する。

  1. JICA環境社会配慮ガイドラインの遵守
  2. JICAの環境配慮ガイドラインに照らし、プロサバンナ事業の実態を改めて精査し、しかるべき対処をなすことが必要である。

  3. ガバナンスの実態把握と改善
  4. 日本政府は、モザンビークのガバナンスの把握に努め、既にプロサバンナ事業を通じて生じている人権侵害の実態を把握し、その責任の一端を担っていることを理解し、状況の改善へ向けて最善を尽くすべきである。具体的には、プロサバンナ事業対象地において土地収奪が加速している現実を踏まえ、農民の土地への権利保護と回復へ向けた実質的な措置を講じる必要がある。

    また、事業の促進と実施の中で見られる脅迫や抑圧なども明らかな人権侵害であり、しかるべき対応がなされる必要がある。なお、モザンビークのガバナンスの現状にかんがみて、政府や企業を経由した情報に依拠している限り、小農の現実と乖離が生じることを認識することが不可欠である。

  5. 透明性・情報公開の改善
  6. プロサバンナ事業に関する情報公開は、これまで断片的であり、かつ事後的に行なわれてきたと言わざるを得ない。このことを改め、事業に関する情報について徹底した情報開示を行なうことが必要とされている。情報公開は、合意形成へ向けた現地との協議のスタートラインに立つために不可欠である。市民社会により開示が求められているにもかかわらず、未だ開示のない情報は開示されるべきである。特に、以下2点については。その重要性に鑑みて、早急な開示が求められる。

    (1)マスタープランなどの根拠となる調査結果 この間、プロサバンナ事業に関する資料の根拠となる調査結果が開示されていないことは、現地において対話プロセスが膠着状態に陥っている大きな要因でもある。また、事業内容の本質的な議論を行なうにためにも不可欠である。

    (2)プロサバンナ事業に関する予算/決算内容 事業開始以降の予算決算の内容は、どれだけの予算を用いてどのような調査や活動が行なわれているかなど、事業概要を把握し精査するうえで不可欠である。

  7. 「小農支援」の抜本的見直し
  8. プロサバンナ事業の対象とされる小農の主権を認め、彼らが望み、描く農業開発のあり方に寄り添った支援が必要である。現地の農民組織は、家族農業を主体とし、小農の生活向上をはじめ地域経済の発展に寄与する農業開発を主張している。

    そして、外来の種子や過剰な投入材の利用促進により、小農が大企業に依存する体制が作られ、自然資源の破壊が進むような開発ではなく、生態系や環境を守り、伝統的な種子や有機肥料を用いたアグロエコロジカルな農業のあり方を模索し、実践している。生産する作物や販売先などについて、小農自身が選択し、決断する権利を尊重し、農民の主権に根ざした開発を実現するための抜本的改革が求められている。

これらの見直しによって、現地の小農たちとの信頼回復への道筋がはじめて見えてくる。そして、現地の小農たちとの基本的な信頼関係なしに、支援事業の成功はあり得ない。このことを強調するとともに、この提言に述べたことを実現するために、日本のNGO・市民社会として最大限の協力を惜しまないことを付言する。