2018年度の広報インターンの藤井です。インターンは3月に卒業したのですが、ひょんなことからJVCにアルバイトとして帰ってきました。まさかまたブログを書くことができるとは思っていなかったので光栄です。
さて、今回は10/11に行われた「ジャーナリスト・堀潤さんと語る 私たちが見たピョンヤン、あなたはどう思う?」のイベントレポートをお送りします。
本イベントでは、日朝大学生交流に2年連続同行されたジャーナリスト堀潤さんをお招きし、平壌のリアルをお届けするとともに、継続的に訪朝を行うことの意義について考えました。昨今の報道やSNSの情報から、日本国内では「朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)=怖い国」というイメージが定着しつつあります。では、私たちが得ている情報はすべて信憑性の高いものなのでしょうか。都合のいいものだけを取捨選択し、イメージが先行してしまっていないでしょうか。このような問題意識のもと、本イベントでは今年の夏に訪朝したときの映像やエピソードを紹介し、会場にいる皆さんに「あなたはどう考えますか?」と問いかけました。また、堀さんがMCを務める情報番組「モーニングCROSS」に寄せられた視聴者からのコメントを取り上げながら、JVC代表理事の今井さんとともにパネルトークを行いました。
第一部
第一部では、堀さんが撮影した平壌の動画を放映しました。平壌の近代的な街並みや等身大の平壌で暮らす人たちの様子が印象的で、会場の皆さんも時折「ほお...」と唸りながら見ていました。ここでは動画の一部を写真で紹介します。
第二部
第二部では、日朝大学生交流の様子が「モーニングCROSS」で特集されたときの映像を放映しました。また、その際に寄せられた視聴者コメントを取り上げながら、堀さんとJVC代表理事の今井さんがパネルトークを行いました。
「モーニングCROSS」では視聴者のツイートがリアルタイムでテロップに流れます。ここでのツイートはランダムに選ばれるため、必ずしも番組に肯定的なものばかりではありません。たとえば今回テロップで表示されたツイートには以下のようなものがありました。
「北を知ることなんて必要かね?キレイごとは要らない。」
「平壌というテーマパークじゃんw」
「南の奴の本性を考えたら、北の奴の今見える姿が果たして本性と言えるのだろうか?」
これらのツイートを題材に軽快なトークが展開されました。今回はその中でも「実際に訪朝したからこその観点だなあ」と感じた内容を紹介します。
- 平壌だけ行っても無意味?
平壌だけ訪問して朝鮮の様子がわかるのか、という声はよくいただききます。このような意見に対し、堀さんや今井さんはどのように感じているのでしょうか。
堀さん「将来交渉を担うような彼らに、ダイレクトに『日本人はこう思っているんだ、こんな風に考えているんだ』と伝えることは、将来への種まきになると思うんです。たしかに、地方や市井はどうなっているんだ、という疑問もあると思います。それに関しては10年スパンで考えているんです。今回(交流の様子を見るのが)2回目で、再会するとこういう場面もあるんだな、ということがよくわかりました。一朝一夕ではないので、その後の変化についてはもうちょっと経ってからきちんとご報告します。」
今井さん「最近、学生交流に参加していた平壌外大の卒業生から初めて朝鮮外務省に入省したという人が出てきました。彼らが平壌外大で日本語を学んでいるということは、将来の朝鮮における対日関係を担っていく人材になるということだと思います。そういう人たちに日本のことを理解してもらう、実際に友だちになってもらうということは、長期的に見てインパクトがあるのではないかと思います。」
平壌という場所は富裕層が住むような豊かな街で、今回交流した学生たちもエリート中のエリートばかりです。そのため、平壌で見た光景が朝鮮のすべてではないことは重々承知しています。それでもこの交流は意義深いものだと自負する理由は、交流している大学生が今後の日朝関係を考えていくうえで影響力を持ちうる潜在的な人びとであり、彼らと直接意見交換ができるのは貴重な機会だと考えているからです。
- 本当に意見交換ができているのか?
番組に寄せられたツイートに
「平壌の学生は金正恩批判できるのかな?」
「北朝鮮の学生との交流はすばらしい。しかし光の部分しか見ていないはず。しかも作られた光の部分。」
というものがありました。たしかに普段の朝鮮に関する報道を見ていると、国民の本音が見えてこないと感じます。これは大学生交流という、人と人とのミクロな繋がりにおいても同じなのでしょうか。この疑問に対し今井さんは、「大学生だからこその突っ込んだ議論ができている。そして、年々話の内容が深くなっていると感じる。」と語りました。大人同士だとどうしても必要以上に遠慮してしまいがちなところ、同年代でかつ若いということがプラスに働いているようです。
たとえば、学生同士が意見交換をするワークショップで、平壌外大の学生から日本の賠償責任を果たしてほしいと強く言われた一幕がありました。これに対し、日本の学生は拉致問題の重要性を取り上げ「朝鮮から渡された遺骨が偽物だったと聞いていますが、この問題を知っていますか?」と返しました。このようなストレートな聞き方は、特に大人の場合ヒヤヒヤするかもしれません。(実際その場にいた大人は冷や汗をかいたようです。)しかし、平壌外大の学生は「遺骨に関する話は知らなかった。」と返し、また日本の学生も「賠償問題のプライオリティがここまで高いとは知らなかった。」と返したのです。一歩間違えれば喧嘩になりそうな、また率直な意見交換が難しそうな話題でしたが、最終的にお互いに知らないことがあると気づけた時間になったようでした。
また、堀さんは交流を継続することの重要性についても語りました。「人」と「人」との繋がりは交流を重ねることで深化するし、それに伴いより率直な意見交換ができるようになります。たとえば今年の夏の交流では、日本側から2名、2年連続で参加した学生がいました。彼らにとって今回の訪朝は1年ぶりに朝鮮の友人と再会する機会だったのです。平壌の地で再会を果たした日朝両国の学生からは自然と笑みがこぼれ、話が弾んだと言います。友人との久しぶりの再会を通して絆が深まるということに国境は関係ありません。
- 世論形成に必要なことは何か。
テロップで流れたツイートにみられるようなネガティブなイメージに対し、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。また、嫌悪感を取り払うためにはどのようなアプローチが大切になってくるのでしょうか。
この点に関し、堀さんは双方向に意見をぶつけることの大切さを語りました。堀さんは以前担当していたNHKのニュース番組においても、現在MCを務めている「モーニングCROSS」においても、視聴者の声が直接届くようなスタイルを取っています。これは批判的な声やこちらが想定していなかった意見を取り上げることで、対話の機会をつくることを目的としているとのことです。「決して視聴者の皆さんに一方的なものを見せているわけではない。だから反論があったらバンバン言ってください。そういう双方向な関係づくりを続けていきたいです。」と締めくくりました。
イベントを終えて
朝鮮に関する情報は「かもしれない」で溢れています。もちろん現地を自らの目で見ることが正しい認識をするための最短ルートですが、残念ながらそれは難しいのが現状です。しかし、受け身でいると情報の洪水に飲み込まれてしまいます。いつの間にか恐怖を植え付けられ、疑心暗鬼に陥ってしまいます。だからこそ、事実を見極め、与えられた情報をもとに自らの頭で考え続けることを忘れてはいけないと強く感じました。
また、今回のイベントで「そこに暮らす人々」という小さな単位を知る大切さを改めて感じました。私自身JVCでインターンを始めるまでは「北朝鮮」に対してマイナスなイメージが強かったのですが、朝鮮に暮らす人々の姿や彼ら一人ひとりの考えを知ることで次第にそのイメージが変わっていきました。たとえばミサイルに関する考え方。朝鮮の学生は「ミサイルがそんなに恐れられているとは考えもしなかった。これは自衛のためのもので、どこも同じようなことをしているではないか。私たちからしたら日本の米軍基地や自衛隊のほうがよっぽど怖いよ。」と話すのです。この視点は「朝鮮」という大きな主語でミサイル問題を考えているだけでは見えてこないものだと思います。そして、このような見方を知ることで、取り得るアプローチの幅も広がるのではないかと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。冬には日朝大学生交流に参加した大学生が訪朝報告会を行う予定です。HPでイベント情報などを随時更新していきますので、ぜひチェックしてください!
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