パレスチナ出張記【6】「SDカードが没収された」編のつづきです。
家庭訪問での聞き取り
ガザ2日目の朝、4月21日(金)の記録です。この日は朝から活動地・ビルナージャの家庭訪問に同行しました。出張記【5】で紹介した現地NGOのAEIが行う家庭訪問では、各家庭を回って子どもの健康調査や栄養状況の確認などを行っています。
子どもたち、まージッとしていません(笑)栄養失調の子どもが多いので身体は小さいですが、気持ちは本当に元気。「子どもがこの国の未来だから」と大人が口を揃える理由がよく分かります。
家庭訪問の途中、AEIスタッフの自宅に寄りました。スタッフ自身も難民生活で、家にはわずかな家財道具しかありません。もちろん電気も通っておらず、昼間なのに薄暗いガランとした空間。自身も大変な暮らしであるのに、「未来のため」、子どもに関わるこの仕事に就けて幸せだと語ってくれた彼女。「皆、支えあいなのよ」と笑顔で語るその姿、私はパレスチナに来て、自分の人生で初めて本当に「神々しい」人達に出会ったような気がします。
さて、この日は金曜日、パレスチナは金曜と土曜が休日のため、普段は夕方まで空いているゲートが、13:00に閉まります。今日出域しなければ間に合わないので、急いで出域準備です。
ガザの外へ。すべてを脱いだ身体検査
行きに通ってきたゲートをとおって、外国人である私たちは、ガザの外に出ることができます。ここで出会った人は、基本的に外に出られないんだよな・・・と頭では分かっていても、理解しがたい状況。本当にどうにかしたい。
出域のときには、入域のときとは違い、身体検査が入ります。「変なもの」をイスラエル側に持ち込まないような対策でしょうか・・・。金属探知機に入るか、手動でのチェックかを選択でき、私は後者にしたのですが、個室で「すべて脱いで」という指示が出され、「下着のみ」にされました。部屋は下が網になっていて、下からも確認ができるようになっているのか?下着以外すべてを脱いだ後は、棒状の金属探知機で3分程、脱いだ衣類はもちろん、下着の上からお尻の割れ目まで(!)徹底的にチェックをされるこの状況・・・最後まで悲しい気持ちにさせられました。それは、自分がこんなことをされて悲しい、ということではなく、このシステム、ここまでこじれているこの2国間の溝についての悲しみです。
身体検査の最中には、荷物検査もあったのですが、出域の時は機械に通すだけではなく、手動でのチェック、中のものがぜーーーんぶ開封されて戻ってきました。ビニール袋に入れていた洗濯物も、中で買ったものを包んでいた新聞紙も全部はがされ、1から詰め直すことに・・・。それでも、「出られるだけいい」のか?
何ができるのか?
ここまで7回にわたり、ジャーナリスト・堀潤さんとともに訪れたパレスチナ・ガザ事業地の様子をお届けしてきました。暮らす人が外に出ることのできない、完全な封鎖を、自分の目で見てきました。今回、私は現地で出会った人達に、「私たちにできることは何?」と何度も聞きました。返ってくる答えは皆、大体同じで、「ここで見たこと、感じたことを日本に持ち帰って、伝えて欲しい」「この不条理を一人でも多くの人に知って欲しい」「ともに考え、立ち向かう仲間が欲しい」と。
「国と国」というとてつもなく大きな力に対して、一般市民の私たちができることは小さなことかもしれません。目の前に立ちはだかる壁の高さに、大きな無力感を感じたことも、事実です。それでも、小さな努力の積み重ねが、人と人の繋がりが、物事を動かすのだと私は信じています。
今この瞬間も、日本に暮らす私たちでは想像できない環境下で、暮らす人がいます。一方的に閉じ込められ、圧倒的な制限をされている人たちがいるのを知っていること、また、知ろうとすること。それがまず、誰もができる第一歩なのではないかと思うのです。
ガザの皆さんは、日本から来た私たちを、笑顔で迎え入れてくれました。「来てくれてありがとう」「子どもたちが私たちの未来なの」と笑う人たちの笑顔が、優しさが、どれだけの不便や苦しみの上に成り立っているのかを忘れることなく、知ったからには、見たからには、できる限りで関わり続けること、伝え続けること、改めて心に誓った次第です。
この記事を読んでくださった皆さんの中で、もし、このパレスチナの状況に少しでも関心を持った方、強めた方がいたら、これからも繋がり続けていただけたら、嬉しいです。ぜひ記事の最後に紹介するリンクをチェックしてみてください。
(今回は13:05~ラストまでのお話でした)
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