\n"; ?> JVC - パレスチナ出張記【5】ジャバリア「心底かっこいい女性たち」編 - 東京事務所スタッフ日記

パレスチナ出張記【5】ジャバリア「心底かっこいい女性たち」編

広報担当 大村 真理子
2017年10月19日 更新

JVC活動地の女性たち

ここまでガザ入域までの様子空爆のひどかったシュジャイヤ地区の様子を綴ってきましたが、ここからはJVCの活動を少しレポートしたいと思います。

JVCはガザ地区北部のジャバリヤ市で、現地NGOのAEIとともに、母子の栄養改善に特化した活動を行ってきました。他地域と比べ国連の支援が受けにくく(元々ここに暮らしている人が多いので「難民」認定されにくい)、また栄養状況が良くなかったことから、2013年から4年間のプログラムを実施してきた地域です。
「母子の栄養改善」を目標に、AEIに所属する保健師がこの地域を一軒一軒家庭訪問し、母親と対話し、「子どもの栄養に関する研修」の受講を呼びかけ、受講を希望した母親たちに向けて研修を実施し続けてきました。このような方法は一見、食料配布のような直接的な方法と比べると遠回りに見えるかもしれません。もちろん、空爆直後などは、物資の緊急支援を行うこともあります。でもそれ以外の時には、できる限り人それぞれが持つパワーを引き出し、地域に残る方法で役に立ちたい。そう考える私たちが、AEIとともに考えたプログラムです。
研修に参加した母親からは、「自分の力で家族の健康を守れるのが何よりも嬉しい」「自分に知識が身に付き、その知識で人の役に立てるのが嬉しい」との声が多くあがっています。「自分にも役割があることに気がついた」という言葉は、私たちの大きな励みにもなっています。

AEIの研修(限られた食材でいかに効率よく栄養を摂取するか、や栄養素に関する基礎研修など)を終えた母親たちは、自分の家族の栄養状況改善に取り組むのはもちろん、今度はボランティアで各自が地域を回り、その知識を口コミで広げていきます。この4年で、自ら地域を回ってアドバイスまでを担うようになった女性は30人、そしてその女性たちがカウンセリングを行った地域の女性は5,000人を超えました。物資を支援するだけでない、封鎖されたガザ地区で女性たちの持つパワーを最大限に生かした活動です。

研修を終えた地域の母親たちと。皆さんキラキラ笑顔がまぶしいです研修を終えた地域の母親たちと。皆さんキラキラ笑顔がまぶしいです

訪れた日(4/20)は、この4年間のプログラムの振り返りを行うため、AEIのスタッフと母親たちが会議をしていました。

奥がAEIのアマル、横並びに座っているのが、研修に参加した母親たち。私たちも振り返り会議に参加させてもらいました奥がAEIのアマル、横並びに座っているのが、研修に参加した母親たち。私たちも振り返り会議に参加させてもらいました

研修プログラム参加の動機は「経験と知識を得たかったから」「次の世代に良い影響を与えたい」「他人と関わりを持つきっかけづくり」「仕事がなかった」など様々ですが、「参加して、自分の知識で人の役に立てることが嬉しい」というのは大体一致していました。中には「お金がないのに何故、ボランティアで人の家を巡回するのか」「夫が他の家に行って欲しがらなかった」などの反対にあった方もいましたが、最終的には楽しそうに活動を行う様子を見て、何も言われなくなったそう。イスラム圏ということで、日本のように女性が積極的に外で活動を行うことは「当たり前」ではない文化もありますが、家族の理解を得た女性たちが率先して研修を受け、各家庭に知識を口コミで広げて行く様子は、心底かっこいい!の一言です。

とにかく明るい女性たち。こちらが圧倒されてばかりですとにかく明るい女性たち。こちらが圧倒されてばかりです
早く子ども産んだ方が良いわよ、と言われる駐在員の山村。私も、「こんなところに来てないで早く家族を持ちなさいよ」と皆にお説教?を受けました・・・笑早く子ども産んだ方が良いわよ、と言われる駐在員の山村。私も、「こんなところに来てないで早く家族を持ちなさいよ」と皆にお説教?を受けました・・・笑

電気のない生活~ハイファの話

振り返り会議を終え、車で移動中。先ほど時間がなくて聞けなかった日常生活の様子を、ガザ地区に暮らすAEIスタッフのハイファに尋ねてみました。

女性たちの中心的存在、AEIスタッフのハイファ女性たちの中心的存在、AEIスタッフのハイファ

ハイファは、ガザで生まれ育った35歳・4児の母。9歳、8歳、5歳、3歳の子どもを育てる頼もしいお母さんです。彼女は、生活の様子を尋ねるとはっきりとこう言いました。「生活は本当に厳しい」。続けて、「昨夜も電気は来たけれど、たった2時間。しかも皆寝ている時間だったので、気付くこともできなかった」「もう、自分の人生において電気は大事なものではない、とひたすら言い聞かせている」と。 私はこの言葉を聞いた時、うまく返すことができませんでした。ハイファも先ほど会った女性たちも、ガザ地区内のほぼすべての人がこのような生活をしているのです。それでもハイファは地域の女性たちに研修を行いながら、女性たちは研修を受けながら、地域の栄養失調を少しでもなくそうと取り組んでいる。ましてや彼女は、2008~9年のイスラエルからの空爆で、実の父親を亡くしています。自分が同じ立場になったら、ハイファのように行動できるでしょうか。自信がありません。「自分がポジティブじゃないと、人に研修なんてできないのよ」と笑う彼女は神様のようで、圧倒的なパワーを放っていました。

強さに甘えてはいけない

「この人たちはどこまで強いんだろう」・・・そう思うと同時に、世界は、私たちは、この強さに甘えてはいけないと強く思います。どんな理由があっても、このパレスチナの「封鎖」はおかしい。「ガザを出て勉強してみたいけど、難しい」・・・こんな理由で夢をあきらめる必要がどこにあるのでしょうか。このような不条理が許される世界であってはならない。彼女たちの笑顔や優しさが、どれだけの不自由や苦しみの上に成り立っているか。この事実を忘れることなく、この声を届け、この状況を少しでも改善したい。
「ガザをしっかり見て行ってね」「しっかり見て、そして、伝えてね」・・・滞在中、幾度となく出会ったこの言葉の意味を胸に刻んで、ハイファとともにリヤードさんの運転するタクシーで、帰路につきました。この日のことは一生忘れないし、忘れてはいけないと思っています。

(今回は7:10~10:00頃までのお話でした)

<パレスチナ出張記【6】「SDカードが没収された」編につづく>

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