\n"; ?> JVC - 日本国内の有機農業運動の実践を学ぶ 2018年度交流プログラム その3 - 農村からの風便り ~日本・タイ~

日本国内の有機農業運動の実践を学ぶ 2018年度交流プログラム その3

タイ事業担当 下田 寛典
2019年4月16日 更新

11月5日から9日までの5日間は栃木県那須塩原市、東京、千葉県東金市と3都県に滞在した。栃木県は生活クラブ生協と取引のある栃木開拓農業協同組合とキャベツ農家を訪れた。東京では生活クラブ生協と世田谷にあるデポー(店舗形態)を、そして千葉県東金市では若手農家グループのあいよ農場に赴いた。以下はタイ参加者たちによる各地での学びである。

キャベツ農家の益子さんの畑で特設講義が展開(栃木県)キャベツ農家の益子さんの畑で特設講義が展開(栃木県)

栃木開拓農協とキャベツ農家

キャベツ農家の益子さんと栃木開拓農協の神山さんの話から農協が果たすべき役割を学んだ。栃木開拓農協は、複数の生産者グループとの間で、生産、配送、値段交渉の調整と連携を担っている。栃木開拓農協には数十名の職員数がいる。当然ではあるが彼らの給与は、生産者との調整や連携への対価として支払われている。仮に生産者や消費者から「(農協は)必要ない」と思われたら農協は成立しないのだ。「この仕事(農協の仕事)が必要だと思ってもらえるような働きをしなければならない」という農協職員の言葉から、組合運営の責任の重さを強く感じた。

キャベツ農家の益子さんからは、生産物供給に対する責任感、グループをまとめる仲間意識、そして「いいものを食べてもらいたい」という農民としての誇りが感じられた。

農家としての誇りを熱く語る益子さん(栃木県)農家としての誇りを熱く語る益子さん(栃木県)

「ここには生活クラブの組合員の人たちも足を運んでくれる。私たちがつくるキャベツを待ってくれている人がいる。その人たちのことを思ったら、たとえ台風であろうと事前に協議して決めた数量は必ず納品しないといけないんだ。これまで欠品させたことはないよ。」と益子さんは言う。顔の見える関係とはまさにこのこと。供給に対する生産者の責任感の強さは、顔の見える関係が基礎になっているのだ。

進化し続ける生活クラブ生協

組織が大きくなっても、理念を貫き実践してきた生活クラブに感銘を受けた。食の分野だけでなく、近年では福祉分野として保育園や高齢者施設の運営を開始し、災害時のサポートグループの構築など、時代や社会にあわせて活動を発展させ、常に前進している。生産者でも消費者でもない「間に入る者」の役割として、新しい視点で考えることができた。

生活クラブの組合員は顧客ではなく、事業の運営者という意識で統一されている。デポーの運営はワーカーズ・コレクティブと呼ばれる組合員で構成されている。生産者と組合員が一体となることで、実際に生産者が抱えている問題を組合員自身が当事者となって共に理解し解決していこうとする形を作り上げていた。

店舗形態のデポーについて説明を受けた(東京)店舗形態のデポーについて説明を受けた(東京)

タイの農業・食に関する運動は、農民(生産者)の働きかけから始まったが、生活クラブは消費者である主婦たちの思いから始まった。タイで活動する自分たちの状況と違うのはこの点だ。ビジネスではなく消費者運動・社会運動であるため、組合員(消費者)が「運営者」としての意識を持っているという点が印象的だった。

ベストな経営形態は何か?

あいよ農場は若手農家がグループになって営農して10年近くになる。グループによる営農は、長年にわたって継続的に同じ人、同じ規模で続けていけるわけではなく、また農業には属人的な職能を持つ仕事も多い。

圃場を歩きながらグループでの営農方法を学んだ圃場を歩きながらグループでの営農方法を学んだ

あいよ農場も訪問時には株式会社として法人化していたが、大事なことは、法人が持続的に続いていくことではなく、消費者と生産者が手を携えて共に歩んでいくために、その時々で最善の法人格を選ぶことだと言っていた。経営形態を固定的に考えるのではなく、時代と共に生産者グループも自在に変わっていける柔軟性を持つことが大切なのではないだろうか。

次回は、タイの参加者や受け入れてくれた日本側の声をいくつか紹介します。

本事業は国際交流基金アジアセンターの助成を受けて実施しました。