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スーダンでの活動

住民間の平和構築・信頼醸成活動(過去の活動)

2015年7月27日 更新

活動概要

目的
  1. 地域住民の発案に基づく生活改善の活動に取り組むことにより、住民間の信頼醸成が図られる
  2. 地域の資源を再発見する過程と話しあいや共同作業の場を通して、地域の安定化が促進される
期間2010年~2011年6月(中断)
活動分野平和構築、生計向上、紛争後の復興支援
活動拠点南コルドファン州エル=ブラム郡
活動対象
■生活改善活動
地域の資源(経験的な知恵や技術を含む)を住民と再発見するワークショップを実施し、再発見された資源を用いた生活改善の活動に取り組む
■平和構築・信頼醸成
生活改善活動の過程での話し合いや共同作業を通して、紛争当事者を含む住民間の信頼醸成が促進される

事業の背景:「和平の試金石」としての南コルドファン州への着目

南コルドファン州の位置南コルドファン州の位置

スーダン中央部、南北境界線の北側に位置する南コルドファン州は、行政上は北部スーダンに属するものの、北部とも南部とも割り切ることができない複雑な歴史的背景を持っています。

スーダンは他のサブサハラ諸国に先駆けること1956年に独立を宣言しましたが、その後の歩みは容易なものではありませんでした。富める首都ハルツームと低開発に悩む諸地方という構図が固定され、南コルドファン州も例外ではありませんでした。また、同州の中央部に広がるヌバ山地に住む、「ヌバ」(Nuba)と総称される民族集団は、長きにわたってアラブ系を主流とする首都ハルツームの中央政府(北部)から差別、抑圧を受けてきました。このため、1980年代に南北内戦が始まると、多くの人々が反政府勢力である南部SPLM(スーダン人民解放運動)に同調してこれに加わりました。しかし一方で政府軍の影響下に置かれた村もあり、ヌバの人々は二つに引き裂かれ、激しい戦闘によって多くの犠牲が生み出されました。

平原と丘陵の続く南コルドファン州平原と丘陵の続く南コルドファン州。内戦中は、山中に隠れ家が設けられた。

2005年和平合意の終結後、南コルドファン州は南北境界線上の他の2地域(青ナイル、アビエイ)とともに「暫定地域」とされ、南北による共同統治が実施されました。しかし、旧「政府支配地域」と「SPLM支配地域」との統合が滞り村落部の復興が進まず、同一地域の中でも住民間の抗争が絶えず起こっていました。抗争の原因は様々ですが、水場や土地を巡る軋轢に政治的な対立が絡んでいるケースが多く報告されています。

諸政治勢力のせめぎ合うこの地域の安定は「和平の試金石」と目されています。にもかかわらず、新国家が誕生し国際社会の注目が集まる南部(現南スーダン)に比べ、北部スーダンに属する南コルドファン州を重視する国際NGOは多くはありません。だからこそ活動を行う意義があると判断し、JVCは2010年度よりスーダンでの活動拠点をここに移すことを決定しました。

問題の根本は「民族」や「宗教」ではない

わずかな井戸に多くの住民の利用が集中する。内戦と社会開発の遅れによって水源の維持も困難になった。わずかな井戸に多くの住民の利用が集中する。

具体的な活動地として選んだのは、南北境界線に近いエル=ブラム郡の二つの村です。この地域になお残る内戦の痕跡に復興の支えとなることと目指したことと、社会に潜む政治的対立に気づき、対立構造を緩和し、対話を促すことを目指したのでした。

この地域は内戦中に激戦地となり、多くの住民が国内避難民となって首都ハルツームなど北部の諸都市に逃れました。内戦が終わって住民は戻ってきたものの、その後も住民間の抗争が続いたため、村人の生活再建は遅れています。内戦前は畑を耕し、多くの家庭が家畜(ヤギ、ヒツジなど)を持ち、それらが現金収入の源になっていましたが、内戦で畑も家畜も失われ、内戦後は現金収入の方法が出稼ぎに頼るほかありません。町へ家事手伝いなどの出稼ぎに出される子供も少なくなく、小学校では学年が上がるほど児童数が減るという現象も起きていました。また、村では診療所、学校や井戸といった基礎的な社会インフラも十分でなく、内戦中に破壊されたという井戸をはじめ、多くの井戸が使用不能になっています。

さらに、内戦後に住民間の対立がくすぶり、ある村ではキリスト教会の焼き討ちや殺害事件が起こりました。対立の構造は政治的な対立や経済的な利権の争いであるのですが、宗教の言葉を用いた扇動があったとみることができます。南北の内戦そのものにも同様の構図があり、スーダン南北内戦も本来は宗教を対立軸としたものではないのですが、北部=ムスリム、南部=クリスチャンという図式化が行われ、住民の対立感情を煽るため宗教が最大限に利用され、「イスラーム対キリスト教」「アラブ人対アフリカ系黒人」といった対立図が宣伝されました。

2009年からJVCは、対立してきたグループを含む地域の住民たちがともに集まって話し合い、生活を改善するための様々な活動(社会インフラの整備や収入創出など)を共同で実施しながら相互の理解と信頼を深めていけるように、様々なアドバイスや側面支援をしていくことを計画しました。

多くの人道支援団体が「内戦で荒廃した南部スーダン(と暫定地域)には何もない」という認識のもと、学校や診療所、農具や作物の種に至るまで何もかもを贈り、支援してきました。緊急援助という意味では必要だったとも言えるこうした支援が、反面では村人に援助に期待し依存する気持ちを持たせてしまったという一面もあります。

実際には、スーダンには「何にもない」わけではなく、多くの自然資源や、家屋の作り方や作物の栽培法から薬用植物に至るまで伝統的な知恵や技術が息づいています。そうした資源や知恵に村人が気づき、それを活かして生活再建を実施していく過程を手助けするのが外部者として関わっているJVCの役割だと言えます。学校校舎の補修、自然産品の加工など、様々な場面で村の資源や技術を役立てることができるはずです。

こうした活動が紛争当事者であった両グループを含めた多くの村人の参加によって実施されることで、住民間の信頼が取り戻されていくと期待しています。同時に、JVCは村の歴史や住民間抗争の間の出来事について住民から聞き取りを行い、それを記録し村人と共有する場を設けます。村人自身がこれまでの経緯を振り返り整理することは、和解に向けた足掛かりになるはずです。

「紛争にうち克つ社会」を目指したい

私たちが目標としているのは、地域で何か問題が起きた場合にも、それが紛争に至る前に住民が自分たちで解決する力を身につけることです。2011年の南部住民投票に関連して、南コルドファン州では異なる政治グループ間での緊張関係が高まることも懸念されています。そうした際に、それが争いに発展しないようにするためには、地域社会が安定していなければなりません。

この活動の実施期間は2010年から2011年にかけての約1年間ですが、その間の成果と活動の目標を見据えながら、また流動的な政治情勢も踏まえた上で、さらにその後の活動を計画したいと考えています。

付記

「住民間の平和構築・信頼醸成活動」として始まった上記の支援活動は、2011年6月に勃発した紛争によって中断に追い込まれました。JVCの事務所は武装した一団の掠奪を受け、駐在職員は国連機で首都へ緊急退避し、現地職員や関係者の安否に至っては、判明したのは数か月後のことでした。そして、カドグリの凄惨な市街戦すらも、じつは州内至る所での戦闘の一部にすぎなかった、ということもすぐに知ることになりました。

緊迫した状況は続いていましたが、およそ半年後の11月にはJVCはカドグリに避難した人々に対し、食料配給による緊急支援を開始しました。このときすでにカドグリ周辺の避難民は4万人以上に達し、地域人口が急激に増えたことによってさまざまな問題が生じていたため、JVCでは母と子だけで避難しているなど緊急度の高い世帯を中心に、豆や食料油など食料約2週間相当分を配布しました。

2012年に入り、JVCは、帰るあてのない避難民とかれらを地域社会に受け入れた地元住民両方を対象とした、野菜づくりの支援を開始しました。2015年までの3年間に、カドグリ周辺の避難民の多く集まる地区のほぼすべてにおいて支援が実施され、畑を耕すことで新鮮な野菜を食事にとりいれ、市場で売って現金収入を手に入れる、という所期の目的を達成したのでした。そして、肥料のつくりかたや水場の管理など、双方が話し合い、知恵と労力を出し合うことでよいものにしてゆく仕組みも実現させました。

当初の「紛争にうち克つ社会を」というテーマは、このように、避難民と地域住民の両方に対して生計向上支援を行う現在の活動にも受け継がれています。

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