
灼けつく大地の向こうに、ティロ避難民住居のウォーターヤードが見えてきました。給水塔の脇にクルマを停めて外に出ると、暑さに息が詰まりそうです。雨が完全に止まって既に4か月、3月の南コルドファン州は1年間で最も暑く乾燥した季節を迎えています。気温は40度をゆうに超え、45度くらいでしょうか。しかし、ここでは温度を気にする人など誰もいません。
ウォーターヤードの給水所は、ポリタンクを抱えた女性や子どもたちで一杯でした。水の消費量もぐんぐん上がっているようです。地下水を汲み上げるための発電機の音が鳴り響いています。
JVCスタッフのタイーブはそんな光景を眺めながら、フェンスを隔てた菜園に足を向けました。
前回の「現地便り」でご紹介したように、2月に行った話し合いでは、共同菜園にウォーターヤードの水を引くため、菜園の参加メンバーは発電機の燃料代として分担金を払うことになりました。しかし、「ウォーターヤードは家畜に飲料水を提供して利用料収入があるはずなのに、どうして私たちからおカネを集めようとするのか」といった意見も多く、分担金の支払いは滞っていました。
タイーブは菜園の中に、ジャラビーヤ(スーダン男性が身に付ける白いガウン状の衣服)姿のクワさんを見つけました。クワさんは、前回の話し合いにも参加しています。その後、どうなったのかを尋ねてみました。

「そうだな、みんな分担金は嫌がっていたけれど...それでも、『払ってもいい』という人からおカネを集めて、25スーダンポンドを井戸管理委員会に渡したんだよ」
「クワさんが集めたんですか」
「そうだよ。でも、井戸管理委員会は、それでも足りないと言ってな。そこでジャベルさん(菜園リーダー)が、自分でカネを出して燃料の軽油を大きな缶で買ってきたんだ」
そんなことがあったとは、タイーブも知りませんでした。
「それで、水は来ているのですか?」
ウォーターヤードからは、緑色のホースが菜園に延びています。そのホースの元栓は、井戸管理委員会が管理しています。
「ジャベルさんから軽油を受け取った後、『わかった、水はちゃんと流す』と言っているけど、流れてきたり来なかったりだ。今日も、さっき文句を言って来たばかりだ」
菜園にはオクラなどの野菜が緑の葉を伸ばしていますが、中には、作付けされていないのか、それとも枯れてしまったのか、地肌がむき出しになっている畑もあります。
「水がなけりゃ、なんにも育たないよ」
クワさんとタイーブとの話を聞いていた主婦が、そうつぶやいていました。
タイーブがウォーターヤードに戻ると、井戸管理委員会から管理人を任されているアフマドさんが、家畜用の蛇口を開けて桶に水を注いでいました。そろそろ、ウシの群れがやってくる時間です。
菜園への給水について聞くと、アフマドさんは少しむっとしたように
「水はちゃんと流しているよ、いつだって」
と言いながら、
「こっちだって大変なんだ。ポリタンクの水汲みも増えているし、家畜もどんどんやってくる。水が足りないよ」
言い終わらないうちに、向こうからウシが列を組んで駆けてきました。あっという間に20頭ほどが2台の給水桶をぐるりと取り囲み、ゴクゴク、いやバシャバシャと音を立てて水を飲み始めます。この暑さに、ウシもさぞかし喉が乾くのでしょう。蛇口からどんどん水を流し込まないと、すぐに桶が空になってしまいそうです。
「午後はずっとこんな感じで、水は出しっぱなしなんだ」


どうやら、ウォーターヤードの利用はこの時期がピークのようです。いったい、1日に何人くらい、そして家畜は何頭くらいが利用しているのでしょうか。
【おことわり】
JVCは、スーダンの首都ハルツームから南に約700キロ離れた南コルドファン州カドグリ市周辺にて事業を実施しています。紛争により州内の治安状況が不安定なため、JVC現地代表の今井は首都に駐在し、カドグリではスーダン人スタッフが日常の事業運営にあたっています。このため、2012年1月以降の「現地便り」は、カドグリの状況や活動の様子を、現地スタッフの報告に基づいて今井が執筆したものです。
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