\n"; ?> JVC - 住民による井戸管理委員会が始動 - スーダン日記
2013年12月 1日 【 避難民向け住居への給水活動

住民による井戸管理委員会が始動

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年12月 3日 更新
建設予定地で業者と打ち合わせる井戸管理委員会建設予定地で業者と打ち合わせる井戸管理委員会

南コルドファン州の州都カドグリ市郊外、ティロ地区の避難民向け住居にJVCはウォーターヤード(井戸・揚水ポンプ付き給水施設)の設置を決めました。そして話し合いの結果、完成したウォーターヤードの運営は住民が自分たちで行うことになり、そのために7人のメンバーからなる井戸管理委員会が発足しました。
というのが、前回までの経過です。

建設予定地は、230戸の避難民向け住居が建ち並ぶ敷地の北西に位置しています。既に井戸の掘削や水質検査は終了し、次に給水塔や共同水栓の建設が始まります。9月末、下見のために建設業者が現地を訪れました。JVCスタッフも一緒です。

工事は、井戸を中心に発電機用の機械室、給水塔、共同水栓などを配置して、その周囲15メートル四方をフェンスで囲います。さらにフェンスの外側には、家畜用と「ロバの水売り」用の2か所の給水所を設置します。下見の目的は、これらの配置を決めることです。

あらかじめ連絡しておいた井戸管理委員会のメンバーが何人か集まってきました。リーダーのブシャラさん、ジャラビーヤ姿(白いガウン状の服装)の長身のルドワンさん、そして黄色いトプ(一枚布で全身を覆うスーダン女性の一般的な服装)をまとったニダさんです。さっそく、業者との打ち合わせが始まりました。

「家畜の給水所のまわりはどうしても少し汚れるから、家々からはなるべく離れた場所にしよう。そうだな、この辺りがいいんじゃないか?」
「『ロバの水売り』の給水所はどうする?」
「家畜とは離れていた方がいいな。あっちにするか」

家畜やロバのことばかり気にする男性たちに対して、ニダさんは家庭の水汲みを担う女性の立場から、「フェンスの入口は家の方に向いていないと水汲みが大変になって困るからね」と注文を付けています。
どうやらこれが、井戸管理委員会の初仕事になったようです。

ここがいつもの集会所。井戸管理委員会とJVCとの話し合いここがいつもの集会所。井戸管理委員会とJVCとの話し合い

下見を終えた業者が帰ったあと、あらためて井戸管理委員会とJVCとの会合が持たれました。ソルガム畑に囲まれた木陰の集会場所に、委員会のメンバー全員が集まってきました。あれ?でも8人います。たしか「メンバーは奇数の方がいい」という社会開発省のアドバイスに従って、7人だったのではないでしょうか。

「実はね、そこにいるアフマドが井戸の補修の経験があるっているから、メンバーに加わってもらったんだ。住民リーダーも納得しているから大丈夫だ」というのがブシャラさんの説明です。

会合が始まって一通りの挨拶が済むと、JVCスタッフのアドランが発言しました。
「さっき工事業者が来て、井戸管理委員会のメンバーにも立ち会ってもらって下見をしました。これから工事が始まります。そうしたら、工事の進捗状況や打ち合わせ通りに行われているかどうかを、こまめに確認したほうが良いと思います。JVCスタッフも見に来ますが、毎日というわけにはいきません」
アドランがそこまで言うと、ブシャラさんが意をくみ取って答えてくれました。

「よし、井戸管理委員会で工事の様子を監督することにしよう。そうだな・・自分と、アフマドと、それにルドワン。この3人の家は建設現場に近いし、3人が毎日様子を見ることにする」
「わかりました。それと、皆さんが自分たちでウォーターヤードを運営していくために、研修を受けてもらおうと思うのですが、どうですか」
「もちろん。どんな研修でも受ける用意があるぞ」
「はい。ひとつは2日間のマネジメント研修です。社会開発省の専門家が講師になって、委員会の運営や、おカネの管理の仕方について学びます」
「もうひとつは何だ?」
「もうひとつは、技術研修です。水公社の技術者と一緒に他の地区で稼働しているウォーターヤードを訪問して、仕事を手伝いながら実地研修を受けます。こちらは研修期間も長いので、全員ではなく、発電機やポンプの操作と保守点検を担当する人が受けるとよいと思います」
「よし分かった。機械の操作は2人が組になって交代でやることになるだろうから、その2人が受ければいいだろう」

そう言って、ブシャラさんはメンバーを見渡しました。「誰がいいかな?」

ブシャラさんとアフマドさんが参加した技術研修ブシャラさんとアフマドさんが参加した技術研修

「ブシャラ、あんた自身と、それからアフマドがいいんじゃないか。ブシャラは前にいた村で井戸管理委員会をやっていたし、アフマドも、前の村で井戸の補修をしていたんだから、ぴったりだ」という声があがりました。

ここは避難民向け住居ですから、その住民である井戸管理委員会のメンバーも全員が避難民です。「前の村」というのは、紛争が起きる2年前まで生活をしていた、故郷の村のことです。現在は紛争のために行くこともできません。

「よし、みんなそれでいいか」
異論はないようです。
「では、それで決まりだ。ところで、技術研修は何日間?」
ブシャラさんは、アドランを見て尋ねました。
「少なくても10日間です」
「うわっ、そんなに長いのかっ」

数日後、建設業者が発注していた建設資材、ポンプや発電機、5千リットルのタンクと配水管、給水塔の鉄骨などがカドグリに到着したとの連絡が入りました。トラックに乗せたままで直接、建設予定地に持ち込むようです。

給水タンクなどの資材を乗せたトラックは、泥道にはまって立ち往生給水タンクなどの資材を乗せたトラックは、泥道にはまって立ち往生

「よし、見に行ってみるか」
クルマに乗ったJVCスタッフが避難民向け住居に近づくと、資材を乗せた大型トラックが畑の中で立ち往生しています。前日の雨にぬかるんだ道にタイヤがはまってしまっています。

「おおい、市内まで戻って、助けにきてくれるトラックを探してくれんか」
約1時間後、トラックはなんとか泥道を抜け出して予定地に到着。いよいよ、工事が始まったのでした。

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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