南アフリカ通信
JVCは南アフリカ・リンポポ州のフィアボム村で2015年から住民を対象に、家庭菜園研修を行っています。この7月には、JVCのこれまでの活動がどうだったのか、振り返りを行いました。研修生の中には、畑をそれまで一切作ったことがない人も多くいます。6月に「水の有効活用」の研修のために自宅を訪問した際、「本当に畑の中にいるのが好きなんだなぁ」と強い愛情が感じられるような、見事に素晴らしい畑をつくっていたロシーナさんもそんな1人です。
しかし、今回訪問するとなぜか畑の半分が「黒焦げ」になっていました。聞けば、留守中に子どもたちが遊んでいて、火をつけてしまったのだとか。「誰もケガしなかったの?火が燃え広がったり、家にうつって大事にいたらなくてよかったね」と言うと、「でも畑が!!!」と。「おおごとにならなくてよかった」の、ひとことに共感すると思っていたら・・・畑?
今は当時の自分を思い出しては爆笑しながら話してくれるのですが、帰宅して燃えた後の畑を見たときは、子どもたちを叱る前に、「私の畑が!!バナナが!ほうれん草がぁぁ~!!!」と子どもたちの目もはばからず、まさに声をあげてワンワン大泣きしてしまったそうです。その様子を見た子どもたちは「何やら非常によくないことをしでかしてしまった」と自らの過ちに気づき、泣いて謝ってきたとのこと。笑いごとではないのですが、話を聞いていて一緒に爆笑してしまいました(笑)。「そんなに泣くなんてほんとに畑が大事なんだねぇ」と言ったら「そうよ!!私の生きがいよ」と。
「それにしてもよくやる気なくさなかったね」と聞いてみたら、それが・・と素敵なエピソードを披露してくれました。その後、あまりのショックにやる気がでず、燃えた畑を見ては呆然とし、泣いて落ち込んでいたところ、数日後に事態を聞きつけた一緒に研修に参加している仲間たちがやって来て、様子を見るなり何も言わずに畑の燃えカスの灰を集め始め、それをまだ残っている畑に蒔き、畝(うね。畑にものを植えるため、幾筋も土を盛りあげたところ)を作り・・・もくもくと作業をしてくれて、救われたのだといいます。今は、子どもたちが入れないように、丈夫なフェンスを作っているの!とのことでした。
この村の研修参加者たち(40人くらいいます)は全員がとても仲がよく、タネやできた野菜を日常的に交換したりしています。自宅近くに水源がない人に自宅の敷地を提供して、そこで4~5人が畑を作っているというお母さんグループもいます。また、誰かがどこかで新しい情報を得てくると、皆で集まって共有もするのだとか。「もともと仲が良かったのか」と聞いてみると、「ううん。知り合いではあったけどこんな風に友人ができると思わなかった。特に私は、別の村から嫁いできたところで家にこもってばかりだったから・・」とロシーナさん。「友人づくり」は活動の中で目指していたわけではありませんが、素敵なインパクトがあったのだなぁと嬉しくなりました。
水不足、家族が倒れた、ケガをした、子どもが病気になった・・・これまでの活動で畑づくりを続けられなくなる人も見てきましたが、その大きな理由のひとつが、他の人のサポートが得られず、何か問題が起きた時にやめざるをえない、というものでした。こんな風に、畑での作業や日々の食料を支え合う仲間がいれば、畑での作業だけではなく、いろんなことを乗り越えていけるのだろうなと思います。これを見たJVCスタッフのモーゼスが「これこそ"持続性"だね~」と嬉しそうに(振り返りのための)メモを取っていました。
3年間の研修の成果
少し前のことになりますが、7月8日にパートナー団体であるFAMSAからドロップインセンター(DIC)のボランティアに研修の修了証を贈呈する授与式が催されました。FAMSAとは事業一年目に実施したカウンセリング研修にはじまり、今年終了したコミュニケーション研修をとおして、とくにDICボランティアの子どもたちへのケアの向上に一緒に取り組んできました。
事業最終年の今年。今までのDICボランティアの努力を称えたい。そして、コミュニティの人びとに彼らの努力を知ってもらいたいという思いから、今年3月に終了したコミュニケーション研修の修了証授与式をボドウェ村で実施することにしました。
この事業はNGO連携支援無償を通し外務省からの補助金で実施しています。その中間報告に日本大使館を訪れた際にこの授与式の話になると、「そういうことであれば是非大使が出席できるか調整させてください」と担当者の方から嬉しい申し出が。たった1時間程の式典に出席するにも、首都プレトリアから片道4時間以上の道のり。実現するか不安でしたが、忙しいスケジュールを調整していただき、大使がボドウェ村にやってくることが決まりました。
「ごちゃ混ぜ」の村だからこそ
活動地の一つ、ヒャンガナニ村のドロップインセンター(DIC)で、ゼノフォビアをテーマにした啓発キャンペーンがDICボランティアの企画で実施されました。
今年に入ってから、南ア全土で外国人が経営する商店が焼かれ、多くの外国人がコミュニティから追い出されるなど、ゼノフォビア騒動が続きました。ヒャンガナニ村は南ア政府の政策の一環として建てられたRDPハウスと呼ばれる貧困層向け住宅が整然と立ち並ぶ地域。もともと伝統的な首長の配下になく、RDPハウス建築によって「つくられた」コミュニティです。そのためか、さまざまなトラブルを抱えた人たちがリンポポ州内もしくは南アの他地域からも移り住んできます。また、モザンビークやジンバブエなど近隣諸国の人びとも多く暮らし、さまざまな人種、言語、文化が入り混じる地域です。「ヒャンガナニ」とはツォンガ語で「ごちゃ混ぜ」を意味することからもその状況がうかがえます。
この地域で、今まで目立ったゼノフォビア騒動は起きていないものの、問題の火種となり得る差別意識は常に存在しています。今までも子どもたちの間で外国人を差別するような発言があったり、他地域の子どもたちにヒャンガナニ村は貧しいからとバカにされいじめにあうケースがありました。これらの問題について意識を高めるため、今回の啓発キャンペーンが実施されました。
南アフリカでは、6月16日は『ユース・デー』として祝われています。
1976年6月16日。アパルトヘイト政策下「白人支配の象徴」であるアフリカーンス語が教育の場で使われることに反発した黒人学生たちが立ち上がり、学生1万人と警察が衝突した、いわゆる「ソウェト蜂起」が起こった日。この日に命を失った500人以上の学生を悔やみ、アパルトヘイト政権と闘った若い有志を称えるために、6月16日は毎年ユースデ-として祝われています。
全国でも若者をターゲットにしたさまざまなイベントが催されるこの日。私たちが活動するボドウェ村のドロップインセンター(DIC)でも、ボランティアたちが中心となって、この日イベントが実施されました。
日本でも一部報道されていましたが、ここ数ヵ月、ゼノフォビア(移民排斥)が南ア国内で大変な問題となっています。
「外国人が自分たちの仕事を奪っている」
民主化20年を経ても、一向に改善されない貧困、格差、行きどころのない怒りと不満の矛先が、同じコミュニティ内に暮らし商売を営んでいる外国人に向けられ暴徒化し、死者をもだす最悪の事態を招きました。
ドロップ・イン・センター(DIC)の活動改善の一環として、他団体との経験交流、より先駆的な活動をしている団体からメンター(助言や対話を通して長期的に活動の改善をサポートする存在)を招聘したい、という計画があります。
しかし、この相手となる団体を探すのに一苦労。DICの活動は資金調達の難しさなどもあり、なかなかいい団体を(とくにリンポポ州周辺で)探すことができていませんでした。
先日、日本大使館から草の根資金をもらった経緯のある団体で、子どもとくに青少年の活動を活発にやっている団体があるとの紹介を受け、Vaalwater Welfare Society(WWS)を訪問してきました。
Vaalwater(ヴァールヴァタル)は、同じリンポポ州内とはいえ、首都プレトリアに近く、私たちの活動地域からは車で片道4時間の距離にあります。まずはどんな活動をしているのか、今後協力できる可能性があるかを聞き取り行ってきました。
今日は、ンジャカンジャカのドロップイン・センター(DIC)のボランティアが企画した小学校での啓発活動に同行しました。
この日は小学校5年生を対象に、子どもの虐待について話しました。どんな行為は虐待にあたるのか、自分もしくは友達が虐待を受けたら、どうすればいいのか。20分ほどの短い時間でしたが、教室の前でボランティアたちは堂々と話しをしていました。
3月23~26日にかけて、チルンザナニHBCの訪問介護ボランティア22名、そしてドロップイン・センター(DIC)のボランティア選抜6名を対象に救急法レベル2の研修を実施しました。
少し前になりますが、3月16~20日にかけてHIV/エイズ治療研修が、訪問介護を行なうチルンザナニHBCを対象に行なわれました。訪問介護ボランティア22名に加え、同地域で障害児支援を実施するNGO、年長者が一人で暮らす家庭を支援団体、HIV陽性者サポートグループのメンバーなども参加。地域の健康を支えるボランティアたちが共に、HIVの予防、ケアについて学びました。
このエイズ治療研修は、英語で「HIV Treatment Literacy Training (TLT)」とよばれています。ARV(抗レトロウィルス薬)が全国的に普及はじめた2000年代に、HIVが体に与える影響をきちんと理解し、ARV薬を適切に服薬できるよう、そして教育レベルの高くない農村や貧困地域の人びとにその知識を広めるために、HIV/エイズに取り組むNGOが中心となり創り上げていきたツールの一つです。実際に訪問介護ボランティアのケアの質の向上や、HIV陽性者自身が自らの病気を理解しHIVとうまく付き合っていけるようになることに、大きく寄与してきました。
今週は、子どもケアセンターで活動するボランティアを対象としたコミュニケーション研修を月〜金曜日で実施しています。
研修の中日にあたった、3月11日。こんな遠く離れた村の人たちの記憶にも、4年前にテレビで目の当たりにした日本での大災害の様子が鮮明に残っているそうです。まだ被災した地域は復興の途上にあることなどを話すと、研修の最後にみんなでお祈りをささげようということになりました。
みんなで手をつないで輪になり、歌を歌い、祈りをささげました。中には目に涙を浮かべる人の姿も。共にこの日を思い出してくれたことへ感謝の気持ちでいっぱいです。