南アフリカでは、6月16日は『ユース・デー』として祝われています。
1976年6月16日。アパルトヘイト政策下「白人支配の象徴」であるアフリカーンス語が教育の場で使われることに反発した黒人学生たちが立ち上がり、学生1万人と警察が衝突した、いわゆる「ソウェト蜂起」が起こった日。この日に命を失った500人以上の学生を悔やみ、アパルトヘイト政権と闘った若い有志を称えるために、6月16日は毎年ユースデ-として祝われています。
全国でも若者をターゲットにしたさまざまなイベントが催されるこの日。私たちが活動するボドウェ村のドロップインセンター(DIC)でも、ボランティアたちが中心となって、この日イベントが実施されました。
そして、この日のスペシャルゲストはなんとDICの卒業生です。
ロニー・ムタバチンディさんは、2011年にボドウェ村の高校を卒業。現在は21歳で、FETと呼ばれる工業専門学校に通い電気工学を学んでいます。学生時代は毎日ボドウェDICに通っていたそうです。
「DICがあったから、ドラッグや酒に手を出さずに学校を卒業できた、感謝している」と切り出したロニーさん。
「コンドームを配るのはいいが、まずはセックスなんかしないことだ。学生のうちの5年間、卒業してから3年間は教科書が彼女だと思えばいい。それから仕事に就いて、車をもてるようになって、それからでもセックスをする時間はいくらでもある!」と、若者に響く語り口調で、話しをしていきます。
「全ての学生が頭がよく大学に通えるわけではない。それに大学はでかい街に行って『雇われたい』人が行けばいい。リンポポにいても自分でビジネスをはじめられるし、手に職をつけたければ専門学校でも十分。最初の登録料300ランド(約3000円)さえあれば、誰でも勉強を続けることができるんだから」とくに進学を考えだす年齢の子どもたちは食い入るように話しを聞いていました。
アパルトヘイト下では白人社会の労働力として、黒人男性は炭鉱へ、女性はメイドとして村を離れ出稼ぎに行くことが当たり前となり、今でもその慣習が残る南アフリカ。とくに農村部で「成功」しているロールモデルが近くにいないことは、未来に希望を持てない若者がどうしていいかわからずなかなか貧困の連鎖を抜け出せない背景の一つとしてあります。
そんな中「自分たちの一人」としての視点から語るロニーさんの言葉は、少なくとも数人のユースの心に響いたようです。
数日後、ボランティアの話しを聞くと、16日の翌日にはイベントに参加しなかった子どもたちが、ロニーさんの話しを聞きたい!とDICに殺到したそう。次の学校の休みに、子どもたちに話しにまた村に帰って来ることを、ロニーさんんも約束してくれたそうです。これからもDICから、多くのロニーが生まれていくことを期待!