JVCは2012年4月より、ガザ地区・ガザ市東部、シャジャイヤ、トゥッファーハ、ゼイトゥーンの3地区で、地域における子どもの栄養失調予防支援を開始しました。この事業が目指すのは、「地域社会が子どもたちの健康を守ることができるようになること」です。
2007年、ハマスが武力でガザを制圧してから5年が経つガザでは、イスラエルにより、現在も人の行き来や物資の搬入が制限されています。ガザでは今も、封鎖によって10年以上も仕事を失ったままの人々が多くいます。ガザの外に仕事に行っていたため、その仕事を失った人。そして、原材料が輸入できなくなったためにガザの工場が稼動できなくなり、仕事を失った人。農地を破壊された人もいれば、農業を続けていても輸出ができなくなってしまったという人もいます。
一時に比べて、イスラエル側からの物資の搬入の制限が一部緩和され、また、エジプト国境に掘られたトンネルから入ってくる物資で、ガザの市場は大分賑わうようになりました。しかし、買うものがあっても「買うお金がない」現実は変わっていません。ガザの失業率は45.2%(2011年現在、)と高く、これはこの5年間ほとんど変わっていません。
ガザの人々は今も、支援に頼らざるを得ない生活を送っています。本来なら十分に働くことができる体力も、能力も、そしてやる気もある人々が、それを叶えられないという現状を強いられる現状は、人々の尊厳に関わる大きな壁です。
しかし、そのような中でもできることがある、と、頑張る人たちがいます。JVCは2011年、他NGOと共同で、現地NGO「人間の大地」とともに、地域における栄養改善事業を行ってきました。
この事業で中心になるのは、地域のボランティアの女性たちです。トレーニングを受けた母親ボランティアたちが、子どもの栄養失調、貧血、くる病の予防のために、地域の女性たちのグループ、幼稚園、地域社会施設などを通して、教育セッションを行ったり、一軒一軒家庭訪問を行い、妊婦や乳幼児の母親たちへのカウンセリングを行ったりしてきました。
また子どもたちの成長状態の検査も行い、栄養障害が疑われる場合は治療のためにクリニックに紹介をしてきました。この事業はいったん、2011年12月をもって3年間の取り組みが終了したのですが、JVCはさらに1年間延長し、ガザ市の該当地域でカバーされていない部分での活動を、2012年4月より再開しました。
さらに今年は、3地域で活躍する母親ボランティアたちの情報交換や技術・知識の共有のためのネットワーキング、そして各地域での健康教育委員会の設立にも力を入れています。健康教育委員会は、例えばモスク、幼稚園、地域社会施設、その他のボランティアなど、地域の様々な"アクター"が集まり、例えば地域の環境衛生など、子どもたちの健康のための様々なニーズに取り組んでいくための委員会です。
子どもたちを守るために、個々人で、そして地域社会全体でできることは、たくさんあるのです。母親ボランティアたちが日々積み重ねていく活動が、少しずつ地域社会に根付き、そしてガザの将来を担う子どもたちを守っていくための「仕組み」となっていくことを、JVCは目指していきます。
母親ボランティアの中には、「私は16歳で結婚し、高校も卒業できなかった。でもこうして自分が社会に貢献できていると自信が持てたことで、やっぱり高校を卒業しようと思ったの。頑張って勉強して、息子と一緒にタウジヒ(高校卒業試験)を受けたわ」という女性もいます。昨年の事業終了式においては、「ガザの『援助に頼る文化』を打ち破るのは私たちよ!」という力強いスピーチも行った女性もいました。
そんなパワフルすぎる女性たちに、若干引きずられがちな私ですが、彼女たちの活動に対する思いと、そして何より自分たちの社会に対する思いが、厳しい状況におかれ続けるガザにおいて何よりの資源であると感じています。彼女たちの今後の活躍に、乞うご期待!そして応援よろしくお願いいたします。
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