JVCはガザで、幼稚園児に対し、貧血予防のために鉄分が強化された牛乳とビスケットを提供しています。この牛乳とビスケットは、パレスチナ産のものを使うことでパレスチナの産業を応援しています。牛乳は西岸産のもの、ビスケットも去年までは西岸産のものを使用していましたが、昨年からガザ産のものを使用し始めました。この日は、このビスケットを製造しているガザの菓子製造会社、Al Awdaの工場にお邪魔してお話を伺いました。
担当であるマナールさんが案内してくれた工場では、400人もの従業員が働いています。製造ラインが忙しそうに稼動しているその光景を見ると「ああ、ガザの産業も頑張っている!」と思ってしまうのですが、ある機械は「これは精密にできた菓子の重さを量る機会なのだけれども、壊れてしまってその修理に必要な部品がガザに入ってこない」ため、稼動していませんでした。ある部屋には、他の機械も含めて「この部品がなくなったら稼動できなくなり、多くの種類の菓子が製造できない」という貴重な部品類が並べられていました。また、小麦粉などの材料については、現在は正規で輸入できているものの、封鎖により入ってこなくなるかもしれないという可能性があるため、6ヶ月分を常に貯蔵しているとの事です。
Al Awdaは、以前は商品をヨルダン川西岸に輸出していました。その数は毎日10トントラック2台にも登ったそうです。しかし現在は、西岸に輸出できなくなり生産量が減ったこと、また電力不足もあって工場全体が週3~4日しか稼動していない状態との事です。ガザでは今も、3日のうち2日はそれぞれ8時間の停電が続いています。これは、発電所を十分に稼動させるための燃料がガザに入ってこないことが原因です。また、電力不足は工場だけでなく、販売する側にも影響を及ぼしています。工場の外には、何百ものアイスクリームの販売用のケースが積み上げられていました。これらは全て、小売店から戻ってきたものです。「ほとんどのお店は、定期的な長時間の停電中、発電機を稼動させるだけの燃料を買うことができないの。冷凍庫に電気が通っていなければ、その間にアイスクリームは溶けてしまい売り物にならなくなってしまうから、売ることを諦めるのは当然ね」とマナールさんは言います。Al Awdaはガザでアイスクリームを製造している唯一の工場。ココナッツチョコレートがかかったバニラのアイスクリームを試食させてもらいましたが、とても美味しく、これらが販売される機会がないとは何とも残念です
そんな中、マナールさんは誇らしげにあることを教えてくれました。「私たちの工場では、女性を積極的に雇用しているのよ。また、この近くの難民キャンプの住民を優先して雇用しているの」と。確かに、女性たちがおしゃべりをしながら楽しそうに、完成したお菓子の選り分け作業や梱包作業をしている様子が見られました。「ガザでは女性を雇っている工場はここだけなの?」と聞くと、マナールさんは笑って「そうよ。でも第一に、ここまで規模の大きく多くの従業員が働いている工場は他にないわ」と教えてくれました。ガザの産業は、9割が壊滅していると言われています。原材料が入ってこない、生産しても輸出ができない、そして工場そのものがイスラエルによる攻撃で破壊されてしまったという産業も少なくありません。Al Awdaの工場は、ガザの中でも大きな工場が並ぶ通りにあるのですが、周りには破壊されたままの工場も多く見られます。この産業の壊滅により、ガザでは多くの人々が失業しているのです。2011年6月、UNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)は、2010年後半のガザの失業率が45.2%と「世界で一番高い」状態にあると発表しました。封鎖による経済状況の悪化が続く中、Al Awda工場は精一杯にガザ産のものを製造しようとしています。その姿には逞しさすら感じました。「幼稚園のプロジェクトで、うちのビスケットを使ってもらえることは、本当に嬉しく思っているの。より多くの人が仕事ができるし、それにガザの子どもたちにはガザ産のものを食べてもらいたいから」。マナールさんのその言葉を、次回幼稚園を訪問する際には子どもたちにも伝えたいと思います。
この活動への寄付を受け付けています!
今、日本全国で約2,000人の方がマンスリー募金でご協力くださっています。月500円からの支援に、ぜひご参加ください。
郵便局に備え付けの振込用紙をご利用ください。
口座番号: 00190-9-27495
加入者名: JVC東京事務所
※振込用紙の通信欄に、支援したい活動名や国名をお書きください(「カンボジアの支援」など)。
※手数料のご負担をお願いしております。
JVCは認定NPO法人です。ご寄付により控除を受けられます(1万円の募金で3,200円が還付されます)。所得税控除に加え、東京・神奈川の方は住民税の控除も。詳しくはこちらをご覧ください。
遺産/遺贈寄付も受け付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。