\n"; ?> JVC - ガザ:ハンユニス栄養センター「知識と行動」 - パレスチナ最新情報

ガザ:ハンユニス栄養センター「知識と行動」

パレスチナ現地代表 福田 直美
2010年5月26日 更新
どの食べ物にどんな栄養が含まれる?どの食べ物にどんな栄養が含まれる?

JVCがガザ地区で協力している現地NGO「人間の大地」のハンユニス栄養センターでは、栄養失調の子どもたちを改善させるため、栄養治療食の提供やお母さんたちへの個人カウンセリングのほか、教育にも力を入れています。子どもたちは週3回通うこのセンターで栄養食を2回採りますが、その間にお母さんたちへの講習が行われます。内容は様々ですが、この日は「どの食べ物にどのような栄養があり、どのような効果を与えるか」の講習が行われました。

初めての栄養食を食べるオマール君初めての栄養食を食べるオマール君

オマール君(8ヶ月)は、センターで栄養食を食べるのは今日が初めてです。数日前、初めてセンターにやってきて検査を受けた時、お母さんには栄養に関する知識の「テスト」が行われました。どんな食べ物にビタミンが豊富に含まれているか、どんな食べ物が鉄分やビタミンを増やすのか、どのタイミングで鉄分を与えるべきか、食事をさせるときの子どもの体勢について、また子どもに日光をあてさせる時間について、など様々な質問に選択で答えを選ぶようになっています。オマール君のお母さんの解答は、残念ながらその多くが間違っていました。「栄養失調の改善には、“知識”と“行動”が大切なの」と説明するハンユニス・センター長のハナンさんは、続いて、他のお母さんの解答の「ビフォア」「アフター」を見せてくれました。まず、2ヶ月前にセンターに始めてきた時の解答。オマール君のお母さんのように、半分以上が間違った答えです。しかし、2ヶ月経って子どもの状態が良くなった現在の解答を見ると、なんとパーフェクト!ハナンさんは、「すごいでしょう?もっとすごいのは、お母さんの努力がきちんと子どもの栄養失調の改善に繋がっていることなのよ」と嬉しそうに子どもの身長、体重などのデータを見せてくれました。

子どもたちが小さな口で少しずつ一生懸命に栄養食を食べる様子を見た後、この日はセンターに来ていなかったスンドスちゃん(14ヶ月)の家庭を訪問しました。栄養センターに通い始めて1ヶ月。スンドスちゃんのお母さんは、センターに来るまでは一日何回食事を与えればよいのかなどわからなかったそうです。しかし指導のおかげで、今では食事の回数を増やし、家庭でもセンターで教えられたように調理するように心がけ、スンドスちゃんの体重は増え始めました。また、1ヶ月前は8.5%だったヘモグロビン値は9.8%にまで改善されました。「人間の大地」では9%以下を貧血の基準としているので、スンドスちゃんは貧血状態が治ったと言えます。お母さんは「以前より強くなったし、よく動くようになり、何より食事を楽しむようになった」とスンドスちゃんの様子を嬉しそうに語ります。このお母さんは、センターで得た知識を義理の姉妹に伝えているそうです。「人間の大地」では、センターで学んだことを家庭や地域でできるだけ多くの人々に伝えていくことを勧めています。そうすることで波及効果が生まれるのです。台所では、JVCが配布している乾燥食材がきちんと保管されていること、適切に調理されていることも確認できました。お父さんはスンドスちゃんの状態がよくなったことに対して、繰り返し感謝の気持ちを伝えてくれました。

スンドスちゃんのお母さんは、乾燥食材を使って作った栄養食を見せてくれたスンドスちゃんのお母さんは、乾燥食材を使って作った栄養食を見せてくれた

乾燥食材についてセンターで聞くと、子どもたちのお母さんは皆、その内容や使い方を答えることができ、「野菜と一緒に調理してスープにしている」という声が多く上がりました。ただし、この日センターに来ていた17人の子どものうち9人の子どものお母さんが「お金がないので野菜を買うことができない」と言います。お父さんが仕事をしているのは、17人中たったの3人です。どのようにして食料を得ているのかと聞くと、多くの人が「親戚に頼っている」と答えました。また、調理用ガスがないため、庭で木を燃やして調理をしているというお母さんもいました。「軍事侵攻で家が壊されたままで、今は親戚の家の小さなスペースを間借りしている。プライベートも自由もない。刑務所に住んでいるようだわ」というお母さんもいます。1人が話し出すと、他のお母さんも次々と同じような悩みを口にしました。

お母さんたちは、栄養指導員の質問に元気に的確に答える お母さんたちは、栄養指導員の質問に元気に的確に答える

「人間の大地」代表のイテダルさんによれば、「最近、親につっかかるような態度が子どもたちの間に見られるようになった」と心配します。一向に良化の兆しが見えない経済状況の中、仕事が見つからず家庭を支えることができないお父さんに対して、子どもたちがそれを責めて不満をぶつけることが増えてきたそうです。「以前はこんなことはなかった」とのこと。社会状況が人々の心理にも影響を与え、人々の鬱憤がたまっていく、それが子どもたちにまで起こっていることが心配されます。そしてガザの人々は、この状況が、ガザ内外への物資や人の移動の制限により引き起こされているということを知っています。先の見えない厳しい状況が続きますが、センターに通うお母さんたちの「知識」と「行動」が子どもたちの健康状態の改善につながり、それが少しでも家族を元気付けていく支えになればと願います。


この活動への寄付を受け付けています!

月500円からのマンスリー募金で支援する

今、日本全国で約2,000人の方がマンスリー募金でご協力くださっています。月500円からの支援に、ぜひご参加ください。

郵便局から募金する

郵便局に備え付けの振込用紙をご利用ください。

口座番号: 00190-9-27495
加入者名: JVC東京事務所

※振込用紙の通信欄に、支援したい活動名や国名をお書きください(「カンボジアの支援」など)。
※手数料のご負担をお願いしております。

JVCは認定NPO法人です。ご寄付により控除を受けられます(1万円の募金で3,200円が還付されます)。所得税控除に加え、東京・神奈川の方は住民税の控除も。詳しくはこちらをご覧ください。

遺産/遺贈寄付も受け付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。