現在ガザ経済を支えているもの、それはエジプトとの境界線にいくつも掘られているトンネルです。イスラエルのガザ封鎖政策によりあまりにも物資の足りない状況下、エジプトからトンネルを経由して商業物資を密輸することで、なんとかガザの人々は生活を補っています。
しかし、それはもうすでにメディアにも取り上げられ、公然の秘密と化した事実。この密輸が本当にガザの人たちの生活のためになっているのかどうか、非常に興味深い話を現地で聞きました。
JVCが栄養強化牛乳とビスケットの支援を行っている幼稚園のうち2つは、ガザ南部のラファ(エジプト境界線に接する地域)にあります。そのうちのひとつで園長先生から聞き取った話によるとこうです。
「トンネルでの商売が始まって、特にこの地域では貧富の差が激しくなったの。トンネル商売に関わっている人たちは、巨額の富を得たわ。そしてトンネルを通ることで、物資が人々の手に届くころにはとても手の届く値段ではなくなってしまった。これまで何とか普通の生活を維持していた人たちが物を買えなくなり、物価の高騰でこれまでよりも貧しい人たちが増えてしまったの」
よくよく聞くと、いろいろなからくりが見えてきます。トンネル建設の投資に対する見返り、いつ崩壊するかもしれないトンネルの内部で働く労働者の賃金、そしてトンネルから入ってくる物資にかかる関税など、これらすべてが物の価格を押し上げ、中産階級の現金を吸い取り、一握りの人が裕福になり、貧困層が増大し、市場に物が売れ残る。実際、ガザの市場やお店には物がたくさんありますが、それらが価格競争を引き起こさずに、消費者のもとに届かないという、非常に奇異な現象です。
この現象の悲しさは、貧しい家庭に行くとよくわかります。もし市場に売れ残る物が貧困層にうまく分配されたとしても、充分に足りることはないでしょう。限られた輸入品すらも貧困層の生活を満たせない悲劇。トンネルは人道危機を解消することはなく、それゆえに人道支援に頼る人は未だにガザ人口の7割とも8割とも言われているということです。
経済の破綻という言葉を使うには、あまりに人為的かつ強制的なこのトンネル経済スパイラル。冗談かどうかわかりませんが、トンネルで大量の携帯電話がガザに密輸されたことで、カイロの携帯電話の値段が上がったという話も他の人から聞きました。
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