イスラエルのNGO「Breaking the Silence(沈黙を破る)」が企画するヘブロンH2エリアのツアーに、休日を使って参加しました。Breaking the Silenceはイスラエル軍の元兵士たちが兵役中の証言を集めることでこの紛争の現状を伝え、市民に考えてもらうことを目的に作られたNGOで、元兵士をツアーコンダクターにしたツアーも行っています。

ヨルダン川西岸地区南部の中核都市ヘブロンは、パレスチナが管理するH1エリアと、イスラエルが実効管理するがパレスチナ人の住むH2エリアにわかれていて、そのH2エリアの中にさらにイスラエル入植地があります。もうこの時点で、「ちょっと待って、それどういうこと?」となるのが普通でしょう。行くまでは僕もそうでした。そしてH2エリアに足を踏み入れると、理解するきっかけを掴むどころか、さらに多くの疑問符によって打ちひしがれる結果になりました。

H2エリアはかつて繁華街だった街の中心地を含みますが、そこはもぬけの殻でした。イスラエル軍が道路という道路を完璧に支配しており、H1からの進入を阻む検問所や障害物は90箇所以上を数えます(※)。かつてたくさんの人で賑わっていたであろう商店街を歩きますが、店はすべて金戸で閉められ、ユダヤ教・ユダヤ民族のシンボルであるダビデの星が多くの店の戸にスプレーで描かれています。多くの家には投石を防ぐための金網が窓に設けられています。道を歩く人よりも重装備の兵士の方が多く、否が応でも鼓動が速くなります。現実を知るためのツアーでしたが、僕たちをアラブ側の味方だと思ったユダヤ系の中年女性がわざわざ車から窓を開けて罵声を浴びせてきます。多くの攻撃が空からいきなり降って来るガザと違い、武装した入植者がいつ隣から攻撃を始めるかわからないという慢性的な危機感がこの街を覆っているように見えます。そしてここに駐屯する兵士は入植者を守るために存在し、入植者の攻撃を止めるためではないとのことです。
ツアーコンダクターは言います。
「17万人ほどのパレスチナ人が住むこのヘブロンに、500人の入植者が500人の兵士に守られて住んでいる。入植者が持っている土地はヘブロンの3%でしかないが、3%に住む人を守るためにはそれを取り囲む20%の土地が必要だというのがイスラエル軍の出した答えだった」
そしてその20%の土地が目の前の死んだ街と言うことか・・。

ツアーの途中にユダヤ人入植者の人に話を聞くと、1929年に大虐殺を行いユダヤ人を追い出し入植したのはアラブ人の方で、それ以前の土地を取り返すことは当然の行為だといいます。80年間世代を越えて欝憤をため込んだユダヤの人たちにとって、生まれてこのかたこの土地にしか住んだことないアラブの人たちの心情は同情に値しないようです。
強い被害者意識と、抱え込んだ大きなトラウマと、お互いの存在に対する恐怖心、それらがこのエリアの空気の中にまで漂っていました。
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