赤く囲ったのがヤブルード村。紫色の部分が入植地、×印はロードブロック(障害)。ラマッラーからは、西にある村々を抜けてこなければならない
このモスクの一角が巡回診療に使われるヤブルード村は、ラマッラーから10キロメートルほど北にある村です。この日は、パレスチナ医療救援協会(PMRS)の巡回診療に同行させてもらい、村を訪問しました。PMRSは毎週一度この村に巡回診療に来ており、隔週で通常の巡回診療と女性のための診療を行っています。診療所となっているのは、モスクの一角。このために村の人たちが協力して、モスクの内部を改造したそうです。
毎回、40〜45人の人々が、この巡回診療に訪れます。PMRSでは家族ごとに、家族構成やかかった病気、治療などについて詳細に記録するファイルを作っており、このクリニックにはこの村の全ての家族のファイルがあるとのことです。待合室では女性たちが談笑しており、ある女性は「PMRSはこの村に毎週来てくれるわ。ドクターは村の人たちみんなのことをよく知っているから信頼できるわ」と嬉しそうに話してくれました。診察室にお邪魔させてもらうと、医師は、患者さんの体の具合だけでなく、その人のご主人や子どもなどについても、どうしているか、元気か、仕事はどうか、など聞いていて、とても和やかな雰囲気です。巡回診療では、薬が処方される時のみ3シェケル(約70円)を払います。
手作りのお菓子を食べながら、活動について話し合う女性グループのメンバー私たちは、ラマッラーからいくつもの村を抜けて、隣村のエイン・シニヤからは農業用道路を通って村に入りました。「入植者が通る道路を使えば、この村までは5分で来られる。ただし、その道路から村へ入る入り口は塞がれているから入れないんだよ」と、PMRSのイスカッフィ医師は教えてくれました。村の中を案内してもらいます。人口約600人の小さな村で、古く趣のある家が多く、とてものどかな雰囲気です。村には小さな小学校しかありませんが、路上や空き地で子どもたちが遊んでいる姿が見られました。
入植者の通る道路との境界まで行くと、目の前にオフラという大きな入植地が見え、すぐ横には監視塔が立っています。道路を挟んで反対側には、シルワドという大きな村があり、中学生以降はこの村にある学校に通うそうです。ただし、入植者道路を横断することは不可能なので、ヤブルードの人々はその下を抜けるトンネルを通って買い物や学校に行くのです。しかし、このシルワドへと抜ける道にも時々兵士が立ち、人々の通行を妨げることがあるとのこと。村のある女性は、「シルワドにあるクリニックが一番近いのだけれども、通ることができず、ビル・セードまで行かなければいけないこともある」と言います。ビル・ゼートまでは車で約15分、病院があるラマッラーまでは30分ほどかかります。
隣のシルワド村へ続くトンネル。この道の両脇と、この上の入植者が通る道路に面する村の土地にもフェンスが立っている巡回診療にお邪魔した後、この村の女性グループを訪れました。女性グループができたのは20年ほど前。今は約35人の女性たちが参加しています。この村の農地は狭く、農業を営む家族はほんの少しとのこと。村の男性について聞くと、約250人いる男性の中で仕事を持っている人たちは、その1/5の50人弱とのことです。村の中に仕事はないので、他の村やラマッラーに働きに行っていますが、それでも平均の月の収入は1,500NIS(約35,000円)だそうです。農業による収入がほとんどないことを考えれば、この村全体の人々の収入はわずかなのです。
それでも、女性たちは元気です。西岸の村でいくつか女性グループを訪問するとよく見られることなのですが、女性たちには、自分たちで収入を得るために例えばどんなものを作れるかという様々なアイディアはあって、またその作り方も知っているのですが、彼女たちもやはり心配なのが、「作ったところでどうやって売るか」なのです。このグループの女性たちはそれを自分たちでよくわかっており、“売ることができていない”手工芸品などを見せてくれました。それでも、場所は広い庭とキッチンもついた建物の一階を村の人から提供してもらっていて、寄付された冷蔵庫や使われていないミシン、村の人たちが共同で購入した大きな鍋などがあり、女性たちはそれらを生かすことはできないか、と盛り上がっていました。女性たちの頑張りが、厳しい状況にあるこの村の支えになっていくことを期待したいと思います。
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