色とりどりのオープンテントエルサレムの郊外ラトルンにあるキリスト教会の敷地で、「スルハへの道」と名づけれたイベントが8月26日から3日間行われました。スルハとはアラビア語で「和解」を意味し、イスラム社会で(部族間などで)紛争が起きたときに、地域の宗教者が仲介人として当事者間の和解を促す制度をも意味します。この制度は現在でも、司法制度が充分確立していないパレスチナ全土で、また、イスラエル国内のパレスチナ人居住地区でも活用されています。7年目を迎えるこのイベントは、イスラエル・パレスチナはもちろん海外からもユダヤ教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、仏教徒も加え、数千人が参加しました。名だたる宗教学者や平和構築関係者や、特別許可を得ることが出来た西岸のパレスチナ人数百人も参加しました。3日間で何十ものワークショップやフォーラムが開催され、宗教の異なる人達が寝食を共にし、自分達の体験を伝え共有しながら、お互いの理解を深めていきました。
35度を超える猛暑に見舞われた最終日に会場を訪れました。入り口で入場料と引き換えにイベントロゴの入った布製のブレスレットを受け取り敷地に入ると、色とりどりの日除けの布を張ったオープンテントの即席会議スペースや宿泊用のテントが点在しています。とりあえず会場を見て廻ろうと歩き始めたら、仏教僧侶の服装に身を包んだ女性が現れました。「これから仏教僧侶によるワークショップがあるけど、一緒に来ない?」と誘われ、まずはそちらにジョインすることにしました。
それぞれの経験を共有するワークショップこのイベントに毎年インドから来ているというチベット仏教僧侶のワークショップには10人ほどが集まり、「仏教徒から見て、ユダヤ教というのは、排他的に見えるか?」、「原理主義の問題は」、「頭で理解することと、心が感じることの違い」などの質疑応答に沸きました。一神教に比較し、寛容であるとされる仏教に関心のある人がイスラエルでは増えていて、ユダヤ教徒でありながら仏教の教えを取り込んだ「ブージュー」と言われる新しいユダヤ教の流れもあるそうです。何千年も前の教えを現在社会の抱える問題に適用するための模索は、どの宗教にとっても重要な課題なのです。
宗教を超えて踊る参加者達メインステージでは、平和のメッセージを込めた音楽ライブが行われていました。歌手の掛け声で、イスラエル人とパレスチナ人が立ち上がって一緒に踊り始めました。特別な許可がないとエルサレムにもイスラエルにも来ることが出来ないパレスチナ人の中には生まれて初めて、兵士以外のイスラエル人に会う人もいます。イスラエル人にとっても、パレスチナ自治区のA地区と呼ばれる都市部に入ることが法律で禁止されているため、パレスチナ人と出会える機会は限られます。インターネットで知り合って、共同でプロジェクトを始めることを決めて、この会場で初めて会うことが出来たというイスラエル人とパレスチナ人にも会いました。一緒に踊る姿を見ながら、3日間寝食を共にすることで、お互いに対する不信感や警戒心から少なからず解放されたのだろうと感じました。
音楽ライブの次は、宗教者によるフォーラムが開催されました。パネリスト達は、イスラム教、スーフィー教、ドゥルーズ教、キリスト教、ユダヤ教と多彩な顔ぶれです。それぞれの宗教の持つ寛容や平和の教え、そして謝罪や許しとは、などについて、話し合いました。パネリスト達のほとんどは、宗教が対立を生むことがあっても、宗教の平和の教えは紛争解決に役立つという考えを持っています。印象に残ったのは、ユダヤ教のラビが「自分の息子を含め、若者の宗教離れ」が心配だという発言をしたところ、スーフィー教の女性シャイフが、「それは宗教をどのように捉えるかによる」と反撃をしました。彼女は「宗教が知識として教えられ頭で考えるものなら、宗教離れがあっても不思議ではない。本来神の存在とは頭で考えるのではなく、五感で感じるもの。どうやって感じるかを教える必要がある。そして、今ここで宗教の異なる私達がこうやって一同に会しているそのことが、奇跡であり、神の思し召しによるものだということを感じることが大切」と熱弁し、フォーラムの締めくくりとなりました。
宗教者フォーラムの多彩なパネリスト達相手の人間性の否定が紛争の継続の条件ですが、分離壁建設による相互の切り離しはそれをさらに可能にしています。直接相手に会い、話を聞き、そして議論することなくしてそれを不可能には出来ないのです。このようなイベントが民族間の和解をすぐにもたらすなどと楽観的な過度な期待は危険ですが、少なくとも和解に向けた大切な第一歩となる機会を提供していることは確かだと思います。
この活動への寄付を受け付けています!
今、日本全国で約2,000人の方がマンスリー募金でご協力くださっています。月500円からの支援に、ぜひご参加ください。
郵便局に備え付けの振込用紙をご利用ください。
口座番号: 00190-9-27495
加入者名: JVC東京事務所
※振込用紙の通信欄に、支援したい活動名や国名をお書きください(「カンボジアの支援」など)。
※手数料のご負担をお願いしております。
JVCは認定NPO法人です。ご寄付により控除を受けられます(1万円の募金で3,200円が還付されます)。所得税控除に加え、東京・神奈川の方は住民税の控除も。詳しくはこちらをご覧ください。
遺産/遺贈寄付も受け付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。