女性グループでは現在、刺繍製品の他に、ベツレヘムの特産品であるオリーブ細工を使用した腕輪念珠も製作しています(詳しくはHP記事No.248、No.288へ)。この3人のメンバーは、パレスチナの伝統技術である刺繍と違って新しい技術を一から習得したのですが、今ではお念珠ひとつを10分から15分で仕上げるほどに腕は上がっています。
先月から、サイズを大きく、また結び目も一部変えた形を作り始めました。基本的な結び方は同じなのですが、今まで100個、200個と同じものを作ってきただけあって、新しい形に女性たちは「難しい!」と少し困惑気味のようです。やはり出来上がったものも最初は少々不ぞろいで、「ここの結び目をしっかり作って」「この長さを統一して」と、私も厳しいチェックをすることになりました。
さて、しばらくしてこの3人の女性たちが私に話があるといいます。予想はしていたのですが、「大きくなって難しくなって、時間もかかるようになったから、賃金を上げてほしい」とのことでした。お念珠を1つ製作すると、女性たちは3シェケル(約90円)を得ることができるのですが、それを4シェケルに上げてほしいとの要望です。

どのくらい時間がかかるようになったのかを聞くと、「前は10分から15分だったけれど、新しいものは20分から30分かかる」とのこと。使うオリーブの玉は17個から19個に増え、その分結び目も増えています。「とりあえず私も作ってみる」と挑戦したのですが、そもそも以前の形ですら20分以上かかってしまいました。しかし、思い出せば女性たちも、もともと最初は20分から30分かかり、何度もチェックをして「これじゃダメ」とやり直して、ここまで上達したのです。新しい形も、慣れればそれほど時間がかかるものではなさそうです。また、仕事量と賃金のバランスからみれば、「15分で3シェケル」は刺繍と比べても割りのいい仕事といえるのですが、刺繍の仕事とお念珠の仕事で、あまり差がつくのはよいことではありません。さらに、日本での販売価格(500円)が同じであること、これ以上販売価格を上げるのは難しいことも説明した上で、3シェケルから上げることは難しい、と説明しました。

…などと、3人の女性たちと賃金交渉をしていた時、刺繍のメンバーの女性たちがやってきました。刺繍をしながら話を聞いていた女性たちですが、彼女たちが交渉に参加してきました。それも、私サイドの応援です。「それで3シェケルならいい仕事よ!嫌なら私の娘が喜んでやるわ」「この商品の刺繍をして3シェケルよ(“しおり”を見せて)。私が今作っているこの商品は、こんなに刺繍量があって20シェケル」と、作業中の刺繍をお念珠の女性に見せました。それを見たお念珠メンバーの女性たちは、刺繍製品を手にとって見ながら、「ええ?じゃあこれはどのくらい時間がかかるの?」「一ヶ月でどのくらい仕事をするの?」など、刺繍の女性たちに次々と質問しています。しばらくして、「この仕事を続けたい。結び目が早くうまくできるようになるように、頑張るわ」と前向きな返事が返ってきました。女性たちの笑顔に、私も一安心です。刺繍の女性たちの言葉は説得力があったようです。
「この賃金を上げたら、もちろん刺繍の賃金も上げなきゃいけないわよ!」という刺繍メンバーの冗談(?)にまたドキッとしたりもしましたが、楽しそうに笑いながらおしゃべりに戻る女性たちを見て、また励まされた気持ちになった日でした。
※「平和念珠」は1つ500円で販売しています。
・問い合わせ先:アーユス仏教国際協力ネットワーク
・TEL: 03-3820-5831
・日本国際ボランティアセンター (担当:藤屋)
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