「食べ物も、日用品も、子どもの学校に必要な物だって、みんな高くなっちゃって」「セルビス(乗り合いタクシー)も値上げしたのよ。街中まで往復で1シェケル(約30円)上がったんじゃあ、買い物も大変だわ」。女性たちは口を揃えて、ここ最近の物価高を訴えました。「食糧の高騰は世界中みたい、ニュースでも言っているじゃない」「特に燃料がね」なんて、なかなか難しそうなことを言う女性もいます。
ベイト・ジブリン難民キャンプの女性グループのメンバーが、賃金を上げてほしいと交渉してきたのは数ヶ月前のこと。女性たちの賃金は仕事量によって決まります。例えば、刺繍の糸の玉1つ分の仕事で、20シェケル(約600円)を得ることができます。例えば、ベツレヘム・バッグ(写真)を仕上げると刺繍担当は35シェケル、縫製担当は15シェケルを得るのです。女性たちのリクエストは、「玉1つ分の賃金20シェケルを、25シェケルに上げてほしい」というものでした。
パレスチナには、刺繍製品を制作している女性グループはたくさんありますが、他の女性グループに比べれば、この女性グループの賃金は高いといえます。土産物屋などで安い商品を見ることもありますが、それはきっと、低い賃金で働いているからなのでしょう。質はあまりよいものではないことが多いです。ベイト・ジブリンの女性グループでは、「商品として価値の高いものを作ること」と品質の高さも前提に、仕事量に見合った賃金を払うということで賃金を設定しているのです。
この値上げ交渉時には、日本でも刺繍製品は決して安いものではないこと、それでも品質の良さから買って下さる方がいること、パレスチナを応援したいと買って下さる方がいること、日本ではボランティアさんたちが頑張って販売をしてくれていること、などを女性たちに説明しました。「物価が上がっているのは日本も同じだよ」と言うのは、毎日、家族のために家事も仕事も頑張っている女性たちには厳しいですから…。日本での販売価格を上げることは難しいので賃金は上げられないけれども、生産量が増えて収入が上がるよう努力しよう、ということで女性たちは笑顔で納得しました。
しかし、定期的にある程度の量を購入してくれる「売り先」を見つけるのは容易ではありません。本当は、女性グループのメンバーたちが自ら市場を開拓していければいいのですが、彼女たちはエルサレムにすら出ることができないのです。「そうそう、ナオミ(私の名前)が頑張ってくれるわよ」と陽気に言われて、「人任せにするなー!」と心の中で叫びたくもなりましたが、大きな声で元気に笑う女性たちを見て、注文量を増やすことができるよう、彼女たちと一緒に頑張っていきたいと思いました。まずは、ちゃんとスケジュールどおりに仕事を終えること、品質のいいものを作ることも大切です。そんな私の声を聞いているのかいないのか、女性たちはいつの間にか、世間話に花を咲かせていました。


さて、刺繍製品に関して女性たちの賃上げ交渉は一段落してホッとした私ですが、それから2ヶ月後、もう1つの賃上げ交渉が待ち受けていました…(続く)。
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