
ハーレット・アル・ハレーレ村の次にMRS(医療救援協会)の医師たちと向かったのは、そこから3kmほど南の、ナビ・サムウィル村です。180人ほどの小さな村ですが、丘の上にありとても景色がきれいなところです。村の入り口は1つしかなく、その入り口はイスラエル道路、つまり周辺の入植地に続く道路につながっています。
この道路を上がりきったところが村の入り口なのですが、そこには美しいモスクが立っています。ところが近づいてみると、モスクの入り口は厳重な警備が敷かれており、お祈りに来たユダヤ人がたくさんいるのです。「ここはユダヤ人の聖地だ、とシナゴーグとして改修されたんだよ。今はムスリムの人たちのお祈りの場所は一部で、出入りも限られているんだ」と、村の人が説明してくれました。入り口にはイスラエル警察がおり、人々の出入りをチェックしています。
ハーレット・アル・ハレーレ村と同じく、この村にもクリニックはありません。学校は1年生から4年生までしかなく、5年生以上は壁の向こうとなるベイト・イクサかアル・ジーブまで行かなければなりませんが、どちらも遠い道のりで、しかも検問所を越えていかなければなりません。

話をしてくれた村の人は、家の一部を見せてくれました。「この家には私たちの家族、8人しか住んでいない。でもある日イスラエル警察が来て、なにやら理由をつけて家の一部を壊していったんだ」。一方、この村の敷地内である丘の中腹に、ユダヤ人が最近いきなり家を建てて住み始めました。

村から出るのにはイスラエル道路しかないので、イスラエルの黄色のナンバープレートの車でしか降りることはできません(パレスチナは緑色のナンバープレート)。この黄色のナンバープレートの車は、パレスチナ人の場合はエルサレム居住権を持っている人でなければ持つことができないのですが、この村の5%の人しか、エルサレム居住権を持っていないのです。そのためほとんどの人たちが、今はこの丘の上の小さな村から出ることができない生活をしているそうです。イスラエルの祝祭日などがあり多くのユダヤ人がこのシナゴーグを訪れるような日は、この村の入り口に臨時の検問所ができ、村の人たちの通行が一切遮断されることもあるそうです。このように日常生活が困難な状態のため、この5年間ですでに10家族がこの村から西岸に移ったそうです。水や電気はエルサレム市から供給されますが、払うことはできません。村の中に仕事もなく、エルサレム居住権がない人たちはエルサレムにも働きに行くこともできないのです。西岸に働きに行くのにも、「ラマッラーなら往復4、5時間はかかる。しかも、検問所でどのくらい待たされるかわからない。移動にかかる費用を考えたら、毎日働きにいくたびに賃金の倍を失うようなもの」なので困難だそうです。
2人の医師は、この2つの村での巡回診療の可能性を話し合っていましたが、特にラモットの検問所は厳しいので、医薬品や医療器具などを持ち運ぶのは難しいのが懸念です。それでも、「ラマッラーから巡回診療に来ることができないから、僕たちがエルサレム側から行くしかない。医薬品などを保管できるようにして、月1、2回でも巡回診療に来ることができるように調整したい」と言います。「医療活動を提供するのももちろんだけれども、エルサレムからも西岸からも孤立させられる状況であっても、この村が決して忘れられていないということを示すことで、村人たちを支えたい」。MRSの活動、そしてこの村の状況を、これからも見守って行きたいと思います。
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