ナクバ記念日の5月15日、大掛かりでショッキングなアートの展覧会が開催されました。その名も「魂の帰還」。

ナクバとは、イスラエル建国に際して、パレスチナの土地を追われ、難民として離散の運命を辿ったパレスチナ人の身に起きた「大惨事」を意味します。故郷の土地から切り離され、戻ることを許されず、思いを残したまま、天国にも地獄にも行けず彷徨っている魂たち。それを表現したのが、このアートです。蝋で作られた3千体のパレスチナ難民の人形が吊るされ、宙に浮いています。

このアートはイギリス人アーティストのジェーン・フレアがベツレヘム、エルサレム、ヨルダン、レバノンのパレスチナ難民の若者と共同で作り上げました。パレスチナ難民の若者は自らの祖父や祖母、家族や知人から、実際にナクバ発生当時に起きたことをインタビューし、また、当時の服装についても調べたそうです。それをもとに、一体一体の小さな蝋人形が作られました。それぞれの人形は実在したモデルがいて名前もあるそうです。そして、彼らの思いが込められました。
パレスチナ人にとって、ナクバとは60年前に起きた過去の出来事ではありません。パレスチナ人は60年経った今も、故郷に帰ることが許されないのです。その多くは今でも劣悪な環境の難民キャンプに暮らしています。美しい故郷への思いは、親から子へ、そして孫へと語り継がれているのです。
さらに、パレスチナ人が住むことができる僅か2割の土地(現在はパレスチナ自治区と呼ばれる)も、イスラエルにより40年間占領されたままです。そこでは、生活の全てをイスラエル軍に管理されています。特に移動の制限の厳しさは想像をはるかに超えます。多くの人が毎日の通勤、通学、通院にもイスラエル軍の許可や検問所の通過が必要で、ましてや彼らが首都とし聖地とするエルサレムに行くのは特別な許可が必要で、取得は難しいのです。だからこそ余計彼らのパレスチナへのそして聖地エルサレムへの思いが募っていくのでしょう。
ジェーン・フレアは、展覧会の開催の言葉でこのように述べていました。「このアートはパレスチナ人たちの手で作り上げたもの。でも、今日、エルサレムでのオープニングを彼らと共に祝うことができない。彼らはエルサレムに来ることが出来ない。それは距離のせいではないのです。ラマッラーはここから15キロ、ベツレヘムは10キロ、ガザも70キロしか離れていない。彼らがここエルサレムに来られないこと、それが今でもナクバが続いているということを象徴的に表しているのです」
パレスチナ人のナクバは、イスラエルを始めとする国際社会がナクバの事実を認め、難民の帰還権を認め、占領が終結する日まで続きます。それまで彼らの魂は彷徨い続けることでしょう。一日も早く、パレスチナ人の魂が安らかに帰還できることを祈りたいと思います。

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