
5月8日、イスラエルが60周年の独立記念日を祝う中、イスラエル国籍を持つ「48年パレスチナ人」(1948年に後のイスラエルに留まったパレスチナ人)は、ナクバ・マーチを開催しました(ナクバとはパレスチナ人に起こった1948年戦争前後に土地を追われバラバラになり戦争が終わっても故郷に帰れない「大惨事」のこと)。会場となったのは、ナザレ近くのかつてサフリーヤ村があった場所。現在は、国立公園となっています。

サフリーヤ村は1948年7月にイスラエルの戦闘機に爆撃され、村人は近くの村に逃げました。一度は村に戻ったものの、1949年1月に近くの村に追放されたそうです。イスラエルは村を軍用地と指定し、村は跡形もなく破壊され、直後にジッポリとハソレイムの2つの農業入植地が建設されたそうです。残りの土地はジッポリ国立公園となり、杉が植林され、かつての村の面影は、杉林の中でも生き続けるサボテンだけになりました。サフリーヤ村の人達は、イスラエル国内に25万人いると言われる、国内避難民の運命を辿ったのです。
今日のマーチには、イスラエル全土から、48年パレスチナ人、特に近隣の村に住む国内避難民が家族連れで大勢集まってきました(主催者によると過去最大の2万人以上が集まったそうです)。彼らはパレスチナ国旗を掲げ、カフィーヤをまとい、失われた彼らの村の名前を書いたプラカードを持って歩きました。

公園の中に、ステージが設置され、プラスチック椅子の観客席も用意されていました。主催者によるスピーチ、小学生によるスピーチや、コンサートで構成されたイベントはスピーチも歌も全てがアラビア語で行われました。大人も小学生もスピーチで、難民の帰還権、国内避難民の権利、48年パレスチナ人の権利を繰り返し要求し、会場から何度も拍手が沸いたのでした。とは言っても、全体の雰囲気はのんびりしていて、家族がピクニックを楽しんでいる様子でした。そんな風景を見ながら、私はイスラエルに住む48年パレスチナ人の持つパレスチナ人としてのアイデンティティの強さに圧倒されたのでした。
イスラエルに住む48年パレスチナ人国内避難民は、追われた村のすぐ近くに住みながらも、村に戻ることが出来ずに60年を過ごしてきました。イスラエルが彼らの帰還を認めない最大の理由は、彼らの帰還を認めたら、今では国連に登録されているだけでも400万人以上に膨れ上がったパレスチナ難民の帰還を認める布石になってしまうことを恐れているからだと言われています。つまり、48年パレスチナ人国内避難民も、他のパレスチナ難民と同じ運命を背負っているのです。
しかし、1991年のマドリッド和平会議は、48年パレスチナ国内避難民について一切触れていません。そのことについて抗議する形で、1992年に国内避難民問題を提起する活動が始まりました。さらにオスロ和平合意でも自分たちの権利どころか存在が無視されたことに危機感を覚え、1995年に30以上の破壊された村が共同で「国内避難民の権利保護民族委員会(National committee for the Defence of the Rights of Internally Displaced Persons in Israel)」を設置しました。
さらに、このような活動をネットワークしアドボカシーを行う「国内避難民の権利保護協会(Association for the Defence of the Rights of Internally Displaced Persons in Israel – ADRID)」も組織されました。ADRIDは今回のマーチを主催したり、各地でワークショップを開くなど、積極的な活動を展開しています。
イスラエルに住む48年パレスチナ人国内避難民の問題が、イスラエルの人々、パレスチナの人々、さらに国際社会に共有され、和平交渉にも取り上げられることを願います。
この活動への寄付を受け付けています!
今、日本全国で約2,000人の方がマンスリー募金でご協力くださっています。月500円からの支援に、ぜひご参加ください。
郵便局に備え付けの振込用紙をご利用ください。
口座番号: 00190-9-27495
加入者名: JVC東京事務所
※振込用紙の通信欄に、支援したい活動名や国名をお書きください(「カンボジアの支援」など)。
※手数料のご負担をお願いしております。
JVCは認定NPO法人です。ご寄付により控除を受けられます(1万円の募金で3,200円が還付されます)。所得税控除に加え、東京・神奈川の方は住民税の控除も。詳しくはこちらをご覧ください。
遺産/遺贈寄付も受け付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。