西エルサレムにあるユダヤ神学校メルカズ・ハラブで8人の生徒が犠牲になった乱射事件の犯人が、東エルサレムのジャバル・ムカッバル地区の出身とわかりました。出身者が西岸でもガザでもなくエルサレム出身だったことにイスラエルの多くの人が戸惑いを感じているようです。何故このような事件を起こしたのか。彼の育ったジャバル・ムカッバル地区の状況をまとめてみました。もちろん、どのような背景があったとしても、一般市民を巻き添えにする暴力は許されるものではありませんが。
旧市街を含む東エルサレムは1967年の第三次中東戦争後に、イスラエルのエルサレム市に行政併合されました。国際司法裁判所の勧告的意見にもあるように、国際社会はイスラエルによる東エルサレムの併合を認めず、東エルサレムを現在も軍事占領地とし、占領者による住民の移住を違法としています。しかし、「併合」から40年、エルサレム市は「統一されたエルサレム」をスローガンに東エルサレムの「ユダヤ化」を促進してきました。東エルサレムにユダヤ人居住区(入植地)を建設しユダヤ人を移住させることで人口的に圧倒的多数(7割以上)を保とうとしていると言われます。現在この「ユダヤ化」は急ピッチで東エルサレムのあらゆるパレスチナ人地区で進められています。ジャバル・ムカッバルもその対象地区です。
ジャバル・ムカッバルは人口約1万人のパレスチナ人居住区。多くのパレスチナ人居住区がそうであるように、道路や歩道や下水道も充分整備されておらず、電気や電話は通じていますが問題があっても西エルサレムから修理工は滅多に来ないそうです。犯罪があっても警察は関与したがらず、緊急事態でも救急車の到着は遅いとも言われます。公立学校の教室の数が足りず、一部は2シフト制度を取り、それでも学校に通えない子供がいます。市による建築ゾーン計画がないため、新しい家屋建設許可を得ることは難しく、多くの家屋は無許可で建築・増築し、当局から破壊命令が出され、中には破壊された家屋もあります。ジャバル・ムカッバルの住民のほとんどは、エルサレム市の永住権を持ち、市民としての義務と権利を持ちます。市政に参加する権利もありますが、ほとんどの人は併合を認めてないことを理由にボイコットしているそうです。多くは道路を挟んだ西エルサレムまたは南に建設されたユダヤ人居住区に職を求めています。また、東に建設された壁のため、西岸への行き来は困難になりました。
このジャバル・ムカッバルで、「ノフ・シオン(エルサレムの眺望)」プロジェクトが進行しています。その名前の通り、17万平方メートルの広さの「新興住宅地」一帯はエルサレム旧市街やオリーブ山など、ユダヤ教と関連深い名所を眺望できる高台にあり、550の住宅(多くが5階〜6階建て)、ショッピングセンター、カントリークラブ、ホテルなども建設が予定されています。1993年の認可後、土地の所有権の問題により建設は延期されていたものの、2003年12月に着工されました。この事業は政府ではなく民間企業によるもので、イスラエルの法律では「合法的」な土地売買に基づくものとされています。すでに第一フェーズの91戸は完成し、主に米国のユダヤ人に売られているそうです。
あるイスラエルのNGO代表は、東エルサレムのイスラエル居住区からパレスチナ居住区へ移動する際に、「第三世界へようこそ」と語りました。同じ市民税を支払っているのにも関わらず、それほど、居住環境の差は歴然としているからです。ジャバル・ムカッバルのような東エルサレムでは、子供の頃からこのような差別を感じながら生活します。
さらには事件から1週間後、このジャバル・ムカッバルに数百人のユダヤ人が集まりました。多くが入植者の彼らは「アラブに死を」と叫び、住宅や車の窓を壊してまわりました。幸いにも住民は衝突を避け、家の中に篭っていたようで、怪我人はほとんどなかったようです。西岸では入植者がパレスチナ人や住居や農地を襲撃することは珍しくありませんが、ここ東エルサレムでも、パレスチナ人は一部のユダヤ人のこのような暴力の対象になっているのです。
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