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エルサレム:メルカズ・ハラブ

パレスチナ現地代表 小林 和香子
2008年3月 9日 更新

3月6日夜、西エルサレムにあるユダヤ神学校メルカズ・ハラブで乱射事件があり、8人もの生徒が犠牲になるという大惨事となりました。一般市民を巻き込むこのような行為は批難されるべきで、犠牲者になった人々に追悼の意を表します。事件直後、メディアでは犯人の情報が混乱していました。ハマス関係者なのか、壁の向こうのパレスチナ自治区西岸からどうやって入って来たのか?ヒズボッラー系の団体が声明を出したとの情報がながれました。その後、犯人は東エルサレムのジャバル・ムカッバル地区出身者とわかりました。何故犯人がこのような行動に走ったのか、そして何故この神学校が狙われたのか、充分な情報はまだありません。そんな中で、このメルカズ・ハラブという神学校が意味するものを振り返ってみました。

メルカズ・ハラブは「宗教的シオニズム」を思想とする神学校です。シオニズムがユダヤ民族の祖国を求める世俗的民族的運動が始まりであったのに対して、宗教的シオニズムはイスラエルの土地(エレツ・イスラエル)が神が古代イスラエル人に与えた土地であり、ユダヤ人はこの土地に対する恒久的かつ奪われることの出来ない権利を持っているという宗教的信条が根本にあります。この神学校の創始者ラビ・アブラハム・クック(Rabbi Avraham Yizchak HaCohen Kook)は、全てのイスラエルの土地に入植することは宗教的ユダヤ人の義務であるとしました。この教えは息子のラビ・ツヴィ・イェフダ・クック(Rabbi Zvi Yehuda Kook)によって、グッシュ・エムニーム(Gush Emnim)という西岸への入植運動に繋がっていきます。グッシュ・エムニームの指導者の多くは、ラビ・クックを師と仰ぎ、またこの神学校で学んだとされます。そしてこの学校の卒業生の多くは「ヒルトップ・ユース」として西岸の丘の占拠に向かい、また入植地の宗教者となると言われています。

宗教的シオニズムの特徴に、兵役を重要な価値としていることもあります。メルカズ・ハラブも兵役予備学校も備えています。そこでは、聖書の勉強、祖国の護衛、イスラエルの土地の返還という3つの戒律の実行に備えられるといわれています。このような兵役予備学校の卒業生は軍の指揮官の道を歩むことも少なくないといわれ、今ではイスラエル軍の将校の3割はこのような思想的背景を持った人だといわれます。

二国家解決案はイスラエルと並んでパレスチナ独立主権国家の設立を目的にしていますが、その実現を脅かしているのが、東エルサレムを含む西岸の入植地です。特に宗教的シオニストが西岸の中心部に建設している(その多くはイスラエル法においても違法だという議論があります)入植地を撤退できるかどうかが鍵を握っています。メルカズ・ハラブは入植地撤退はもちろん二国家解決案に反対姿勢を取っています。学校のウェブサイトに掲載されている代表ラビ・シュロモ・アビネール(Rabbi Shlomo Aviner)のメッセージには、どの土地がユダヤ民族に属するかは神と聖書とユダヤ民族の伝統と歴史に答えがあるとし、イスラエル政府が(イスラエルの土地から)ユダヤ人を引き離すのはとんでもない罪であり、自らの国の中に異国を設立するのはさらなる国家的犯罪で、あらゆる理性と倫理の境界を超越するものであるとしています。さらに、兵士はこのような罪のパートナー、罪を実施する使者、あるいは協力者にならないとしています。

イスラエルもパレスチナも過半数の人々が二国間解決案のもとにパレスチナ独立国家が設立されることを望んでおり、そのために入植地の多くが撤去されなければならないことを理解しています。しかし、イスラエル政府とイスラエル軍に強い影響力を誇る宗教的シオニズム運動は、この解決案の実現に立ちはだかっているのです。


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