現地訪問記(1)【ラオス編】は、こちら
2004年のスマトラ島沖津波被災から10年。現在、JVCはタイ南部パンガー県で暮らすビルマ人労働者とその家族の健康を守るため医療支援活動を実施しています。南タイでは出張中のタイ事業担当、下田が現地の案内をしてくれました。パンガー県は、かの有名なリゾート地、プーケットに隣接する県です。降り立った空港はプーケット国際空港。リゾートのにおいがプンプンします。このリゾート感あふれる土地で、一体どのような事業を行っているんだろう?なかなかイメージが湧きづらく、早く事業地に移動したい気持ちでいっぱいでした。
南タイの事業は、タイ人への支援ではなく、雇用の機会を求めてビルマからタイに移民してきたビルマ人への支援であることが大きな特徴であると言えます。移民してきたビルマ人は、いわゆる3K労働(きつい、汚い、危険)に象徴される底辺労働者としてタイの産業を支えています。過酷な労働の中、体調を崩したり怪我をする人が絶えませんが、彼らの多くは健康保険証を所持していないため、適切な医療にアクセスすることが非常に厳しい状況です。JVCは現地のFEDというNGOと共同でビルマ人労働者とその家族に対して医療支援を行っています。その1つに、「地域保健員の育成」があります。病院にアクセスすることが難しいのはもちろん、日常で起きる軽いけがや傷などについても適切な処置ができる状況ではないため、地域で活動できる保健員を育成することで生活を支えているのです。今回は1年間の研修を終え、この春から活躍中の2名を含む3名の保健員(オンヂー、インイン、メンメン/3名ともFEDの職員)と一緒に行動することができました。インインはなんとまだ10代! 3人が定期的に診療を行っている漁村に同行させてもらったので、その様子をご紹介します。
まずはいつも診療を行っているビルマ人が暮らす集落へ。
お邪魔してすぐに昼食をごちそうになりました。
大変な状況なのにごちそうして下さる気持ちが嬉しくて、おまけにどんどんおかわりをすすめてくれるので、お腹がパンパンでした。本当にありがたいことです。昼食が終わると、どこからともなく近所の人たちが民家に集まります。あっという間に輪ができ、診療のスタートです。と、ここで1つ気づいたことが。なぜか女性しかいないのです。疑問に思い尋ねてみたところ、男性陣はみな、漁に出ているとのこと。そうだ、ここは漁村でした。というわけで今日は女性だけ。女子会のような雰囲気の中、3名の保健員による診療が始まります。
しばらく診療の様子を見ていて、1つ気づいたことがありました。皆とにかく誰かと話しているのです。常に会話がある。常に誰かがコミュニケーションをとっている。これは非常に重要なことだと思いました。診療の目的は、もちろん1つに健康状態の確認、適切な処置などがあるでしょう。でもそれだけではない。ここは、人と人との大事なコミュニケーションの場になっているのです。先ほど少し書きましたが、ここはビルマ人がひっそりと暮らす集落です。タイという国の中にありながら、タイ社会から孤立しがちな場所。ここで情報を収集、交換しないと本当に社会から孤立してしまう。オンヂーたち地域保健員が診療を行うことで、定期的に村の人が1か所に集まる。そこで会話が生まれる。新しい情報が村に入る。孤立しないために重要なプロセスがすべてここにありました。「診療」というとどうしても身体的なケアであると認識しがちですが、そうではないケア、情報収集・交換の場としての診療所のあり方を間近で見ることができ、この場所の存在意義にただただ感心するばかりでした。自分がここに暮らしていたとして、ここに外から誰も来ず、新しい情報が何も入らない環境だったとしたら。考えるだけでぞっとします。健康面だけを支える活動ではないことを自分の目で確認することができ、心底来てよかったと思える南タイ往訪となりました。
私は今まで、こういった途上国の地域に数日間だけ入ることにとても抵抗がありました。私1人が訪ねることで何か解決できる訳でもないのに、分かったような顔をして帰るのが嫌で、足を踏み入れることに大きな違和感を感じていたのです。数日いただけで帰るなんて、現地の人を嫌な気持ちにさせてしまうのではないか、と思っていました。でも、この南タイの体験で私の考えは変わりました。こんなに外の情報が入って来づらく、孤立しがちな地域があるなんて知らなかった。こういう場所に赴き、情報交換をして、この場所のことを外に発信する。こういう事実があるということを世の中に伝える。そしてまた赴き、情報提供・交換をする。これだけでも、非常に大事な働きになることを実感しました。もちろん、これだけでこのビルマ人を取り巻く諸問題が解決される訳ではありませんが、外から人が訪れ、やりとりを行い、外部に発信していくことの必要性を実体験をもって理解することができたのは、国際協力の分野に足を踏み入れたばかりの自分にとって大きな発見、成果となりました。
最後に、診療所となっている民家の娘さんがとってもかわいかったので紹介します。人なつっこくてニコニコ笑顔でついてきて、本当にかわいかった!今度会うときにはビルマ語で挨拶できるようにしておいて、びっくりしてもらいたいなあと思っています。
南タイでのJVCの活動詳細は、こちら
次回はこの旅最後の渡航国、カンボジアについて書きます。ご覧いただけたら嬉しいです。
インターン現地訪問記(3)【カンボジア編】は、こちらこの活動への寄付を受け付けています!
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