2015年3月に仙台で開催された第3回防災世界会議を前に、福島原発事故の経験と教訓を世界に発信することを目的とした「市民が伝える福島 世界会議」が3月13日に開催されました。
JVCはこの会議の主催団体である「ふくしま地球市民発伝所」と協力してタイ人2名を招へいしました。
タイは1950年代から原子力の研究開発、および原発建設計画の検討が始められました。東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故を受け、一旦はこの建設計画の話は止まりましたが、それまでの間で建設候補地が数か所に絞られてきました。
JVCではこれまで3度に渡ってタイ人を日本に招聘し、福島県およびその周辺で事故からの再生に向けて活動する人々の声に耳を傾けてきました。初回は2012年に2名、そして2013年に3名、2014年に2名のタイ人を招へいしました。はじめの2回は、若手農民交流の流れを汲み、タイの農家を中心に招聘してきましたが、2014年にはタイのエネルギー政策の研究者、および原発建設候補地の住民をお呼びしました。
福島県で農業を営んできた農家から農業の再生に関するお話をうかがったり、農産物をはじめ土壌や水などの放射線量を検査する市民団体からは市民自身の手で線量を把握することで初めて具体的な対策がとれること等、様々なことを学んできました。
今回、招聘したのは、タイの消費者団体で活動するイタブーン氏、そしてもう1名は原発建設候補地で環境保護活動に従事するソッサイ氏の2名です。
8日に来日した2名は、9日から12日まで、いわき市、富岡町、南相馬市、飯館村、浪江町、宮城県丸森町を訪問し、実際に住民の方からお話を伺う中で、原発に関する経済的視点、農業、畜産業、自然環境や暮らしへの影響など様々な学びを得てきました。
東日本大震災から4年を迎え「震災の記憶の風化」が日本国内でも叫ばれています。この傾向は海外ではさらに顕著です。この経験を風化させず次に生かしていくためにも、JVCは今後も福島原発事故の経験と教訓をタイ社会に広く発信していきたいと考えています。そして、タイの市民社会が原発というひとつの発電技術の是非にとどまらず、タイ社会全体がどういった未来を描いていくのかを含めた議論が展開されていくことに協力していきます。(それぞれの訪問先での学びについては、また次回以降ご紹介していきます)