\n"; ?> JVC - 弥栄とそこに暮らす人々 - 農村からの風便り ~日本・タイ~

弥栄とそこに暮らす人々

タイ事業担当 宮田 敬子
2010年10月 1日 更新

9月12、13日に島根県浜田市弥栄町へ行ってきました。

島根県浜田市は日本海に面した人口約65,000人の港町です。海を背に山へ入っていくと、中山間地の弥栄の町が見えてきます。人口1600人、たたら製鉄(木炭エネルギーを用いた製鉄)を村の産業としてきましたが、エネルギーが石油に転換された時代から、徐々に産業は衰退していきました。産業が衰退していくと、村の人口は徐々に減少して、村で暮らしていけない、農業でも暮らしていけない状況になっていきました。

稲作放棄地稲作放棄地

人口減少と高齢化によって耕作放棄地は増えるばかり、その影響でイノシシや熊が田圃・畑を荒らすようになりました。さらに、ナラ枯れといって虫が木に入って、木が枯れてしまう病気が山のあちこちでみられるようになりました。

弥栄は全部で33の集落がありますが、その半分以上が高齢化率50%を超える集落です。過疎の村、一般的にはそう言われる地域です。

今回、弥栄を案内していただいた相川さんは、やさか郷づくり事務所の研究員として、弥栄で暮らしていける地域づくりをそこに暮らす人々と共におこなっています。相川さんは、2月の「日・タイ若手農民交流タイツアー」※1に参加をした一人です。過疎が進んでいる地域ですが、外部の人たちがIターンとして村に入り、地域活性化の活動を行っています。私たちは高齢化による限界集落を訪問しましたが、その「生きる力」に驚きました。山の奥を入っていった集落では70歳を超える女性が自分の作る野菜を作り、生活を営んでいました。「自給率ではなくて自給力を見て欲しい。弥栄の人たちは自給力がすごい」という相川さんの言葉が印象的でした。

稲刈りの時期を迎えようとしている田圃 稲刈りの時期を迎えようとしている田圃

この村に暮らしている新庄さん、横山さんは2月の「日・タイ若手農民交流 タイツアー」の参加者です。Iターンでこの地域に入ってきた二人は、この地域で農業をしながら暮らしを営んでいます。

新庄さん訪問新庄さん訪問

新庄さんはお米を作り、食べれる分だけの野菜を作り、裏山で木を切って薪を活用する自給に近い生活を送っています。新庄さんの研修先でもあり、仕事場でもある「やさか共同農場」では、毎日2tもの味噌を作り、その原材料は全て弥栄産です。島根県内外に出荷され、味噌以外にも甘酒なども造っています。

横山さんは西の郷生産組合に田圃の専従スタッフとして働いています。高齢によって米作りができなくなった農家の田圃を引き受け、グループを作って米作りを行っています。海水を田圃に入れて作る「潮米」は絶品です。

2月に行われたタイツアーの感想をイノシシ料理とおいしいお酒と共に語っていただきました。横山さんは「Iターンで農業をやっていこうと信念を持っているが、時々くじけそうになります。タイに行って同じように農業をやっていこうとしている仲間がいることによって、パワーをもらい、また自分たちの地域で頑張ろうと思えました。自分たちはあれがない、これがないと言っていますが、何も無くても文句も言わずにやっているタイの農民たちがいます。周りに使えるものは何でも使うこと、そのことをタイの人たちから教えてもらい、今現在実践しています。」

新庄さんは「弥栄にいても集落同士の繋がりはあまり無く、Iターン同士でもあまり知りませんでした。今回のタイツアーでは、タイの若手農家との繋がりが出来たと同時に日本の若手農家とも繋がることができました。同じような考えを持っている仲間と出会えてよかったです。」

外に出て得られたものを自分の地域の活動に生かすことが出来ること、海外と日本国内の繋がりができることがお互いのパワーとなります。

信念を持って農村に入り、農業に取り組むことは困難でもあり、時には孤独でもあります。それはタイも日本も同じ状況です。そのときに共に頑張っている仲間がいること、それが日・タイ若手農民交流の目的です。11月には日本の若手農家がタイへ稲刈りに行きます。もうそろそろ稲穂が色づいてきます。日本では稲刈りがもう始まりまっていますが、タイでの稲刈りはどうなのでしょうか・・・。

イノシシ料理を囲んでタイの思い出を語るイノシシ料理を囲んでタイの思い出を語る

<日・タイ若手農民交流>
農村において持続的で豊かな社会を創っていこうとする若手の活動家を発掘・育成することと、若手活動家同士の関係性の発展を目的として、国内外で定期的な合宿や研修を実施しています。 若手活動家たちは、同じ志を持つ仲間と出会うことで勇気ややる気を与えあえるのに、経済的に余裕がない者がほとんどで他の人と出会う機会がありません。そこで、JVCタイが若手活動家同士が出会う場を設定し、互いの経験を分かち合い、学びあう中で仲間をつくり、自らの活動に対する自信をより強固なものにしていきたいと思っています。

※1 「日・タイ若手農民交流タイツアー」(2010年2月19日〜2月26日)
タイ 若手農民交流ツアー実施日本の若手農家5名(島根県浜田市弥栄から3名、千葉県東金市から2名)が参加しました。1週間のツアーのなかで、東北タイを中心にタイの若手農家との交流を行いました。