一面のソルガム畑は、収穫の時期を迎えて刈り取りが進んでいました。
ほんの2週間前まで背の高いソルガムに視界が遮られていましたが、今ではここ避難民向け住居から、ティロ本村や、用水池のある丘までをずっと見渡すことができます。遠くの方に、牧畜民の白いドーム型のテントもちらほらと見えています。

11月12日、いつもと同じ木陰の集会所にJVCスタッフが到着すると、井戸管理委員会のメンバーも集まってきました。
ズベルさんは、今日もノートを手にしてやってきました。読み書きが得意なので、委員会の記録係になっているのです。会合が始まるまでの間、前の週に行われたはずの住民集会について話を聞いてみました。
「ズベルさん、住民集会はどうでしたか?」
「とってもよかったよ。大成功だ」
避難民向け住居の住民集会は11月5日に行われていました。ウムダ(住民リーダー)のバクリさん、井戸管理委員会のリーダー、ブシャラさんが、住民にウォーターヤードの運営について話をしたそうです。
「ブシャラがね、このままだとJVCはウォーターヤードを州政府の水公社に渡してしまう。そうしたら、水を汲むたびに料金を払わないといけなくなる。だから、住民が自分たちでおカネを集めてちゃんと運営できるところを見せないといけないんだって、一生懸命に話していたよ」
「で、みなさんの反応は?」
「みんな、『よし、それなら毎月5ポンド(註)を払おう』って言ってくれたんだ。でもね、委員会の計算だと、5ポンドじゃ多すぎる、2ポンドでいいからって・・・それで、毎月2ポンドになった」
「不満とか、出ませんでしたか?」
「そうだな・・中には、『自分は前にもおカネを払ったのに、どうしてまた集めるのか』という人もいたけどね、ははは」
(註:スーダンの現地通貨、スーダンポンドのこと。2014年1月現在、1スーダンポンドは約17円)
委員会メンバーが勢ぞろいしたようです。今日は珍しく、委員会の後見役であるウムダのバクリさんも会合に参加しています。
はじめに、バクリさんが話をしました。
「ウォーターヤードが完成して、私たち全員がとても喜んでいる。次は、その運営をどうやっていくかを考えなくてはならない。そのために先週、住民集会をやった。そこで決まったことをJVCの皆さんにお伝えしたい」
それを受けて、ブシャラさんが住民集会での決定について説明を始めました。
「各家から毎月の分担金を2ポンドずつ集めます。そのために、230戸の住居を9つの区域に分けて、それぞれの区域で分担金の徴収係を決めました。集会に参加していない家庭もあるので、徴収係は家々を回って、分担金について説明をしながらおカネを集めます」
委員会メンバーから質問が飛びました。
「なあ、ブシャラ、分担金はずっと集め続けるのか?ウシが水を飲みに来て収入が入るようになったら、いらないんじゃないか」
どうやら、このことは集会では議論されなかったようです。
ブシャラさんに代わって、バクリさんが答えました。
「ウシが何頭やって来るのか、いまは分からない。だから、5か月間は分担金を続ける。その間にウシがたくさん来て十分な収入があれば、分担金はそこで終わりにする。少ししか来なかった場合は、続けることになる・・ところでブシャラ、分担金はいくら集まったのか?」
「はい、住民集会のあと徴収係が家々を回って、今のところ538ポンド集まっています」
当面、1か月ほどウォーターヤードを運転するには十分な金額です。

そのあと、住民から集めた分担金の使途や管理方法が話し合われました。
分担金の使途は、もちろんウォーターヤードの運営費です。ポンプを動かす発電機の燃料やオイル交換代、消耗品や交換部品の購入費、機械の操作・保守点検や家畜給水の料金回収をする管理人の手当、などです。
「だが、家畜からの収入が入るまでは、管理人の手当はナシだ。仕方ないが、井戸管理委員会のメンバーにボランティアでやってもらおう」
とバクリさん。委員会メンバーもうなずいています。
「将来、収入が多くなっておカネが余ったらどう使おうか?」
「そしたら、住民全員のためになることに使おう」
「ヤギを買って育てるのはどうだ?」
というのは、長身のルドワンさん。
「ここにはお年寄りや子どもが多いから、ちょっとした病気も多いわ。診療所に薬とかを買ったらどうかしら?」
こちらの提案はニダさん。話は尽きません。
「とにかく、おカネは『歓迎会』には使っちゃダメってことなんだよな」
「当たり前だろ。あれは、間違いだったんだ」
そして、おカネの管理方法です。集まったおカネは会計係のズベルさんが記録・保管し、銀行口座に預けます。口座の開設手続きをすぐに始めなくてはなりません。
ひと通り話し合いが終わり、その内容は、委員会のルールとして書面に残すことになりました。
アドランが発言しました。
「皆さん、ありがとうございます。住民集会と今日の話し合いで、運営について色々なことが決まりました。これで、JVCはウォーターヤードを皆さんに引き渡すことができます」
みんな、嬉しそうにうなずいています。
「じゃあ、引き渡しはいつ頃になるかな?」
ブシャラさんが尋ねました。
「そうですね、引き渡し式は、来週はじめにやりましょう」
「よし、これで決まった!」
話し合いの間は静かにしていたアフマドさんがいきなり大声を挙げると、みんな笑いながら、さっそく次の関心事...式典の日のヒツジのことに話が移ったのでした。
【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。
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