\n"; ?> JVC - 避難民向け住居、入居始まる - スーダン日記
2013年9月 9日

避難民向け住居、入居始まる

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年9月12日 更新
住居の扉の上には1番から230番までの番号が振られている。写真は218番(アラビア語の数字)。住居の扉の上には1番から230番までの番号が振られている。写真は218番(アラビア語の数字)。

「誰かいるのかなあ?」

クルマを降りたJVCスタッフのアドランは、ちょっと首をかしげました。ティロ村近くの避難民向け住居。「入居が始まった」と聞いて様子を見に来たのですが、意外にしんとしています。 レンガ造りの小さな家の間をしばらく歩いて行くと、いました、いました、何軒かの家の前で女性たちが炊事や洗濯をしています。

そのうちのひとりに話を聞くと、つい2、3日前に入居したようです。
「この前、ここに入る予定の人たち全員が役所に呼ばれてね、『くじ引き』で入居する家が割り当てられたんだよ。そのあと引っ越しを始めたのさ。ほかの人も、すぐに引っ越してくるだろうよ」
金だらいで泥だらけの衣類を洗う手を休めて、年配の主婦はそう教えてくれました。

それにしても、まだまだ大半の家は入居しておらず空き家です。種子の配布などの支援を行うには、もう少し待たなくてはいけないように思えました。

それからさらに1週間が過ぎ、7月も末になりました。カドグリ周辺では種まきの時期はほぼ終わりかけています。アドランから、首都ハルツームの私に電話が入りました。
「今日、もう一度訪問してみます」
「わかった、これが最後のチャンスだね。まだ入居していないようであれば、種子の配布は諦めるしかないな」
私がそう言うと、
「そうですね・・仕方ないですね」と、いかにも残念そうなアドランです。

どの家も、入居するとまず「ラクバ」と呼ばれる庇(ひさし)を作り始める。部屋の中は暑いため、この「ラクバ」の下が貴重な生活空間になる。どの家も、入居するとまず「ラクバ」と呼ばれる庇(ひさし)を作り始める。部屋の中は暑いため、この「ラクバ」の下が貴重な生活空間になる。

そして、避難民向け住居にクルマを走らせること20分、すると...
マッチ箱のようなレンガの家々は、多くの人でにぎわっていました。荷物を運びこむ人、家事に忙しい主婦、木材を組んで軒先の庇(ひさし)を作る人。まわりでは子どもたちが走り回っています。
嬉しくなったアドランは、避難民向け住居の周囲に沿ってクルマを走らせ、隅から隅までを見て回りました。全部で230戸ある家のうち、およそ8割以上は入居しているように見えます。
「これだけ入居していれば十分だ」
アドランと他の2人のスタッフはクルマを降り、入居した人たちに話を聞いてみました。

足元にまとわりつく子どもたちをあやしながら洗濯物を干していたアジザさん。カドグリから南に40キロ離れたスフィア村の出身です。紛争が始まった2年前に戦火を逃れて村を離れ、親戚を頼ってカドグリ市内のサラマット地区に避難しました。
「でもね、サラマットでは畑を分けてもらえなかったから、2年間は作物を作れなかったんです」
と言う彼女。サラマットは比較的市街地に近いので、避難民に分けるだけの十分な農地がなかったのかも知れません。
「今年になって元のスフィア村のウムダが、避難民向け住居に入ったらどうかって、私たち家族を推薦してくれたんです」

アジサさんに話を聞くアドランアジサさんに話を聞くアドラン

南コルドファン州では、村の住民リーダーを「ウムダ」と呼びます。集落の長が「シエハ」と呼ばれるのに対し、いくつもの集落を束ねる村長さんが「ウムダ」です。ウムダやシエハは住民と一緒にカドグリに避難してきており、避難生活においてもリーダーとして出身村(出身集落)の人々の世話を焼いています。
「ここでは、畑仕事はできそうですか?」
アドランが尋ねると
「はい。家の周りはみな畑に使えます。それと、あっち側の広い土地も皆で分けて使ってよいと言われています」
指さす方角を見ると、見渡す限りの広大な土地です。
「でも、2年間畑仕事をしていなかったので、種がありません」
人々が元々住んでいた村々では、収穫物から種を取り出して翌年の種まき用に保存することが一般的です。ですから、耕作ができなかった翌年には、手元には種がないということになります。

いくつかの家族に話を聞いてみたところ、ほとんどの世帯はカドグリ市街に近い地区でこれまでの避難生活を送っていました。それらの地区では避難民の密集度が高く、農地も十分にありません。
どの家族も、この避難民向け住居なら畑で作物が作れる、でも今は種がない、と言っていました。

畑の準備をする人がいた畑の準備をする人がいた

少し歩き疲れたアドランたちが引き揚げようとした時です。熊手のような道具を持って草取り、地ならしをしている年配の女性が目に留まりました。ひょっとして、畑の準備でしょうか?
近づいて尋ねてみると、やはりそうです。
「種はどうするのですか?」
「ここに来る前に、親戚からトウモロコシの種を少し分けてもらいました」

なるほど。人々は、本気で耕作を始めたいようです。避難する前は故郷の村で農業を営んでいたのですから、当然かも知れません。JVCが種子を配布して少しだけ背中を押せば、皆、すぐに耕作を始めそうです。農地も十分にあります。
「さっそく、準備に取り掛かろう」
と、アドランは思いました。

(続く)

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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