6月14日、カドグリは朝から激しい爆発音に包まれました。
明け方からの政府軍の攻撃に呼応して、郊外に陣取る反政府軍が市内めがけて砲弾を撃ち込んできたのです。
「今日は、これまでとは違う。ずっと近くから撃ってきている」
電話口から、少し興奮したハマッドさんの声が聞こえてきました。
カドグリの緊迫した状況を知った私たち首都ハルツームのJVC事務所は、現地のJVCスタッフだけでなく、カドグリにいる知り合いに電話をして情勢の把握に務めていました。ハマッドさんは、いつも私たちのパソコンを修理してくれる業者さん。カドグリの事情に詳しい「物知り屋さん」です。
「ハマッドさん、『近い』って言うけど、どのくらいの距離か分かるの?」
「ハッキリとは分からない。でも、反政府軍が丘のすぐ向こうまで来ているっていうウワサ話が2、3日前からあったんだ。それに、使っている爆弾も今までとは違うみたいだ」
「えっ、爆弾が違うって?」
ここで携帯電話が途切れてしまいました。回線が込み合っているのでしょうか。多くの人が、不安に駆られて連絡を取り合っているのかもしれません。
カドグリの町は、騒然としているようでした。何度か電話を掛け直したあと、タクシーの運転手、イヤスさんと話すことができました。
「フツーの爆弾じゃない。一発落ちると、中から小さい爆弾が飛び散って周りの家も壊してしまうんだ・・うちの近所にも落ちたよ。家が直撃されたわけでもないのに、飛び散った爆弾で死んじゃった人もいる。家の中にいても安全じゃない、町じゅうが一斉に逃げている」
「逃げるって、いったいどこに?」
「東の方だよ。砲弾は西の丘から飛んでくるから、町の西側にいる人はみんな東側に移動している。それで、知り合いや親戚の家を見つけて転がり込むんだ」
イヤスさん自身、両親の実家に避難してきています。
幸い、JVC事務所は町の東側に位置しています。スタッフは外出を避け、事務所で待機を続けていました。
丘の西側に陣取る反政府軍に対して政府軍は空からの反撃を加えていたようですが、やがて午後になって砲撃は止まりました。国連から発信される安全情報では、市内への着弾は少なくとも7発。市民2人が亡くなり、8人が重軽傷を負ったとされています。爆弾の種類について、公式には何も発表はありませんでした。
「このあと、何が起きたっておかしくないって、みんな怯えているわ」
被弾した地区に住む主婦、ナディアさんに電話がつながりました。
人々はカドグリから退避を始めているのでしょうか。
「ハルツームや州外に行くあてのある人は、もうずっと前にカドグリを離れてしまったわ。今カドグリにいるのは、私のように、ここで生活を続けるしかない人よ」
ナディアさんは、夫が市場で働く収入で子どもたち、それに親戚まで養っています。
「だから、この近くで少しでも安全な場所を探すしかないの。政府軍がこちらから撃ち始めたら、あっちが反撃してくる前に急いで町の反対側に逃げるのよ」
昼間の間に逃げた人は、夜になると戻って自宅の無事を確認し、ほっと胸をなでおろすのだそうです。
「自分たちで何とかするしかないの。誰も、私たちのことは守ってくれないのよ」

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。
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